リノベーション・スタイル

「ゾーン分け」と「一つの空間」が共存する、リノベーションだからできること

Kさんご夫妻(夫31歳・妻36歳)
千葉県柏市/74.49㎡/築32年/総工費1194万円

     ◇

結婚を機に家探しを始めたKさんご夫妻。お二人ともインテリア関係の仕事をしていることもあり、「面白い家を作りたい」と相談にいらっしゃいました。そんなお二人が、リノベーションのために選んだ物件は、最上階にある勾配天井(こうばいてんじょう)のマンション。勾配天井とは、屋根の形状をそのまま生かした斜めの天井のこと。天井が高く開放感があり、インテリアのアクセントにもなります。

こちらのマンションは、大きな間取り変更が難しい壁式構造(壁を主体にした建物は壁式構造。柱と梁(はり)を基本にした建物はラーメン構造)。そこで、変更できない壁を生かし、暮らしやすいように「家ですること」を三つのゾーンに分けてみました。

「ゾーン分け」と「一つの空間」が共存する、リノベーションだからできること

玄関の横に設けた小上がりスペース。正面には飾り棚を作って、お気に入りの小物やアートをレイアウト(写真左)。玄関ホールと寝室を区切る壁の上部にはガラスをはめ込んでいる。視線が抜けて、より広がりを感じる(写真右)

一つ目は、くつろぐゾーン。玄関入ってすぐの、元は個室だったところをオープンスペースにして、広めの小上がりを作りました。勾配天井で壁が広くなる部分は、ギャラリーのような棚をつけ、絵や雑貨を飾れるようにしました。小上がりにはラグを敷いて、ゴロゴロしながらホームギャラリーを楽しんだり、漫画を読んだりできるセカンドリビングに。将来は、子供部屋にも変更可能な、フレキシブルなスペースです。

「ゾーン分け」と「一つの空間」が共存する、リノベーションだからできること

廊下を利用した幅2.5mの洗面カウンター。朝の支度や、家事がしやすい空間に(写真左)。奥様お手製の、既製品をカスタマイズしたランドリーワゴン。洗面カウンターの下に納まるようにデザインした

二つ目のゾーンは、家事や仕事のゾーン。廊下をただの通路にしないで、洗面台のある長さ2.5メートルのカウンターを作って、家事スペースにしました。奥様が洗濯グッズをまとめて収納できるランドリーワゴンを手作りされていたので、これが収まるようにカウンターの高さを調整。家事スペースでは、洋服をたたんだり、アイロンをかけたりと、家事が効率よくできるアイデアが詰まっています。

そして、その並びにKさんのワークスペースがあります。仕切りにはガラスを使い、上部をオープンにしました。空気や風は流れるけれど、音はある程度は遮断。オンラインの会議などもでき、仕事には集中できるそうです。適度なこもり感と開放感が混在し、休日は好きな趣味にも没頭できるとか。

「ゾーン分け」と「一つの空間」が共存する、リノベーションだからできること

高い天井を生かし、余白を残したリビング。ワークスペースとゆるやかにつながる

三つ目のゾーンは、暮らしの中心となるLDK。勾配天井を生かした、広々とした明るい空間です。ワークスペースはLDKに隣接していますが、ガラスの仕切りなので、どちらからも視線を遮ることがなく開放感があります。お互いの気配を感じつつ、ワークスペースで、キッチンで、それぞれがマイペースに仕事や家事をできます。

さて、家は三つのゾーンに分かれていますが、実はこの家の大きな特徴は、全体が一つの空間としてゆるやかにつながっていることです。Kさんご夫妻は、収納上手だったり、家事の時短アイデアを持っていたり、趣味を楽しんだりと、ゾーンごとの「仕組み作り」は、得意とのことでした。そこで私たちは、家全体の“動線”を意識して、その仕組みがスムーズに機能するような「遊び(=余裕、余白)」を住まいの中にプラスしました。それは、勾配天井を生かしたホームギャラリーだったり、廊下に作った家事スペースだったり、ガラスの仕切りのワークスペースだったりといったアイデア。「ゾーン分け」と「一つの空間」が共存し、暮らし全体のつながりを大切にしたリノベーションになりました。

「ゾーン分け」と「一つの空間」が共存する、リノベーションだからできること

Kさんご夫妻に聞く
リノベーションQ&A

Q1 リノベーションのプロセスで楽しかったことは?

初めての打ち合わせでは、漠然としたイメージしかなかったのですが、私たちがぽろっと口にした言葉を、建築士さんが覚えていてくださり、次の打ち合わせで色々とご提案いただけたことに感動しました。毎回とても熱心に話を聞いてくださり、細かなところまでご提案いただけるので家のことを考えるのがどんどん楽しくなりました。施工が始まってからは、日を追うごとに出来上がっていくので、家を見に行く日が待ち遠しく感じられました。

Q2 プロセスで大変なことはありましたか?

壁や天井を全て取り払い、大きなところから細かなところまで全てを決定していくので、全体で見たときに統一感があるかなど、答えをみつけていくことが難しくもあり、面白く勉強になりました。

Q3 リノベーションで一番大切にしたことはなんですか?

家作りを考えているときは、今までの暮らしで実践してきた、自分たちにあった家事の動線や必要な収納、置きたい家具が優先でした。でも、出来上がった家で暮らしてみると、人と物に居場所があり空間がゆるくつながっていることに気づきました。好きな本や雑貨、食器などにちゃんと居場所があり、くつろぎたい時に居られる場所がいくつもあります。

「ゾーン分け」と「一つの空間」が共存する、リノベーションだからできること

ガラスに囲まれたワークスペースは、Kさんの趣味のものに囲まれたお気に入りの空間

多くの時間を過ごすワークスペースとLDKの間には壁を作らず、大きなガラスで仕切ったので、お互いの気配を感じながらも仕事や家事に集中できてコミュニケーションの取りやすい環境になりました。元々、家でくつろぐのがとても好きでその時間を大切にしていたので、ブルースタジオさんによって思いが引き出され、居心地のいい家になりました。

(構成・文 大橋史子)

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PROFILE

石井健

「ブルースタジオ」執行役員
1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。
http://www.bluestudio.jp/

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