花のない花屋

たとえ声が出なくても、息の音までいとおしいよ 双子の息子へ

全国農業協同組合連合会(全農)では、新型コロナウイルスによる大きな影響を受けた花の生産者を支援する取り組みを行っています。その一環として、連載「花のない花屋」にご協力いただきました。

あなたの「物語」も、世界で一つだけの花束にしませんか? エピソードの応募はこちらから。

本城綾子さん 41歳 女性
千葉県在住
ギャラリー運営

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2020年2月下旬、双子の男の子を出産しました。上に6歳の娘もいるので、久しぶりの育児。2度目だから、前よりは余裕が持てるかな? でも双子だし大変だぞー、とワクワク、ドキドキ。ハッピーストーリーを描いていく予定でした。

ところが、分娩(ぶんべん)室で看護師さんが「ちょっと呼吸状態が良くないから、念のため新生児集中治療室(NICU)へ連れて行くね」と。帝王切開でしたので、私は麻酔で朦朧(もうろう)としており、抱っこすることもかなわないまま突然離ればなれになりました。

その時は肺に羊水が入ってしまった、と説明を受けました。無事1カ月後には退院でき、やっと、やっとふたりを抱っこすることができ、遅れてきた幸せをかみしめました。

ところが自宅で過ごしていたとき、弟の方の呼吸がおかしいことに気がつきました。呼吸をすると横隔膜の辺りがベコベコとへこむのです。なんだか苦しそうだと思って写真に撮り、1カ月健診の際に医師に見てもらいました。

するとなんとふたりとも、即緊急入院で、私も付き添う必要があると告げられました。あまりにも急で、一度帰らせてくれと懇願しても、帰らせられる状態ではないと、押し問答。私はパニック状態のまま、再び双子の入院生活が始まりました。

双子の病状は、喉頭(こうとう)軟化症、咽頭(いんとう)軟化症、など。気道が柔らかくて呼吸がうまくできないということでした。状態はどんどん悪くなっていきました。
医師からは治療のためには気管切開が必要で、術後は一生声が出なくなる可能性もある、と聞かされました。ちょうど新型コロナの感染が拡大していた時期で、夫とは面会もできず、相談をするのもままならないまま、双子の未来を左右する決断を迫られました。

そうこうしている内に、双子の容体が急変。もう声が出ないのは仕方が無い、生きていて欲しい。気持ちが先行し、気管切開を決意しました。

生まれたばかりの我が子が、ふたりとも……なんて、親としては二重の苦しみを味わった気がします。それでも小さな身体で たくさんの検査、麻酔、点滴と本当に頑張ったと思います。

入退院を繰り返す日々はこれからも続くのですが、今はふたりとも容体が安定して自宅に戻り、おとなしくスヤスヤとよく寝ています。泣いても声が出ませんが、荒くなる息の音で気づくことができます。もう、息の音までいとおしい。待ちに待った家族の時間を存分に楽しんでいます。

ふたりは二卵性双生児らしいのですが、輪郭が少し違うくらいで、顔は本当にそっくりです。病状も一緒で、容体が変わるタイミングも一緒。成長とともに声が出る可能性もあると言われていますが、これから先も出ないかもしれない。

それでも、この先もきっとふたりでなら、なんとかやっていける。そんな期待があるのです。双子の明るい未来を願って、花束を作っていただけないでしょうか?

花のない花屋

≪花材≫ファレノプシス(コチョウラン)、ダリア、チランジア、カラー、サンタンカ、ケイトウ、ブバルディア、プロテア、トリトマ、ピンクッション、マリーゴールド、ガーベラ、クルクマ、グロリオサ、バラ、カーネーション、ネリネ、アセボ、グリーンネックレス

花束を作った東さんのコメント

とても大変なスタートだったと思います。今回はオーストラリアやニュージーランドなど南半球の国の、“ネイティブフラワー”と呼ばれる花々を使いました。ピンククッション、プロテアなどが該当します。乾燥した大地でも生きていけるような花なので、生命力がすごく強いのです。双子たちがこれから力強く生きていけるよう、思いを込めて束ねました。

また投稿主様がギャラリストということなので、芸術作品のように楽しんでいただけるようなインパクトのある色合いを選びました。きっと双子たちにも楽しんでもらえるのではないでしょうか。ふたりの記憶に残るかは分かりませんが、まさに命の塊と呼べる花束の力強さを感じてもらえたらなと思います。

(次回は10月8日に更新予定です)

花のない花屋

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花のない花屋

花のない花屋

(写真・椎木俊介)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

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フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

たとえ声が出なくても、息の音までいとおしいよ 双子の息子へ

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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