コッペパンの進化が止まらない! 北千住のビストロ発、魂のサンドイッチ/ニコミヤキッチン デリコッペ
文: 池田浩明

足立区はコッペパンシティーなのである。コッペパン専門店が続々登場、昔ながらのパン屋さんにも、スプレッドを選んで塗ってもらえるコッペパンコーナーが標準装備。区民あげてコッペパン大好きな土地柄なのだ。
とはいえ、まさか事態がここまで進んでいるとは。北千住「ニコミヤキッチン デリコッペ」での出来事である。なにしろ驚いた。コッペパンの上に鎮座ましますのは世界三大珍味のひとつ、フォ、フォ、フォアグラ様ではないですか!

とろけるフォアグラコッペ
まさに「とろけるフォアグラサンド」だ。快楽の脂が舌の上でねっとりとろーり。さらに、トッピングのイチジクがフォアグラのフルーティーさを持ち上げ、絶妙の塩がソース代わりのはちみつといっしょに溶け、甘じょっぱエクスタシーに天地も揺らぐ。それでいて、コッペパンはふわふわエアリー。全粒粉は後味になつかしく滲(にじ)んで、給食の思い出を想起させずにおかない。庶民派なつかしパン筆頭と高級フランス料理代表が北千住にてまさかの邂逅(かいこう)を果たしている。
なんだってこんな店ができあがったのか。母体となっているのは、北千住でフレンチビストロやイタリアンバルを展開するニコミヤグループ。
「ニコミヤのお客さんは、ワイン好きの人が中心。お酒を飲まない人にももっとニコミヤを楽しんでもらいたい。そこで、下町なので、コッペパンを介してニコミヤの味が広まっていったらいいなと思ったんです」と富井真介社長。

店内風景
見た目はまるでバル。ちがうのは、コッペパンの写真がずらっと並んでいること。選んで注文すると、富井社長自ら具材をサンド。とても丁寧なので、正直いって時間がかかる。経営効率としては悪いはず。でも、ここは譲れない一線なのだという。
「レストラン出身だからか、注文をもらってから作るのが、体にしみついているんでしょうね。できるだけできたてを提供する。なるべく早く作るようにはしていますが、最初はお叱りも受けました」
前述フォアグラのテリーヌはじめ、ニコミヤ各店の人気メニューがコッペサンドに仕立てられている。「ビストロトリゴボウコッペ」もそのひとつ。上にのっているのは、うまい棒ではなく、極太ごぼう一本揚げ。揚げたてざっくざく。歯に響く快感に身悶(もだ)えしつつ、その下に感じるは低温調理チキンのやわらかなむにゅっ。さらにその下にキャロットラペぱりぱり。フレンチの技をきかせたポルトソースの甘い雫(しずく)もごぼうから香りと甘みを引き出している。

ビストロトリゴボウコッペ
コッペパンだからデザートメニューにも事欠かず。北海道の生産者から取り寄せた「あかね大納言」で作る「大納言のあん生&クリームチーズコッペ」。大納言のあんこの上にふわふわクリーム。小豆の濃厚な香りと甘さがミルキーさにまみれる、ねっとりとろとろの全面幸福状態。そこへ、かりっと塩つぶが小粋なアクセント。フォアグラにつづき、ここでも甘じょっぱの快楽に身をよじることとなった。

大納言のあん生&クリームチーズコッペ
なお、歯の動きに合わせむにむにとされるがままになる、リーン(麦そのものの味。リッチの反対語)でやわらかなコッペパンは、熊本のベーカリー「グラハムバンズ」製を使用。
「このお店のバンズを食べてみたら『これうめえな!』。これだったらおまかせしたいと思い、電話してお願いし、コッペパン型に作ってもらうことになりました」
できるまで2階席でゆっくりと待って店内でできたてを味わうもよし。時間を気にされる方は電話で予約してもよし。コッペ三つで、前菜、メイン、デザートと選べば、コースも立派に完成する。こんなビストロメイドの入魂コッペパン、唯一無二だろう。
ニコミヤキッチン デリコッペ
東京都足立区千住4-19-16
03-3870-5600
11:00~21:00
無休
https://tabelog.com/tokyo/A1324/A132402/13214425/
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