あたたかいチョコがとろ~り。フォンダンショコラ

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくれるという夢の連載。今回はお楽しみのスイーツ企画。チョコレートソースがとろける、フォンダンショコラをご紹介します。
◇
―― 冷水先生、こんにちは。気づけばもう師走! 長かったような、あっという間だったような1年でした。
冷水 もう1年のまとめですか(笑)。
―― ハッ! すみません……。12月はクリスマスもありますし、最後まで楽しく過ごさねば、ですね!
冷水 そうですよ~。お正月もやってくるし、みなさんキッチンに立つ機会も増えると思います。張り切ってお料理しましょう。
―― はい! 今回は定期的にお届けしているスイーツ企画へのリクエストが多くて、中でもチョコレートを使ったおやつを教えて欲しいという声が多数です。
冷水 バレンタインを見越してかしら? でも冬はチョコレートが食べたくなりますよね。じゃあ今回は軽いスフレ生地の中からチョコレートソースがとろ~っと出てくるフォンダンショコラなんてどうでしょうか?
―― え! あんな繊細なお菓子が家で作れるんですか? 信じられない!
冷水 それぞれの工程を丁寧にこなせば失敗もしづらいし、材料も多くないので大丈夫ですよ。
―― 本当にシンプルな材料ですね。これなら作ろうって気になります(笑)。

チョコレートと無塩バターを混ぜたものを湯煎で溶かす。お湯がボウルの中に入らないよう、少し大きめのボウルを使いましょう
冷水 まずはスフレの中に仕込むチョコレートソースから作っていきますね。今回は大人っぽい風味にしたいのでカカオ70%のチョコレートを使います。チョコレートをボウルに入れて、そこに沸騰させないように温めた生クリームを加えて溶かしていきます。
―― わ~、チョコレートを溶かすって、小学生時代のバレンタインデーを思い出します(笑)。
冷水 ふふふ、でも子ども時代と違って、今日はここにスパイスとラム酒を加えますよ。スパイスは、ジンジャーパウダーとナツメグ、クローブ、シナモン、カルダモンを少しずつ入れます。もし種類がない場合はシナモンだけでも大丈夫ですよ。洋酒もコアントロー(リキュール)やブランデーなどお好みで。
―― スパイスや洋酒の種類でソースの風味を変えられるのは楽しいですね!
冷水 混ざったらクッキングシートを敷いたバットなどに流し込んで、冷蔵庫で冷やし固めます。これでソース部分はOK。次はスフレの生地を作っていきます。
―― お! またしても懐かしい「湯煎でチョコレートを溶かす」工程ですね。
冷水 無塩バターと一緒に湯煎でゆっくり溶かしてくださいね。その間に別のボウルで卵白と卵黄を泡だてていきましょう。
―― まずはメレンゲづくりですね!

メレンゲはこんな感じ。その他の作業に時間がかかる場合は、ラップをして冷蔵庫へ。冷やすとメレンゲが潰れにくくなります
冷水 卵白に砂糖を加えて、ツノが立つまで泡立て器で攪拌(かくはん)します。間髪を入れずに次は卵黄。こちらも砂糖を加えてよく攪拌してください。
―― 卵白の方は「ツノが立つまで」という攪拌を終える目安がありますが、卵黄はいつになったら混ぜ混ぜ完了!と判断していいんでしょう?
冷水 砂糖のジャリジャリした感じがなくなって、全体にもったりとしてきたらOKです。
―― なるほど! これで「白」と「黄色」、ふたつのボウルが完成しましたね。
冷水 はい、ここからは手順を間違えないように注意してくださいね。まず「黄色」のボウルに湯煎で溶かしておいたチョコレートとバターを加えて混ぜます。そこに薄力粉とココアパウダーを混ぜたものをふるいながら加えます。ゴムべらで切るように混ぜましょう。
―― え~と、「黄色」に「チョコレート&バター」、そして「小麦粉&ココア」ですね!
冷水 そしてここもお間違えなく! 「『黄色』にいろいろ足した」ボウルの中に、「白」のボウル、つまりメレンゲを3回ほどに分けて加えます。
―― 「黄色」のボウルに「白」を足す。って、黄色のボウルはもはや黄色じゃなくて茶色になってますけど……(笑)。
冷水 なぜこの手順が大切かというと、間違ってメレンゲのボウルの方に「『黄色』にいろいろ足した」ものを混ぜると、せっかくフワッと仕上げたメレンゲが潰れてしまうからです。そうすると生地が上手に膨らみません。

生地を型の半量だけ入れたところで、チョコレートソースの素(もと)を投入。サンドするように、残り半量の生地を流し入れます
―― メレンゲの空気の層が壊れてしまうんですね。これは本当に重要かつ、焦っていると間違えやすいポイントですね。赤線を引いておきます!
冷水 ここまでくればもう安心です。冷蔵庫で冷やしておいたチョコレートソースの素を取り出して、作りたいスフレの個数分に切り分けましょう。
―― わ~、生チョコみたいな感じですね。この状態でもおいしそう!
冷水 ここでオーブンを180度に余熱しておくとスムーズです。あとは型の半分くらいまで生地を流し込んで、チョコレートソースの素を置き、残りの生地を流し込んでサンドします。あとはオーブンで10分ほど焼けばできあがりです。
―― フォンダンショコラは、ほとんどが「混ぜ」の工程なんですね(笑)。
冷水 その通り。そしてその「混ぜる」工程を丁寧に、的確にやるかどうかで仕上がりが変わってくるんです。
―― 肝に銘じます! そうこうしているうちに、オーブンからなんとも言えない甘い香りが漂ってきました。ハァ~、たまりませんね、これは。
冷水 おやつは待っている時間も幸せですよね。あっという間に焼き上がるので、とても手軽でいいでしょう?

