低アルコールなのにおいしい、サステイナブルなカリフォルニアワイン
文: 中津海麻子

2021年スタート! コロナ禍の試練がまだまだ続くものの、今年も心と体が喜ぶおいしいものをいただきたい。新年初回は、ヘルスコンシャスでサステイナブルな注目のカリフォルニアワインを、東京・千駄木のレストラン「tono;4122」の外岡聡一シェフ、マダムの潤子さんがナビゲート!
今回のソムリエ
健康志向のワインが増加
年末年始は、ほぼ出かけることもなく、食っちゃ寝飲んじゃ寝。正月太りや胃腸の疲れを感じている人も多いのでは? 筆者もまさにその一人。でも、やっぱりワインが飲みたい! 「では、低アルコールのワインはいかが?」と潤子さん。
ここ数年、健康志向もあり、和食をはじめヘルシーでライトな食が世界的に好まれ、そうした食事情に合わせてワインも優しいタイプが好まれる傾向に。フランス、イタリアなどワインの歴史が長い「旧世界」はもちろん、アメリカのカリフォルニアやチリといった「新世界」でも、バランス重視のエレガントなワインが増えている。
そうした流れの中で、アルコール度数が低めやアルコールフリーのワインを手がけるワイナリーも出てきた。外岡シェフと潤子さんはこれまでにもいくつか試してきたそうだが、「納得のいくものはほとんどなかった」と話す。「香りが弱い、味わいがぼんやりのっぺりしているなどそもそもワインとしておいしくないものや、味わいはそこそこだけどコストがかかっているせいか価格が高いなど、『ワインとして普通に楽しめる』ものではなかったのです」(潤子さん)
ところが昨秋に出会ったあるワインに目を見張ったという。潤子さんはこう振り返る。
「味も香りも申し分ナシ! ワインとしての満足度が高く、言われなければ低アルコールとは気づかなかったかも(笑)」
それが「サニー・ウィズ・ア・チャンス・オブ・フラワーズ」(以下「サニー」)。
カリフォルニアの生産者「シャイド・ファミリー・ワインズ」が昨年リリースしたシリーズで、一般的なワインがアルコール度数12~14%なのに対し、「サニー」は9%。さらに糖質ゼロ、カロリーも通常のワインに比べ約30%を実現している。
その仕組みは、まず通常のワインを造り、そのワインからアルコール分を抜いていくというもの。これは一般的な方法だが、「サニー」は少しずつ、ゆっくり何度もこの工程を繰り返すことによって、アルコールを抜きながらワインの香りやうまみは保っていく。そして、風味、口当たり、ボディーが最もバランスのいい「スイートスポット」を探り、仕上げている。
「設備と技術力はもちろん、そもそものワインのクオリティー、さらにはブドウの質の高さによって、低アルコール、糖質ゼロ、カロリーオフ、なのにワインとしてちゃんとおいしい『サニー』は生まれるのです」と潤子さん。
シャイド・ファミリー・ワインズは長年、カリフォルニアの中でも屈指の産地モントレーに広大な自社畑を持ち、良質なブドウを栽培し続けてきた。カリフォルニアの名だたるワイナリーにもブドウを納めているという。そのブドウを使い、最先端の設備を誇るワイナリーで自社ブランドのワインを手がけている。
ブドウ栽培はもちろん、ワイン造りについても評価は年々高まっている。その立役者の一人が、創業者の娘であり現在は副社長のポストにあるハイディ・シャイドさん。
自社畑をさらに広げ、ワインの生産量を増やしつつ、サステイナブルなワイン造りにも積極的に取り組み、畑もワイナリーも、「カリフォルニア・サステイナブル・ワイングローイング・アライアンス(CSWA)」などのサステイナブル認定を受けている。ワイン造りに使うエネルギーは自社風力発電ですべてまかない、余った電力は近隣に分けているほど。アメリカでも自社で100パーセントのエネルギーを供給できているのは、数社しかないのだとか。
こうした先進的で未来志向の取り組みが評価され、ハイディさんはアメリカの著名なワイン誌『ワイン・エンスージアスト』が、その年にワイン産業に貢献した人を選出する「2020 ワイン・スター・アワーズ」で「パーソン・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。「サニー」は、そのコンセプトから開発までをハイディさんが手がけた新商品。アメリカでは昨夏にデビューし、そのクオリティーが大きな反響を呼んでいる。開発にはコストも時間もかかっているが、ブドウもエネルギーも「自前」ゆえに、1本2000円以下のリーズナブルな価格も魅力的だ。
白はシャルドネとソーヴィニヨンブラン、赤はピノ・ノワールの3種をラインアップ。「どのワインもブドウ品種の特徴や個性がとてもキレイに表現されていて、この3種があれば様々な料理とのペアリングが楽しめます」。そう話す外岡シェフが、お店で大人気の「tonoオリジナルダッカー」と、これを使ったメインの一皿「ポークのマスタードソテー」を紹介する。
【tonoオリジナルダッカー】
材料
ミックスナッツ(殻をむいたピスタチオ、アーモンド、ヘーゼルナッツなどお好みで) 50g
白ごま 15g
塩、パプリカパウダー 各少々
好みでクミンシードやコリアンダーシード少々
作り方
1. ミックスナッツをフードプロセッサーで、粒感が残る程度に砕く。
(フードプロセッサーがない場合は、丈夫なファスナーバッグにナッツを入れ、空き瓶などでたたき砕いても)
2. 大ぶりなボウルに1のナッツと、残りの塩以外の材料を加えてよく混ぜる。
3. 塩で好みの味に調整する。
このオリジナルダッカーは、オーストラリアでよく食べられるナッツのクランチ「デュカ(Dukkah)」をアレンジしたもの。「現地で『これはなんというの?』と尋ねたら、オーストラリアなまりもあって『ダッカー!』と聞こえたんです。だからうちの店ではダッカーになりました」とシェフは笑う。潤子さんは「オリーブオイルに浸したパンをつけたり、サラダにトッピングしたり、お好みで色々と楽しめます」
香ばしくてスパイシー、ほどよい塩味は「ワインが進む」と店でも大人気だ。
「パン、オリーブオイル、ダッカーには『サニー』の白ワインがピッタリ。このペアリングでのんびりスタートし、メインディッシュのソテーに取り掛かりましょう!」
【ポークのマスタードソテー】
材料(2人分)
豚ロース 150gを2枚
塩、コショウ 各少々
ディジョンマスタード 適量
ダッカー 適量
作り方
1. 豚ロースを筋切りし、両面に塩、コショウを軽く振る。
2. フライパンに1を並べ、強火で片面を軽く焦げ目がつくまで焼き、返して中火で30秒焼く。
3. 火を止め、フタをして余熱で2分ほど火を通す。
4. 肉を取り出しペーパータオルで軽く包み、肉汁を落ち着かせるために3分ほど置く。
5. 4の片面全体にマスタードを塗り、ダッカーをたっぷりと振りかけ、上から軽く抑えてなじませる。
6. 食べやすく切り分け、盛り付ける。

