料理家・冷水希三子の何食べたい?

味はさっぱり、見た目も味も上品。大人のしょうが焼き

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくれるという夢の連載。今回は「がっつり飯」のイメージが強い豚肉のしょうが焼きを、上品にさっぱり味に仕上げるコツを教えていただきます。

     ◇

―― 冷水先生、こんにちは。新しい年を迎えて、すがすがしいですね。2021年もお料理の腕をガンガン磨いていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします!

冷水 こちらこそ、よろしくお願いします。今年も楽しくお料理していきましょうね。

―― 早速なのですが、今日は基本に立ち返って基本のお料理を教えていただきたいと思っています。

冷水 たま~にリクエストが来る定番おかずのシリーズですね(笑)。

―― はい、これまで鶏のから揚げハンバーグなどを教えていただきましたが、冷水先生の家庭料理はどれも普通なのに、普通じゃない! なんていうか、これまで作っていたものより格段に上品で洗練されたお味なんです!

冷水 そう言っていただけるとうれしいです。

―― で、今回はですね……、いつの時代も、がっつり食べたい人が好きなメニューの上位にランクインする、豚のしょうが焼きなんてどうかなと思っております。

冷水 なるほど……。ちなみにどんなことで困っているんですか?

―― 読者投稿で多いのは、味はともかく、見た目がどうしても美しくない……と(笑)。確かに茶色一色だし、ざざっと炒めた印象が強いですよね。

冷水 それはそれでおいしそうですけどね。

―― あとはやっぱり、どうしても味が濃くなりがちという声が多いです。

冷水 わかりました。といってもそこまで劇的な違いやポイントがあるかどうかわかりませんが、作ってみましょう!

味はさっぱり、見た目も味も上品。大人のしょうが焼き

使うお肉は「しょうが焼き用」。厚みは大体5mmくらいです

―― まずはお肉の選び方なんですけど、家庭によって薄いものや厚いもの、いろいろありますよね。正解ってあるんですか?

冷水 そこはお好みだと思いますが、今回は「しょうが焼き用」というラベルで売られているお肉を使います。大体5mm前後の厚みです。あんまりぶ厚いと味が絡みづらいのと、薄すぎると食べ応えがないかなと思いますしね。

―― あとは下味問題もあります。最後に濃いタレが絡むので、下味はどのくらいつけたらいいのかな……と。

冷水 下味は合わせ調味料に10分ほど漬け込む程度でいいですよ。お酒としょうが汁、濃口醤油(しょうゆ)です。

―― あれ、しょうがはすり下ろしではなくて、搾った汁を使うんですね!?

冷水 はい、そのほうが口当たりがいいですし、雑味も少なくなるので。タレにも同様に汁を使います。

―― なるほど! いつもすり下ろしを使っていたのですが、確かに汁だけの方がタレも美しく仕上がりそうです。

冷水 お肉に下味がついたら、焼いていきましょう。

―― この「焼き」の工程も意外と難しいような気がします。何も考えずに焼くとお肉が縮んで、硬くなってしまいがちです。

味はさっぱり、見た目も味も上品。大人のしょうが焼き

すり下ろしたしょうがをギュッと搾って、汁だけを使います。雑味がなく、すっきり、爽やかなしょうがの風味が引き立つタレになります

冷水 きっとそれは「焼く」と「炒める」を混同しているからかも。お肉を入れて強火でがっと炒めると、どうしても硬くなってしまいがちです。しょうが焼きは、あくまで「焼き」ですから、フライパンに入れたらあまりいじらず、片面ずつ丁寧に焼いていくとお肉の縮みもそこまで気になりませんよ。

―― なるほど!

冷水 あとは一度にたくさん焼こうと思わないこと。きちんとお肉を広げて、重ならない状態で焼くこと。

―― あ~、お察しの通り、一度で済ませたいので、めちゃくちゃ重ねて焼いてました。そうするとどうしても火の通りが均一にならないので、フライパンの中でぐちゃぐちゃと混ぜちゃうんですよね。まさに「炒め」てました(涙)。

冷水 では、しっかりと「焼き」の工程を見ていてくださいね。まずは豚肉の片面だけに軽く片栗粉をつけてフライパンに入れます。

―― え、片面だけでいいんですか!?

冷水 これもお好みですが、私は片面だけの方が好みです。両面にしっかりと片栗粉をつけると、タレがどろっとしすぎて全体的に味が濃く、重たくなってしまうんです。

―― なるほど。あと、いつもはすごく丁寧に粉をつける先生ですが、今回は片栗粉を入れたバットにものすごくラフにお肉をバウンドさせていました。粉のつき方に少々ムラがありますけど、先生、何かあったんでしょうか!?

