優秀すぎる卵なしマヨネーズ! 前世からの因縁を疑う、挟みすぎバインミー
文: 室田万央里

連載「パリの外国ごはん」では三つのシリーズを順番に、2週に1回配信しています。
《パリの外国ごはん》は、フードライター・川村明子さんと料理家・室田万央里さんが、暮らしながらパリを旅する外国料理レストラン探訪記。
《パリの外国ごはん ふたたび。》は川村さんによる、心に残るレストランの再訪記です。
今回はロックダウンが続く現地から、《パリの外国ごはん そのあとで。》特別編をお届けします。自炊の続く今、どうしても食べたいのは……。がぶっとかじりつきたいバインミーのオリジナルレシピを、室田さんが紹介します。
サンドイッチに具を挟む時、常に挟みすぎます。ちょうどいい量のおそらく倍ぐらいは色々挟み、あごを外し気味にしながら食べるのが常です。もうなんていうか、挟む場所があるのなら挟めるだけ挟まねば、という強迫観念に近い何かに突き動かされて必死に挟む。
自分でもなぜだかわかりません。もうわからなすぎて、前世に何かあったのかと真剣に考えたこともあります。
以前この連載で紹介した大好きなベトナムサンドイッチ屋さん、Saigon Sandwichがここ最近ずっと閉まっているのです。ただタイミングが悪かっただけなのか、コロナとロックダウンで閉店してしまったのか。後者だと思いたくないのでいまだ電話もせず、きちんと調べもせず、前を通りかかっては、ああ今日も開いてなかった……とがっかりする日々です。
そんなわけで私の人生にいつもよりベトナムサンドが間違いなく足りていない。あの甘酸っぱいニンジンのピクルスと、茎ごとびろーんと入ったコリアンダー、ピリリと辛い生唐辛子の刺激に、軽い軽いバゲット。お店によってベジタリアンサンドの具は豆腐を焼いたものだったり、野菜を炒めたものだったりが上記の具に加わります。
私はどちらも好き。というわけで、キノコ炒めと揚げ焼きした豆腐、どちらも入れてしまいました、躊躇(ちゅうちょ)なく。なぜならサンドイッチの具挟みすぎの呪いにかかっているから。
もちろん食べる時は口をアングリと開けてかぶりついて欲しいです。一口食べるとそれはもういろんな味が混ざり合って、私はとっても好みですが、キノコか豆腐どちらかの具材に、基本の具(ニンジンマリネと大根マリネ)だけでもおいしいです。
あ、レシピに行く前にもう一つ。パン、のお話なのですが、ベトナムサンドにする時のバゲットはあんまりどっしりしすぎていないものが合う気がします(Saigon Sandwichの回で明子ちゃんもパンの軽さについて触れています)。
ベトナムで食べたサンドイッチのパンは、噛(か)むとパリパリパリッと音がして、香ばしい小麦粉の香りも。中はふんわり軽く、あっという間に1本食べてしまいました。それは、私たちが普段おいしい!と思うバゲットとちょっと違う、なんというか奥ゆかしい、と言いますか、前に出しゃばり過ぎないおいしさなのです。軽めのバゲットを売っているパン屋さんがあれば、そちらを使われたほうがいいかもしれません。
挟みすぎヴィーガンバインミー
材料(軽めの2人分、またはとってもおなかが減っている時の1人分)
バゲット 1本
唐辛子 適量(小口切り)
シーズニングソース 適量
コリアンダー 4、5本(茎のまま洗っておく)
赤玉ねぎ(なければ普通の玉ねぎ) 適量(薄切りにし、さっと水にさらして水気を切る)
具1:ニンジンマリネ(材料とレシピは後述)
具2:大根マリネ(〃)
具3:豆腐ソテー(〃)
具4:キノコソテー(〃)
豆乳マヨネーズ(〃)
具1:ニンジンマリネ(基本の具)
ニンジン 中1本(皮をむき細く千切り)
無農薬レモン 1/4個(搾り汁を使用。季節の柑橘〈かんきつ〉や、米酢小さじ2でも)
砂糖(精製していないもの) 小さじ2
塩 ひとつまみ
全てをボウルに入れ、手で揉(も)むように混ぜて20分ほど置く。
具2:大根マリネ(基本の具)
大根 30g(皮をむいて繊維を断ち切る方向に薄切り。カブでもおいしい)
米酢 小さじ1と1/2