季節の野菜のソテーを添えて。今回は埼玉県深谷市の農家から直接取り寄せている「深谷新戒ネギ」を。寒さで糖度が上がったネギはトロッと甘く、スパイシーなポークとのコントラストも楽しい
「『サニー』のソーヴィニヨンブランは、グアバやパイナップルなどのトロピカルフルーツの香りの中に、グレープフルーツのニュアンスも。後に広がるほんのりとした苦味とフレッシュハーブを思わせるグリーンのトーンが、ダッカーのクミン、コリアンダーなどのスパイスと相性抜群。キリッとした酸味が豚の脂をすっきりと流してくれます。一方シャルドネは、リンゴのゴールデンデリシャス、洋ナシなどの甘やかな香りを、メイヤーレモンのような優しい酸味が引き締めます。アフターに広がるバニラ香が豚肉の甘みをまろやかに包み込みます」(外岡シェフ)

フォカッチャにオリーブオイルとダッカーをつける。これだけでもワインが進む!
白ワインをしばし楽しんだら、クライマックスはやっぱり赤で。
「ピノ・ノワールは、ブラックチェリーやザクロ、ベリー系の豊かな果実味と、穏やかな酸味、優しい渋みがバランス良く、豚のうまみとスパイスの香りを絶妙につないでくれます。余韻にはオークの香りがほんのりと広がり、飲みごたえも十分!」(潤子さん)
しっかりと満足感のあるペアリング。そして、翌日は体が軽い、しんどくない!……と筆者も実感する。生みの親であるハイディは日々ボディーメンテナンスを欠かさないが、「サニーを飲んだ次の朝はいつも通り5時に起きてジョギングを楽しめるの」と話しているのだとか。
「ヘルシー」「サステイナブル」。これからの時代には欠かせないキーワードだが、ワインはやっぱりおいしくなくちゃワクワクしない! 「低アルで糖質ゼロで本当においしいの?」といぶかる人にこそ飲んでほしい、心も体も軽やかにしてくれる最旬ワインだ。これからは、ライフスタイルに合わせてワインを選んでみては?
「サニー・ウィズ・ア・チャンス・オブ・フラワーズ」
シャイド・ファミリー・ワインズ、1950円(希望小売価格・税別)
カリフォルニアの中で良質なブドウが生まれるテロワールを誇るモントレー。シャイド・ファミリー・ワインズは1972年から、12の自社畑で品質の高いブドウを栽培している。そのブドウを使い、「シャイド・ヴィンヤーズ」「ランチ32」「オッドロット」などいくつかのワインブランドを展開。「サニー・ウィズ・ア・チャンス・オブ・フラワーズ」は昨年夏、アメリカでリリースした。ハンディさんはこう語っている。コンセプトは「楽観的で健康なライフスタイルのためのブランド」。ヘルシー、おいしい、さらにサステイナブルなワインは、健康意識の高い層はもちろん、クオリティーにもこだわるワイン愛好家やワイン業界からも大きな注目を集めている。
オルカ・インターナショナルのサイトから購入可能。