料理家・冷水希三子の何食べたい?

ぶどうとすだちを使った、やさしい黒酢酢豚

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくれるという夢の連載。今回は黒酢酢豚。餡(あん)に和風だし、具材にぶどうとすだちを使って、見た目も上品に、やさしい味に仕上げます。

     ◇

―― 冷水先生、こんにちは。ひと雨ごとに涼しくなって、秋はもうすぐそこという感じがしますねえ。

冷水 はい、季節の移り変わりを毎日感じますね。

―― 食欲も回復して、スーパーに増えつつある秋の味覚がどれもおいしそうで、おいしそうで……。

冷水 秋はフルーツもおいしいですから、楽しい季節ですね。

―― そうそう、リクエストの中にも秋のフルーツを使ったお料理を知りたいという声が多いんです。

冷水 なるほど。じゃあ今回は秋のフルーツの代表、ぶどうをお料理に使ってみましょうか?

―― え~! ぶどうってお料理に使えるんですか!?

冷水 お料理に使うバルサミコ酢はぶどうが原料ですから、料理との相性は悪くないんですよ。

―― なるほど! 言われてみればそうですね。でもどんなお料理に使ったらいいのか、さっぱりわかりません……。

ぶどうとすだちを使った、やさしい黒酢酢豚

酢豚にぶどうとすだち!? でもこれが、とってもいい仕事をするんです。ぶどうはお好みでの品種で。紫色のぶどうが合います

冷水 たとえばお酢つながりで酢豚なんてどうでしょう? 黒酢とぶどうは相性がいいと思いますよ。

―― 酢豚にパイナップルは聞いたことありますけど、ぶどうは初耳です。

冷水 酢豚に入っているパイナップルが苦手という話はよく聞きますが、私はぶどうの方が合うと思うなぁ。

―― 私も酢豚にパイナップルは反対派です……。でもぶどうなら好きになれるかも。ぜひ教えてください!

冷水 じゃあまずはお肉の準備です。今回は豚のヘレ(ヒレ)肉を使います。

―― ヘレ肉とは豪華ですね。

冷水 もし手に入らなければももの塊でも大丈夫です。切り方のポイントは、塊肉に格子状に切り込みを入れてからひと口大にカットすること。火を通しても硬くならず、食べやすいんです。

―― 隠れたひと手間ですね。たしかにめちゃくちゃ硬い酢豚のお肉って、たまにあります(笑)。

ぶどうとすだちを使った、やさしい黒酢酢豚

塊肉を使う場合は、まず格子状に切り込みを入れてからひと口大にカットすると、柔らかく仕上がりますよ

冷水 あとは普通の酢豚と同じ工程です。違うとしたら餡ですかね。

―― ん、これはお出汁(だし)ですか?

冷水 はい、今回は鰹(カツオ)昆布出汁を使います。コクが出て、まろやかな風味になるんです。

―― あと、すだちもありますね、これは?

冷水 黒酢だけでもおいしいのですが、たくさん使うとどうしてもツンとした刺激があるでしょう? あれが苦手……という声もよく聞くので、今回は黒酢は控えめに、その代わりすだちで爽やかな酸味をプラスしようかなと。

―― たしかに黒酢たっぷりの餡だと思い切り湯気を吸い込んだときにむせますよね(笑)。すだちの助太刀に期待です。

冷水 それではお肉を揚げていきましょう。お肉から出た水気を拭いて、片栗粉をはたいて揚げます。衣が厚くなりすぎると重たくなってしまうので、余分な片栗粉は落として揚げましょうね。

―― お肉に薄化粧って感じですね。

ぶどうとすだちを使った、やさしい黒酢酢豚

豚肉の揚げ上がりはこんな感じ。余熱で火が入るので、薄いきつね色くらいが目安です

冷水 お肉が揚がったらいったん取り出しておいて、別の鍋で餡を煮詰めます。

―― 出ました、中華鍋!

