朝日新聞ファッションニュース

心に余裕を、着ることで変わる アンダーカバー・高橋盾に聞く

ストリートとモードの感覚を融合した作風で知られ、日本を代表するブランドのひとつアンダーカバー。新型コロナの影響でこの秋のパリ・コレクションには参加せず、作りこんだ写真で新作を披露した。メディアに登場することが少ないデザイナーの高橋盾(じゅん)(51)が朝日新聞の単独取材に応じ、コロナ禍での気づきなどについて語った。

心に余裕を、着ることで変わる アンダーカバー・高橋盾に聞く

1969年群馬県生まれ。文化服装学院在学中にブランドを創設。94年から東京コレ、2002年からパリ・コレに参加=Photo by Yoshie Tominaga

――新作をショーではなく、写真での発表にしたわけは?

パリでショーをやるつもりでしたが、渡航が難しかったからしょうがない。これまでもその時々の感覚で写真集やウェブなどいろんな方法で発表してきたので、別にこだわりなく写真に切り替えました。ただ服を見せるのではなく、物語や世界観を見せたかった。

――ピカソの絵にヒントを得て自身が描いた油絵や、歌手パティ・スミスへの賛歌など、新作は「シックス・センス」をテーマに六つの群に分かれています。コロナ禍と何か関連性は。

コロナとテーマは全く関係ないです。ただ、自粛期間中は自分も家での作業だとパジャマのまま着替えないことがあって、こりゃまずいなと思った。服を替えると気分が変わるし、デザインする仕事をしているから、着ることに対しての気持ちを持っていないと。
このご時世でどんな服にするべきかも考えた。ショーで映える作りこんだ服とは違うな。普段にさくっと着られて、楽しくて、ちょっと食事にも出られて、アンダーカバーらしい服かなとか。

心に余裕を、着ることで変わる アンダーカバー・高橋盾に聞く

アンダーカバー2021年春夏コレクション=ブランド提供

――コロナ禍によって、仕事や生活の仕方、意識に変化はありますか。

最初は自宅でデザインができるのか不安だったけれど、思ったよりはかどった。以前は朝、走ってから食事後に新しい音楽を探したり、メールをチェックしたりで午前中はデザインしていなかった。家だと、走って食事して、すぐに仕事をすると午後2時で終わっちゃう。家族とのゆったりとした時間も持てた。今は表参道のアトリエでの仕事に戻りましたが、友人たちと東京から車で1時間くらいの葉山(神奈川県)にアトリエを借りて、来年から週に2日くらい自然の中で仕事をすることにしました。

――表現方法についての意識変化は?

パリ・コレでのショーだけが方法じゃないのかな、自分本来のペースに戻してもいいのかとも思った。白髪も染めるのをやめたんです。50歳を過ぎて、もうちょっといろんな方向を試したくなった。いまコロナ禍で売り上げは厳しいけれど、世の中が変わっていく感じがあって、東日本大震災の時よりも気持ちはポジティブ。テクノロジーが進歩しすぎたから、考え方を1回リセットしてと言われているようで。自分たちは次の新たなフェーズに入るのかな、と感じています。

心に余裕を、着ることで変わる アンダーカバー・高橋盾に聞く

アンダーカバー2021年春夏コレクション=ブランド提供

――ストリートカルチャーのカリスマから、パリ・コレにデビューして18年。日本勢として一定の地位を得ましたね。

少し前までは「自分で表現したいものは服のデザインではないのかも」と考えていました。でも、ワールドワイドで独自のポジションができたし、やめるのは違うかなと。足元にも及ばないけど、80歳に近い川久保玲さんや山本耀司さんたちが現役でパワーを維持していることも励みになる。その後をしっかり受け継ぐ、という意識もあります。

――創作意欲を支えているものは何ですか。

自分が積み上げてきたことに対しての自覚。そして、ブラックユーモアとかふざけた部分も含めて、自分の中でもっと面白いことを表現して、見る人のちょっとした意識を変えていきたいという意欲です。そのために攻める姿勢は常に持っていたい。嗜好(しこう)品と言われたらそれまでだけど、服って音楽や映画と同じで、着ることでその人が変わっていけるパワーがある。こんな大変な時期だから、ポジティブで楽しく過ごすためのもの、心の余裕につながるようなものを見せていきたい。

(編集委員・高橋牧子)

ケイタ・マルヤマと「PITTA MASK」がコラボレーション

一覧へ戻る

世界の街で切り取った400枚超 シトウレイの写真集「Style on the Street:From Tokyo and Beyond」

RECOMMENDおすすめの記事