味はさっぱり、見た目も味も上品。大人のしょうが焼き

豚肉につける片栗粉は片面だけ。ところどころに粉がつくようなラフな感じでOKです

冷水 いえいえ、これはあえてです(笑)。こうしてラフに粉がついていると、粉がついている部分にはしっかりとタレが絡んで、一方のあまり粉がついていない部分は、タレがあまり絡まないのでさっぱりした風味になります。1枚のお肉の中にも味の濃淡が出て、バランスがよくなるんですよ。

―― なんという細かい心配り! 確かにしょうが焼きって最初はおいしいんですけど、食べ続けているともたれてきますものね。

冷水 早速、片栗粉がついている面から焼いていきますね。フライパンに入れたらいじらず、うっすら焦げ目がつくくらいまでそっとしておいてください。焼き目がついたら裏返して、その後いったん取り出します。これを何度か繰り返して、すべてのお肉を焼いていきます。

―― わ~、きちんと広げて丁寧に焼くと、お肉がそれほど縮まないですね。

冷水 そうなんです。あと、いったん取り出したお肉が冷めても、最後にフライパンに戻してタレを絡めますから心配ないですよ。

―― なぜこれまで「一斉焼き」にこだわっていたのか、本当に謎です……。

冷水 さて、お肉が焼けたら、フライパンの油を奇麗に拭き取りましょう。お肉を焼いた油が残っているところにタレの調味料を入れると臭みの原因になりますし、油っぽくなってしまうので。

―― ここも、きれいな味を作るためのひと手間ですね!

味はさっぱり、見た目も味も上品。大人のしょうが焼き

焼いた豚肉をフライパンに戻し入れて、タレを絡めます。すでに肉に火が通っているので、サッと炒め絡めるような感じで

冷水 あとは、豚肉をフライパンに戻して、タレの調味料を加えてサッと炒め絡めるだけです。

―― あれ!? しょうが焼きの名脇役である玉ねぎが見当たりませんが、今回はお肉オンリーですか!?

冷水 いえいえ、玉ねぎは別でゆでておいたんです。辛みがなくなる程度に。それをお皿に敷いて、玉ねぎの上にしょうが焼きとタレを盛ったら完成です。

―― 玉ねぎは炒めずにゆでるんですね、これは初めて見るしょうが焼きです!

冷水 玉ねぎにもしっかりとタレが絡むと、全部が同じ味になってしまうでしょう? でもこれならお好みでタレを絡めて玉ねぎを食べられるので、重たさを感じずに最後までおいしく召し上がっていただけると思います。

―― 茶色いしょうが焼きの下からのぞく純白の玉ねぎの美しいこと! これならお客さんに出してもいいかもしれないですね。

冷水 お好みで水菜やルッコラ、キャベツなどの葉野菜を添えると、より彩りが美しくなりますよ。

―― う~ん、丁寧に焼いたお肉は柔らかくて、タレもさらっとしていて全体的に軽い印象です。こんなに上品なしょうが焼き、食べたことありません!

冷水 それはよかったです。洋風のお皿に盛るといつもと雰囲気が変わるので、盛り付けもぜひいろいろ試してみてください。

今日のレシピ

豚のしょうが焼き

◎材料(2人分)

豚しょうが焼き用 150g
片栗粉 適量
油 適量
玉ねぎ、水菜、ルッコラなどお好みの葉野菜 適量

A
酒 大さじ1/2
しょうが汁 大さじ1/2
濃口醤油 大さじ1/4

B
濃口醤油 大さじ1/2
みりん 大さじ1/2
酒 大さじ1/2
しょうが汁 大さじ1/2
砂糖 2g

◎作り方

 豚肉に混ぜ合わせたをもみ込んで10分おく。

 の豚肉の片面にだけ片栗粉をつけ、適量の油を入れたフライパンで片栗粉をつけた面から先に焼く。両面を焼いていったん、フライパンから豚肉を取り出す。すべての豚肉が焼けたら、フライパンの油を拭き取る。

 のフライパンに豚肉を戻し入れ、混ぜ合わせたを加えてサッと炒めてからめる。

 器に、1cm幅にくし切りして、辛みがなくなる程度にサッとゆでた玉ねぎを敷き、お好みの野菜を添えの豚肉を盛る。

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(料理・レシピ 冷水希三子 写真 関めぐみ 文 小林百合子)
 

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冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家

味はさっぱり、見た目も味も上品。大人のしょうが焼き

料理家・フードコーディネーター。レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を使ったやさしい味の料理が評判を呼び、雑誌や広告などで活躍中。器選びや盛り付けに至るまで、その料理の美しさでも注目を集めている。著書に『ONE PLATE OF SEASONS-四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(ともにグラフィック社)など。

PROFILE

  • 小林百合子

    編集者
    1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

  • 関めぐみ(写真)

    写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。

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