砂糖(精製していないもの) 小さじ1と1/2
全てをボウルに入れ、手で揉むように混ぜて20分ほど置く。
具3:豆腐ソテー
木綿豆腐 1/3丁(約120g。重しをして30分ほど水気を切っておく。代わりに厚揚げ90gでも)
●しょうゆ 小さじ2
●ごま油 小さじ1/2
●砂糖(精製していないもの) 小さじ1/2
●ニンニク 1/2片(すり下ろし)
●コショウ 適量
片栗粉 適量
植物油(香りの少ないもの) 大さじ2(厚揚げを使う場合は大さじ1)
1.バットやお皿などに●印の材料をまぜておく。
2.水切りした豆腐を8ミリくらいに薄切りにして、バットに入れ、途中で一度ひっくり返し15分ほどマリネする。
3.片栗粉を両面にはたく。
4.フライパンに多めの植物油をひき、中火で揚げ焼きにする。フランスでは厚揚げが手に入りにくいので豆腐で作りますが、日本の方は厚揚げがおすすめです。その場合、●印の材料をボウルに混ぜておき(豆腐のようにマリネしない)、90gの厚揚げを豆腐同様8ミリくらいの薄切りにして粉をはたきます。大さじ1の植物油で焼いたところに調味料を混ぜたものを加え、絡めるようにして火を止めます。
具4:キノコソテー
キノコ 70g(シイタケ、マイタケ、しめじなどお好きなものを1種でも合わせても)
長ネギ 1本(斜め切り)
自然塩 ひとつまみ
砂糖(精製していないもの) ひとつまみ
酒 大さじ2
しょうゆ 小さじ1
コショウ 適量
植物油(香りの少ないもの) 大さじ1
1.フライパンに油を入れ火をつけ、熱くなりすぎないうちにキノコとネギを入れ、塩を振り中火で炒める。
2.しんなりとしたら砂糖、酒、しょうゆを加え、ネギがトロリとするまで炒める。ネギが柔らかくなる前に水分がなくなるようなら酒適量をさらに少し足しながら。
3.最後にコショウを振って火を止める。
豆乳マヨネーズ
植物油(味に癖のないもの。オリーブオイルなどは苦みが前面に出ます) 60ml
豆乳(味が付いていないもの) 50ml
マスタード(粒でもそうでなくても) 小さじ1
自然塩 2、3つまみ(少なめに入れて味見してください おいしい塩で作ると味がぐんとアップです)
砂糖(精製していないもの) ひとつまみ
米酢 小さじ2
ハンドミキサーがちょうど入るくらいの瓶で作るとそのまま保存できて便利です。全ての材料を前日または数時間前に瓶に入れてふたをして、シャカシャカ振って混ぜたら冷蔵庫で冷やしておきます。冷蔵庫から出したら、ハンドミキサーを底に当てて、動かさずに30秒ほど攪拌(かくはん)。ゆーっくり上に持ち上げつつ撹拌したら、上下にハンドミキサーを動かして全体を混ぜるようにさらに撹拌。全部で1分ちょいくらいですかね。もったりするまでガ~~~ッとやります。
この豆乳マヨ、どっちかというとお酢の力と温度を借りて固まる感じです。あんまり固まらないなー、と思っても見なかったフリをして、さらに2時間ほど冷蔵庫にしまいこんでください。混ぜた材料を前日から冷蔵庫に準備しておいた場合、もう次の日はガ~ッとやる前からもったりしています。時間が経つと、水分が分離することがありますが、スプーンでかちゃかちゃ混ぜれば大丈夫。1週間以内に食べきってくださいね。
サンドイッチの作り方
1.バゲットを切り、できるなら軽くトーストしておく。
2.豆乳マヨネーズをパンに塗ります。私は自家製豆乳マヨネーズをたっぷりと。手作りすると、本当に普通の市販のマヨネーズより何倍もおいしくて、作り方も簡単、失敗なし。是非一度お試しください。
3.下から、マヨネーズ、キノコソテー、豆腐ソテー、大根マリネ、赤玉ねぎ、ニンジンマリネ、コリアンダーをのせ、もう明らかに飽和状態です。最後に唐辛子の小口切りと、シーズニングソースをぴぴぴぴぴっと。このシーズニングソース、なくても問題ないのですが、あるとがぜん東南アジアのストリートフード感が出ます。
さあ、意を決して大口を開けてどうぞ。
Saigon Sandwich

絶品バインミーに欠かせないバゲットの条件「Saigon Sandwich」
《パリの外国ごはん》