「手料理で夫や子どもの栄養管理を」。そう言われてきたけれど……/田房永子さん

特別企画「アナタのミライは、ワタシのミライ」が伝える
「呪いの言葉」と「解毒法」とは?

 

なんだか心に重くのしかかる。でも、どうしていいのかわからない――。
そんな“生きづらさ”を感じるとき、ありませんか?
「&w」編集部は、その生きづらさの背後に潜むものに「呪い」と名前をつけました。
家族や恋愛などをテーマにした作品がある漫画家・田房永子さんと文筆業・清田隆之さんが交代で、イラストと言葉で「呪い」を解きほぐします。
無意識のうちに刻まれた、古い制度や変わらぬ価値観、性差にもとづく役割分担……。
この世を取り巻くそれらの呪い、前向きな「解毒法」がわかれば解けていくかもしれません。

 

~呪いの言葉~
料理は女性の役割だし、できて当然。

「手料理で夫や子どもの栄養管理を」。そう言われてきたけれど……/田房永子さん

~解毒法~
思いきって誰かに話してみると、意外とキョトンとされたりする。

最近は、男性タレントや芸人が真面目に料理や家事に取り組むテレビ番組がある。10年前は”そんなもの”がエンターテインメントになるなんて考えられなかった。世の中の「料理は女性がするもの」で「女性なら料理ができて当然」という前提は、今よりさらに深くて濃かった。だから、男性が料理をしない、できないのは当たり前。「料理が苦手」という女性タレントに、わざわざ料理の腕を競わせ、失敗する姿や味付けを笑う番組はあった。

最近やっと、「それはちょっとおかしいんじゃないの」っていう空気になりつつあるけど、私自身、この「女性なら料理ができて当たり前」という「呪い」にかかっていて、料理が苦手なことに強烈なコンプレックスがあった。

やらないと仕方ないから、やっているうちに料理はできるようになった。だけど、恋人や夫といった誰かに食べてもらうのは、自分のために料理を作るのとまた違い、少なからずプレッシャーがある。

相手が子どもとなると、今度は「母親ならば、子どもに栄養バランスのいい食事を提供しなければならないし、するものだ」というメッセージに襲われる。自分たちが子どもの頃からそれは当たり前だとされている上に、食品のCMなどによって改めて追い詰められる。赤ちゃんの健診で行った保健所で、保健師さんや栄養士さんから直接言われることもあった。

「お母さんや奥さんである女性は、子どもと夫の栄養に気を遣うものだ」と当たり前に言われるけれど、じゃあその「お母さん」や「奥さん」の栄養は、誰に気遣ってもらえるのだろうか? それらの言葉は「呪い」となる。子どもがちゃんと食べてくれない時、その「呪い」は母親の体内でストレスとなって暴れ出す。

最近は、「出前とってラクしていいんだよ」と母親に呼びかけるCMも流れるようになってきた。出前って一見ラクだけど、ちょうどいい時間に届くように計算したり、アプリでメニューを選ぶ作業があったりする。疲れすぎている時は、逆にイレギュラーな行動をするよりも、自炊したほうがラクな場合だってある。何がつらいのかというと、結局は、夕飯の段取りは母親の役割になっているということだ。

私が「呪いの言葉」を「解毒」できたきっかけは、子どもの預け先の先生に悩みを話したこと。「お弁当に冷凍食品を入れてしまう」と話すと、「?」な表情で「別にいいと思いますけど」と言われた。私の中の呪いはいつのまにか、学校とか保健所とかの「世間」に対する「冷凍食品入れてたら怒られる」という恐れに変わっていたようだ。だから「先生」にそう言われただけで、「なーんだ、悩むことじゃないのか」と気楽になった。ちゃんとお弁当は持たせているし、子どもだって食べている。確かに何がいけないんだろう?と帰り道に笑ってしまった。それからは「ちゃんとしたものを食べさせなければいけない」という緊張と、手作りでないものをお弁当に入れる罪悪感から解放された。

    ◇

アナタのミライは、ワタシのミライ」 筆者プロフィール

「手料理で夫や子どもの栄養管理を」。そう言われてきたけれど……/田房永子さん

田房永子(たぶさ・えいこ)

漫画家。1978年東京都生まれ。代表作『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版、2012年)『キレる私をやめたい』(竹書房、2016年)。そのほかの著書に『男社会がしんどい』(竹書房、2020年)などがある。

 

「手料理で夫や子どもの栄養管理を」。そう言われてきたけれど……/田房永子さん

清田隆之(きよた・たかゆき)

文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。1980年東京都生まれ。早稲田大学卒業。1200人以上の恋愛相談に乗り、コラムなどで紹介してきた。新聞や雑誌など多数のメディアに寄稿。桃山商事としての著書に『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)、単著に『さよなら、俺たち』(スタンド・ブックス)などがある。

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