つむぱぱの幸せの気づき方

私とおじいちゃんの「おうち前冬の陣」

娘の「つむぎちゃん」や、息子の「なおくん」との何げない、ほっこりした日常のイラストをInstagramに投稿する「つむぱぱ」さん。

そんなつむぱぱさんが、みなさんの「家族との、個人的な幸せの思い出」をもとにイラストを描く連載「つむぱぱの幸せの気づき方」。

今回は、“私”とおじいちゃんの攻防戦のお話です。

神奈川県在住・20代女性

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私とおじいちゃんの「おうち前冬の陣」

大切な人とさえ、気軽に会えなくなってしまったからか、過去のなんてことないふれあいが尊く思い出される。

幼い頃、私が住んでいたアパートの近くで工場を経営していた祖父が、週に一度くらい、たくさんのお菓子を持ってふらっと寄ってくれることがあった。週に一度くらい、というのはその通りで、約束も連絡もなく、だいたい木曜日の夕方に、グレーのつなぎを着た祖父がやってくることもあれば、来ないこともあった。

現在のようにスマートフォンが広く普及していると、電話をかけるだけでも、「今から話せる?」とメッセージで確認してしまったりするけれど、あの頃は祖父のように、前触れもなく親しい人を訪れる人が少なくなかったと思う。そして、いつも元気な祖父の突然の来訪は、私たちにとって、すごくうれしいものだった。

私とおじいちゃんの「おうち前冬の陣」

私と双子の妹が小学生になったばかりの頃、ある冬の日に2人で留守番をすることになった。父は朝から出勤していて、母は幼い弟を連れて、スーパーへ買い物に行った。母は出かける際、「いいわね、誰かが来ても、絶対にドアを開けちゃダメよ。怖い人が来るかもしれないんだから」と言い、私たちは「うん」と大きくうなずいた。

私とおじいちゃんの「おうち前冬の陣」

2人でおままごとをしている時、チャイムが鳴った。カレンダーを見ると、その日は木曜日。もしかしたら、祖父かも。一瞬、喜びの表情で妹と顔を見合わせたけれど、2人の頭の中には母の言葉がしっかりと刻まれている。

私とおじいちゃんの「おうち前冬の陣」

「誰が来ても、開けちゃだめって言われたもんね」

私と妹は互いにそう繰り返しながら、呼び鈴を5回くらいやり過ごして居留守をした。なぜだか、胸のあたりがちょっと苦しくなったことを覚えている。

私とおじいちゃんの「おうち前冬の陣」

静かになると、私と妹は玄関が見える窓へ急いだ。外には、黒いジャンパーとつなぎを着た祖父の後ろ姿が見えた。

私とおじいちゃんの「おうち前冬の陣」

「おじいちゃん!」。私たちが呼ぶと、祖父は振り向いて、「なんだ、いたのか」と笑いながら窓の方へ寄り、「ドアを開けてくれよ」と言った。

「でも、お母さんから誰が来ても、開けちゃダメって言われてるの」と私たち。

「いやいや、おじいちゃんだから、大丈夫だろう。知らない人じゃないし」と祖父は慌てた様子で私たちに言ったが、幼い2人は「でも、お母さんはダメって言ってたよね」と確認し合って、頑としてドアを開けなかった。

私とおじいちゃんの「おうち前冬の陣」

祖父は寒さにすこし肩を震わせながら、「わかったよ。じゃあ、お菓子だけ置いていくよ」と諦め、大きな袋を窓越しに渡そうとしたちょうどその時、「あら、お父さん」と母が弟と一緒に帰ってきた。

安心した祖父が事情を説明すると、母は「ごめんね」と謝りながらすぐにドアを開け、私たちが死守していた部屋に祖父を通した。

「お母さんの言いつけを、しっかり守ってたんだねえ」と笑いながら、祖父はようやく暖かい部屋の中に招き入れられたのだ。

そこからはいつもの楽しい時間。優しくて明るい祖父は、面白いなぞなぞをたくさん知っていて、私たちを喜ばせてくれた。祖父が持ってきてくれたお菓子の中には、ちょっと辛いおかきなんかも入っていて、「辛い!」とはしゃぎながら、食べるのも楽しかった。

祖父を家にあげなかった時の押し問答は、親戚中の笑い話になり、年末年始などに集まる時に、よく話題になった。祖父はもう他界してしまったけれど、また親戚みんなで集まって祖父の話に花を咲かせたい。

私とおじいちゃんの「おうち前冬の陣」

(文=井川洋一)

つむぱぱさんの言の葉

子供の素直さって、かわいいですよね。僕の誕生日に、娘のつむぎがワクワクしていたので、「どうしたの?」と聞くと「サプライズでパパのたんじょうびケーキを作るんだ~!」と楽しそうに教えてくれました。

素直さとは少し違うかもしれませんが、僕自身のエピソードで、強烈に覚えているのがひとつあって。すいぶん前の話になりますが、兄の高校入学祝いで家族でハワイに行った時のことです。その当時僕は、14歳でした。

ハワイにはバギーに乗れるアトラクションがありました。僕はそれをとても楽しみにしていたのですが、着くや否や、14歳以下は年齢制限で乗れないとわかったんです。

父親はせっかくハワイまで来たので楽しんでもらいたいと思ったのか、僕に「おい、15歳と言えよ」と指示をしてきました。今でこそ1歳くらいごまかして乗るくらい(実際あと数か月で15歳だし)、どうってことない気がしますが、当時の僕にとってみたら、それがたかが1歳だろうが人にウソをつくことに、ものすごい抵抗感があったんです。

並んでいる列が少しずつ短くなってきて、とうとう僕の番になった。そして「何歳ですか?」と聞かれると、僕は「……14歳です」と。ウソがどうしても言えなかった。

係の人の残念そうな顔と、父親のがっかりした顔が悲しくて、僕はその場で泣き出してしまいました。母親だけが、「逆に平気でウソをつく子じゃなくてよかった」とフォローしてくれて、それもまた悲しくて、さらに泣きました。

結局、現地のスタッフはやさしくて、「オーケーオーケー」とバギーに乗せてもらえることになったんですが。

割とどうでもいいエピソードですが、なんだかやたら強く記憶に残っているお話でした。その記憶を思い出すたびに、自分にもずいぶんピュアな時代もあったんだなあと、懐かしい気持ちになります。

つむぱぱ

娘「つむぎちゃん」、息子「なおくん」との日常をInstagramで、ほっこりとしたイラストで表現し、子育て世代を中心に幅広い人気を誇るインスタグラマー。Instagramアカウントのフォロワーは、60万人を超える。

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サンタさんから母に届いたスノードーム

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娘から届いた『ありがとう弁当』

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