このパンがすごい!

香ばしい皮、エアリーな食べ心地。新潟のワイナリーが生む珠玉のおつまみパン/コテアコテ

新潟市街地から車で約30分。日本海沿いの道を走り抜ける。防風林にさえぎられ人家さえ見えない。やがて、人の背丈ほどのぶどうの木が何列も植わった、まるでヨーロッパのような風景を目にする。ここが、カーブドッチワイナリー。1992年以来、ぶどうの木さえなかった砂地を開拓、いまや周囲にも4軒のワイナリーが軒を連ね、その名は全国のワイン愛好家に轟(とどろ)く。

ぶどう畑の中に、れんがや木造の趣ある建築が立ち並ぶ。ワイナリーを中心に、レストランやブルワリー、宿泊施設に、果ては温泉までを備えた、まるでひとつの村。ここに、ワインによく合うパンを焼く薪窯パン屋が存在している。

その本領を味わうには、もちろんワイン、そして施設内で作られたシャルキュトリーと味わうのがベストだろう。カーブドッチワイナリー内のカフェテリア「コテアコテカフェ」のランチセットならこの組み合わせが気軽に楽しめる。

香ばしい皮、エアリーな食べ心地。新潟のワイナリーが生む珠玉のおつまみパン/コテアコテ

ソーセージプレート。コテアコテのハウスワイン「ファンピー」とともに

「ソーセージプレート」についていたのは、自家培養レーズン種を使用した「はるゆたかの石窯焼きパン」。口に近づけただけで、うつくしくも甘いぶどうが豊かに香った。ふわり、そして歯が着地するときはもちっ。ハルユタカならではのやさしく、ミルキーな甘さが溶けだし、噛(か)み締めるとごはんのようにじーんと旨味(うまみ)、でんぷんのおいしさが喉(のど)へ向けて広がる。香ばしい皮にもぶどうの甘さが乗り移り、口にワインを注がれることを手招きしている。

「パン・オ・フリュイ」もまた然(しか)り。小麦の香りも濃厚などっしりとした生地に、レーズンやオレンジピールやナッツがたっぷりと。ワインに潜むぶどうをはじめとしたさまざまなフルーツのフレーバーに全方位的に対応し、マリアージュせんと待ち構えるかのようだ。

なんとも香ばしい皮、そしてしっかりと上に伸び、エアリーな食べ口を実現した中身。薪窯のたまものである。工房へまわると、うつくしいドームにタイルを張った薪窯がまるで小さな礼拝堂のような神々しさで鎮座していたのだ。

香ばしい皮、エアリーな食べ心地。新潟のワイナリーが生む珠玉のおつまみパン/コテアコテ

薪窯

早朝から薪を炊くこと4時間、500~600℃という高温まで上げてたくさんの熱を溜(た)め、300℃に温度が落ちれば、灰をかきだし、パン焼きがスタートする。高温がふさわしい「ポテトフォカッチャ」からスタートし、温度が落ちてくればじっくりと焼きたい「パン・オ・フリュイ」を入れて……電気オーブンのように細かな調整はできないから、人が窯のほうに寄り添うことになる。新潟の気候と土壌を生かし、品種の個性やその年の出来栄えを反映してできる、カーブドッチのワインと同じように。

レーズン種を見せてもらった。五つの瓶がテーブルに並んだ。カリフォルニアレーズンとグリーンレーズンから毎日種を起こし、水と砂糖を毎日継ぎ足していく。栄養を与えられた酵母は瓶の中で増えつづけ1週間後にはパンを焼くに十分な数に達する。発酵力が十分だから、ふわっとエアリーなパンが焼ける。

香ばしい皮、エアリーな食べ心地。新潟のワイナリーが生む珠玉のおつまみパン/コテアコテ

レーズン種。左から順に、種おこし2日目、3日目、4日目、5日目、6日目。毎日かけついで酵母を増殖させる

「レーズン種で作ると、雑味がなく、小麦本来の味と風味を感じられます。仕込みの際、生地の状態をしっかりしないと、うまく上がりません。こねあげのときの温度が0.5~1℃ちがうだけでまったくちがうパンになります」(ベーカリーシェフの樋口雅史さん)

もちろん、レーズンの風味はワインにもよく合う。ワインやビールがいつもそばにある環境で、おつまみになるパンが数々生まれてきた。

香ばしい皮、エアリーな食べ心地。新潟のワイナリーが生む珠玉のおつまみパン/コテアコテ

うめとベーコンのフーガス

「うめとベーコンのフーガス」(夏季限定。現在休止中)というおもしろい組み合わせのパン。薄いところはがりがり、分厚いところは手強(ごわ)いもっちり。噛んでも容易にちぎれず、ぎゅうぎゅう噛み締めて格闘しているうち、ぶわーっと味が湧いてくる。ビーフジャーキーみたいな強い風味のベーコン、きゅいーんと梅干しの酸味と旨味、そしてフルーティーな風味に和を香らせて。日本のワインにうってつけではないか。

ワインの作り手たちも訪ね、料理を平らげ、温泉も入りたい。そして、パンとワインを浴びるほど味わって、そのままことんと眠りに落ちたい。今度来るときは宿泊しようと固く誓った。

香ばしい皮、エアリーな食べ心地。新潟のワイナリーが生む珠玉のおつまみパン/コテアコテ

コテアコテマルシェのパン販売コーナー

カーブドッチ ワイナリー コテアコテ
新潟県新潟市西蒲区角田浜1661
0256-77-8637
http://www.docci.com

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PROFILE

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)
http://panlabo.jugem.jp/

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