冷水 まずは餡の材料を入れて火にかけます。ふつふつと沸いてくるまでお肉は入れないでくださいね。

―― 中華鍋は底部分の面積が狭いので、少ない量の餡でもちゃんと煮詰められるのがいいですね。フライパンだと全面に餡が広がって、あっという間に水分が蒸発してしまいます……。

冷水 その通り! 中華鍋はそこがいいんですよね。ちょっと場所を取るかもしれませんが、ひとつ持っていると料理の幅が広がると思いますよ。

―― あ、餡が沸いてきました。黒酢のいい香りが漂ってきました。

冷水 ではここに揚げた豚肉と皮をむいたぶどうを入れて少し煮ましょう。

―― お出汁のせいか、なんだかつゆだく感がありますね……。

冷水 これから水溶き片栗粉でとろみをつけるので大丈夫ですよ。

ぶどうとすだちを使った、やさしい黒酢酢豚

深さのある中華鍋なら餡と具材が簡単になじみます

―― おおお、餡にとろみがつきましたが、なんだか知っている黒酢酢豚と様子が違います……。なんというか餡の色が……透き通っていてとっても奇麗です。

冷水 黒酢の分量が少ないのとお出汁をたっぷり使っているからですね(笑)。

―― 見た目からして上品そうです~。

冷水 仕上げにすだちの輪切りをのせたら完成です。

―― うわ~、こんな美しい酢豚は見たことありませんよ! いつもはむせちゃう湯気も、すだちの香りがふんわり香ってとっても清々(すがすが)しいです。

冷水 お味はどうですか?

―― 黒酢のツンとした感じがほとんどなくて、どこまでも優しいお味です……。これなら酢豚が苦手な人も絶対食べられますね。

冷水 ぜひぶどうとお肉を一緒に食べてみてください。

―― おおお……。なんというか、ぶどうは具じゃなくて餡の仲間だったのか!!という感じです。口の中に果汁が満ちて、それが黒酢の餡と混ざる感じが面白いです。ただでさえ爽やかな餡なのに、ぶどうが加勢することでよりフルーティーでジューシーな感じになりますね。

冷水 それはよかったです。パイナップル反対派の人に喜んでいただけて、うれしいです(笑)。

―― これからは「酢豚にはぶどう」派として、みんなに広めていきたいです!

今日のレシピ

すだち黒酢酢豚

◎材料(2~3人分)
豚ヘレやもも肉塊 200g
ぶどう 100g
すだち 3個(すだち汁と盛り付け用)

片栗粉 適量
揚げ油 適量

A
塩 小さじ1/2弱
紹興酒 小さじ1

《餡(あん)》
B
鰹昆布だし 100ml
黒酢 20ml
すだち汁 小さじ1
紹興酒 大さじ1
砂糖 20g
しょうゆ 小さじ1

◎作り方

 豚肉は格子状に切れ込みを入れてから一口大に切り、Aをもみ込んでおく。

 ぶどうは皮をむき、大きければ半分に切る。

 の豚肉の水気を拭き、片栗粉をはたいて170度くらいの油で揚げる。

 中華鍋にBの材料を入れて火にかけ、沸いてきたらの豚肉とぶどうを加えて少し煮る。片栗粉小さじ2くらいを水溶きしてから加えて混ぜ、とろみをつける。

 皿にを盛り、仕上げにすだちの輪切りをのせる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(料理・レシピ 冷水希三子 写真 関めぐみ 文 小林百合子)

>>まとめて読みたい!「冷水料理相談室」 記事一覧

>>まとめて読みたい!「料理家・冷水希三子の何食べたい?」 記事一覧

冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家

ぶどうとすだちを使った、やさしい黒酢酢豚

料理家・フードコーディネーター。レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を使ったやさしい味の料理が評判を呼び、雑誌や広告などで活躍中。器選びや盛り付けに至るまで、その料理の美しさでも注目を集めている。著書に『ONE PLATE OF SEASONS-四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(ともにグラフィック社)など。

PROFILE

  • 小林百合子

    編集者
    1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

  • 関めぐみ(写真)

    写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。

鰹出汁がやさしい、ホタテと白身魚のセビーチェ

一覧へ戻る

爽やかな香り広がる 秋鮭のレモンチーズソース

RECOMMENDおすすめの記事