パリの外国ごはん そのあとで。

ロックダウンのパリで、餃子を包みながら。思い浮かぶのは、恋に落ちたあの店のこと

連載「パリの外国ごはん」では三つのシリーズを順番に、2週に1回配信しています。
《パリの外国ごはん》は、フードライター・川村明子さんと料理家・室田万央里さんが、暮らしながらパリを旅する外国料理レストラン探訪記。
《パリの外国ごはん ふたたび。》は川村さんによる、心に残るレストランの再訪記です。

今週は再びロックダウンに入った現地から、《パリの外国ごはん そのあとで。》をお届けします。室田さんが店の一皿から受けたインスピレーションをもとに、オリジナル料理を考案。レシピをご紹介します。

やってきましたロックダウン第2弾。

前回のロックダウンはそれこそ夜逃げのようにパリを出て、親戚の持つレ島の家にて3カ月。どんなウイルスなのかもわからず、先も見えず仕事もなく、知らない家でただひたすら娘(2歳)の面倒を見ながら、不安を打ち消すように小麦粉を練っていたのを思い出します。

今回は「そろそろ第2弾、来るみたいよ」といううわさがささやかれ始めてから、レストランやバーなどの営業時間が短縮され、外出が21時以降禁止になるなどの段階を踏んでのロックダウン。気持ち的にパニックになることはありませんでしたが、料理教室の仕事はもちろんキャンセル。ケータリングも予想通りキャンセルが相次ぎ、ひいぃ~わかっちゃいたけど、フリーランスのしがない料理人(子持ち)には血の気が引きました。

今回のロックダウンが大きく違うのは、保育園や学校が閉鎖されていないこと。というと、仕事は出来るわけです。ただ仕事が無いだけで。ならば仕事を作ろう!と、急きょ餃子(ギョーザ)の個人宅へのお届けを始めました。自転車に乗ってあっちこっちにGYOZAをお届けです。

SNSで募ってみると運良く希望してくださる方が多く、次の週からアトリエはまさかの餃子工房と化しました。でも、わかるんです。ロックダウンの時、ほんと毎食毎食毎食毎食自炊で、だんだん自分のご飯に心底飽き飽きしてくるんですよね。私も人の作った餃子を食べたいもの。

ロックダウンのパリで、餃子を包みながら。思い浮かぶのは、恋に落ちたあの店のこと

オーガニックの小麦粉で、皮から手作りのヴィーガン餃子はじっくり炒めたタマネギやキノコに、ニンジンやキャベツたっぷり。頭にあったのはBar à momosのベジタリアンモモです。細かく細かく刻んだキャベツがどこまでも優しくほっとする味で、私の餃子であんな風にほっとしてもらえたらなと思いながら、餃子の皮を練って伸ばして。

一つひとつ包むときは、北方小家 Les raviolis de grand mèreの餃子屋のおばさんが目にも留まらぬ速さで餃子に具を入れ、最後にくっと、祈るように両手で皮を閉じる時の背中を思いました。

ああ私、外国ごはんを心から欲しているのです。またお店に行ってぼんやりとそこらを眺めながら、嗅いだことのない匂いに胸をときめかせたいのです。

この連載を始めてもう数年が経ち、いろんなお店を訪れました。私たちが恋に落ちるお店の多くは、今時のおしゃれなガイドでもてはやされているエスニックレストラン、ではなくて、地元の人たちに愛されている小さな個人経営のお店でした。このロックダウンで一番打撃を受けそうなお店たちばかりなのです。この連載を通して出会えた大好きなお店が閉まってしまったら本当に、悲しい。

(この文章を書いた後、連載の相方である川村明子ちゃんが、Les raviolis de grande mère は変わらず餃子を出しているもののオーナーが変わってしまったのか、店名が変わり、餃子を作っていたおばさんも見なかったと教えてくれました。もう、あのおばさんはお店にいないのかな)

ロックダウンのパリで、餃子を包みながら。思い浮かぶのは、恋に落ちたあの店のこと

今回ご紹介するレシピは、餃子ではなく餃子のお供、ラー油です。おいしい外国ごはんを出す店は辛い調味料が自家製、という持論がありまして、「はいどうぞ」と出された料理についてきたチリペーストだったり、テーブルにある青唐辛子の酢漬けだったりと、料理への期待がぐうっと上がり、それは大抵裏切られません。

中国料理店のもろもろと、何やらいろいろ瓶の底に沈んだラー油もしかり。なので私、餃子を作ると決めた時に、絶対にラー油も作ってお客さんにお渡ししたかったのです。

餃子のタレにたらりと垂らしてもらうとぴったりなのはもちろん、ニンニクを入れず生姜(しょうが)をたっぷり利かせているので、朝からおみそ汁やおじやに入れて食べています。なんだか中国のどこかに旅した朝のご飯のようで、どこにも行けない今、ひっそり旅した気分になれてうれしい。昼は昼で一人賄いの汁麺にもかけているし、夕食時はもうあえて食卓に出さず封印しているくらいです。

ああでもこの前、夕食のイワシのお刺し身にかけてしまった。えらいうまかった。皆さんもぜひ作って、外国ごはん気分、味わってください。不安な時期が長く続いていますが、少しでもおいしいもの食べて、心をちょっと緩めていきましょう。

生姜ラー油

ロックダウンのパリで、餃子を包みながら。思い浮かぶのは、恋に落ちたあの店のこと

材料(作りやすい量)

小さな瓶に入れて冷蔵庫で保存したら1カ月はもつと思いますが、多分その前に食べちゃいます(経験談)。

生姜 25g(皮をむいてする)
八角 3個
花椒 大さじ1
赤唐辛子(粉末状) 15g(韓国産の辛味の柔らかいものを使っています)
赤唐辛子 2本(乾燥したものを種ごと小口切り)
塩(自然塩)ひとつまみ
黒砂糖(無ければ三温糖) 小さじ1/2
植物油(香りの無いもの) 90ml

作り方

1.植物油以外の材料を、金属製のボウルに入れ、鍋敷きを下に敷く(熱い油を入れるので)。
2.小鍋に植物油を入れ煙が出るまで熱する。
3.ボウルに油を注ぐ。

ロックダウンのパリで、餃子を包みながら。思い浮かぶのは、恋に落ちたあの店のこと

4.金属製のスプーンで混ぜて冷めるまで待つ。
5.瓶に入れ保存する。

油を注ぎ入れるとじゅわわーと煙が出ます。吸い込まないように注意しないと激しく咳(せ)き込みます。涙も出て大惨事に。窓を開けてのけぞりつつやって下さい。
 

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    PROFILE

    室田万央里

    無類の食べ物好きの両親の元、東京に生まれる。17歳でNYに移り住んだ後、インドネシア、再び東京を経て14年前に渡仏。モード界で働いた後に“食べてもらう事の喜び”への興味が押さえきれずケータリング業に転身。イベントでのケータリングの他、料理教室、出張料理等をパリで行う。
    野菜中心の家庭料理に妄想気味のアジアンテイストが加わった料理を提供。理想の料理は母の握り飯。未だその味に到達できず。

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