焼き上がりはこんなふう。オーブンから出してすぐは生地が柔らかいので、粗熱が取れるまでしばらく置いて型から外してください
―― おお~! 焼き上がってすぐのフォンダンショコラって、何というかフルフルしているんですね。ちょっと寄せ豆腐みたいな感じです(笑)。
冷水 焼き上がってすぐは柔らかいので、すぐに型から出すと崩れてしまいます。そのまましばらく置いて、生地が落ち着いてから取り出しましょうね。
―― 中のチョコソースが温かいうちに食べたいですね……。
冷水 そことのせめぎ合いですね(笑)。もし少し冷えてしまったら、オーブントースターなどでサッと温めるとチョコソースがとろけておいしいですよ。あまり火を入れすぎると生地の表面が硬くなってしまうので、塩梅(あんばい)で。
―― わ~、生地はものすごく軽いのに、中のチョコレートソースは濃厚!
冷水 生地もソースもチョコレートなのでバランスが大切ですね。お好みで砂糖の量を調節していただいて結構ですが、私はこれくらいビターな方が好きです。
―― カカオ70%のチョコレートを使ったせいか、すごく大人っぽい風味です。コーヒーはもちろんですけど、ビターで香り高い感じがお酒にも合いそう!
冷水 ソースに使う洋酒の種類を変えるとまた風味も変わりますから、いろいろ試してみてくださいね。
―― 一度にたくさん作った場合は保存できますか?
冷水 はい、冷凍して、食べる前にオーブンやトースターで温めるといいですよ。
―― それはありがたい。この感動のとろ~りチョコを何度も味わえるなんて、最高です!
今日のレシピ
フォンダンショコラ
◎材料(12個分)
〈チョコレートソース用〉
チョコレート(刻む) 50g
生クリーム 70g
好みのスパイス 適量
ラム酒 小さじ1/2
〈生地用〉
A
チョコレート(刻む) 240g
無塩バター 160g
B
卵黄 6個分
砂糖 60g
C
薄力粉 30g
ココアパウダー 30g
D
卵白 6個分
砂糖 60g
◎作り方
1 チョコレートソースの素を作る。チョコレート50gに温めた生クリームを加えて溶かす。好みのスパイスとラム酒を加え、クッキングシートを敷いたバットなどに流し入れて冷蔵庫で冷やしカットできるくらいに固める。
2 Aの材料を合わせて湯煎で溶かす。
3 ボウルにDの材料を入れ、泡立て器でツノが立つまで攪拌する。
4 別のボウルにBの材料を入れ、もったりするまで混ぜ合わせる。
5 B(「黄色」のボウル)にAを加え混ぜる。さらに、Cをふるい、切るように混ぜる。
6 5(「黄色」のボウル)に3で作ったメレンゲを3回に分けて入れ混ぜる。
7 型に6を半量入れ、1のチョコレートソースの素を等分に切ったものを入れる。その上に6を半量を入れ、180度に予熱したオーブンで10分焼く。
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(料理・レシピ 冷水希三子 写真 関めぐみ 文 小林百合子)
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〈インフォメーション〉
リゾートホテル「ししいわハウス」で冷⽔希三⼦さん監修の朝食を
11月1日(日)より、長野県・軽井沢町の中軽井沢エリアにあるSHISHI-IWA HOUSE(ししいわハウス)に宿泊すると、冷⽔希三⼦さん監修の朝⾷をお楽しみいただけます。一日のはじまりに軽井沢の森を眺めながら贅沢(ぜいたく)な時間を過ごしてみませんか。

(c)Kazumasa Harada

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ししいわハウスは、プリツカー賞受賞の建築家、坂茂(ばん・しげる)氏が設計したリゾート・ホテルです。都会の喧騒から離れた場所に知的で想像力をかきたてる建築空間を提供したいという思いから2019年2⽉に誕生しました。
全ての客室から、浅間山や常緑樹、桜、もみじなど四季折々の美しい景観を楽しむことができます。

(c)Hiroyuki Hirai
SHISHI-IWA HOUSE(ししいわハウス)
住所:長野県北佐久郡軽井沢町長倉2147-646
TEL:080-7691-6020
Mail:inquiry@shishiiwahouse.com
http://www.shishiiwahouse.jp/
・ご希望のゲストには、オーガニックの消毒スプレー(仏ブランド「ケルゾン」がししいわハウスのためにセレクト)と、繰り返し使える布製マスク(軽井沢の職人が製作)を無料で差し上げます。ぜひご携帯、ご活用いただくことを推奨いたします。
・新たに厳格な消毒清掃プログラムをスタッフが継続します。ご滞在中、特によく手が触れるドアノブや手すり部分などを重点的に、最高水準の衛生管理を徹底いたします。
・広々としたホテル内のスペースは、独立したユニットで構成されており、それぞれにエントランス、リビング・ルームがございます。ゲスト同士の接触を極力避けるため、予約の際は可能な限り、離れた場所にあるユニットを確保いたします。
冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家
PROFILE
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小林百合子
編集者
1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。 -
関めぐみ(写真)
写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。