「子どもとの時間」と「夫婦の時間」、部分的なリノベでどちらも大切にした家作り
文: 石井健

Sさんご一家(夫38歳、妻35歳、長男)
東京都文京区/90㎡/築5年/総工費1400万円
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今回のお宅では、「子どもとの時間」、そして「夫婦の時間」のどちらも大切にできる家にしたいと、希望されました。小さいお子さんがいると、暮らしはどうしても子ども中心に。大人の時間は後回しになりがちなので、参考にしたい方も多いと思います。リノベーションは、LDKとキッチン、そして洗面所を中心とした部分的なもの。大きく変更しなくても、住みやすくなることがわかる事例です。
まずは、子どもが伸び伸びと過ごせるように、リビングを広々とさせました。リノベーション前にはリビングの隣に別に部屋がありましたが、それもリビングスペースに吸収して広くしたのです。大きめのソファやテレワーク用デスクを置いても、子どもが自由に走り回り、おもちゃを出して遊べる余裕があります。リビングの壁面収納の一番下、子どもの手が届く場所におもちゃボックスを入れています。「子どもが自分でしまえるようになるといいなと思っています」とSさん。
そして、ワークスペースは、あえてリビングの中に作りました。個室にしたり、仕切りをつけたりしないで、家族がいる空間で仕事をすることを選択。仕事の資料などがデスクに置きっぱなしになって、リビングが雑然としないように、壁面収納に専用スペースを設けました。専用スペースは中が見えないように、壁面収納に扉をつけたデザインにしました。
リビングを広くする一方で、キッチンとダイニングはコンパクトにまとめました。さらに、キッチンと隣の洗面所の壁を取り、通り抜けできるようにつなげました。家事動線がスムーズになり、料理や洗濯がしやすくなりました。家事が時短になると、子どもとの時間にも余裕が持てます。
もう一つの希望である夫婦の時間を楽しむために、子どもが寝た後、キッチンでゆっくりお酒を飲めるカウンターを作りました。今は子どもが小さく、外に飲みに行くことはなかなかできません。お二人からは、ホテルのバーのような空間にと、希望がありました。
ポイントは、カウンターに座ったときの視線の先です。壁面に、背面を鏡張りにした棚を造作。お酒のボトルを置くとバーのような雰囲気になります。さらに、リビングの照明は調光できるものに変更し、リラックスできる夫婦の時間を演出します。
新築の家では、部屋数や収納量などのスペックだけが注目され、実際には使いにくいことがあります。今回のお宅のように、家全体ではなく、必要な場所だけを部分的にリノベーションするだけで、見違えるように暮らしやすくなることがあります。「子どもとの時間」と「夫婦の時間」を大切にしたいという、理想の暮らし方が実現した家になりました。
Sさんご夫婦に聞く
リノベーションQ&A
Q1 リノベーションで一番大切にしたことはなんですか?
家族がリラックスしてくつろげる、広々としたリビング空間です。
Q2 リノベーションのプロセスで楽しかったことはなんですか?
建築士や工事業者と、一丸となって一つのプロジェクトを成し遂げるプロセスが非常に楽しかったです。今まで、リノベーションや建築関係、インテリア関係の雑誌を真面目に読む機会がなかったのですが、今回のリノベーションをきっかけに約50冊読みました。大変勉強になり、自分の本業とは全く異なる分野のことを知ることができ、とてもワクワクした時間を過ごせました。
理想の住まいについて、夫婦で真剣に話し合える機会も持てて、とても有意義で楽しい経験でした。
Q3 リノベーションのプロセスで大変なことはありましたか?
建築デザインが決定していない状態で、キッチンや洗面台の水栓金具や洗面ボウルを見学したので、なかなかイメージすることができずに難しかったですね。
理想の住まいと希望予算とのバランスを取るのが難しかったです。どこを妥協するかしないかの判断が大変でした。
(構成・文 大橋史子)
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