花のない花屋

子ども4人、にぎやかな我が家へ飛び込んできた一大ニュース

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。

新型コロナウイルスで大きな影響を受けた花の生産者を支援している全国農業協同組合連合会(全農)に、その活動の一環として連載にご協力いただいています。

あなたの「物語」も、世界で一つだけの花束にしませんか? エピソードの応募はこちらから。

〈依頼人プロフィール〉
谷口基さん 39歳 男性
韓国・ソウル在住
会社員

     ◇

食品メーカーに勤務している私は、以前から海外勤務を経験したいと思っていました。その夢がかない、販路拡大のため韓国に転勤したのは2019年のこと。

現在我が家には、4人の子どもたちがいます。しっかり者だけどまだ甘えたい7歳の長女、やんちゃ盛りでキックとパンチを覚えた5歳の長男、一度泣き出したらなかなか止まらない3歳の次女、食いしん坊で何でも口に入れてしまう1歳の次男……。

そんなにぎやかな6人家族が韓国でそろったのは2020年1月のこと。一番の不安の種は、やはり子育てでした。日本にいたときも、私や妻の両親にしばしば来てもらい、子どもたちの面倒や家事を手伝ってもらうことで何とか家のなかが回っている状態でした。それが海外勤務となれば、今までのように気軽に来てもらうことができません。

妻は、さまざまな不安を抱えていたと思います。私が会社に行っている間、子どもたちの面倒をひとりで見ることができるのか、保育園や幼稚園はどうするのか。さらに言葉もわからない異国の地で、生活だってちゃんとできるのか……。とくにこの時期は、韓国で日本製品の不買運動が起こるなど、日韓関係に嵐が吹き荒れていた時期。不安はさらに膨らんでいたはずです。

でも妻はそんな不安を子どもたちに見せることなく、韓国での生活に果敢に飛び込んできてくれました。高校時代の妻はチアリーダーでみんなを励まし、その後は患者さんたちを明るく元気づける看護師だったことも。そんな頼りがいのある妻のキャラクターが、いつも家族を明るく照らしてくれました。

そうして無我夢中で生活するようになって1年。遊びたい盛りの子どもたちに囲まれ、いつも家の中は動物園状態、いや、プロレスのリング状態です。そんな混とんのなかでも、最近は、お手伝いをしたら自分の好きなシールを1枚貼れる“ゲーム”を始め、上の3人の子どもたちは進んで手伝いをするようになりました。

最初はシール目当てでも、親に喜んでほしい、褒められたいという気持ちが芽生えてきていると感じます。そんな子どもたちの成長を見るにつけ、妻も私も、親となった幸せをつくづく感じる毎日です。

父親の私はといえば、土日の食事作りと、子どもたちと遊ぶ係を担当。気がつけば我が“チーム”は、この異国の地でしっかり成長を遂げていました。

そうして韓国での生活が落ち着き始めた昨年、我が家に大変なニュースが飛び込んできました。なんと今年の5月に5人目の子どもが生まれるのです。

「5人の子どもの父親になる」。2012年の結婚当時、私が40歳までの目標として描いていたことのひとつでした。3人きょうだいに育った私ですが、さらにきょうだいが多いにぎやかな家庭に憧れていたのです。そして私は今年40歳。まさか実現できるとは思いませんでした。

ただし、今回の出産は異例なことばかり。まず、いつも産後、家に泊まり込んでくれた両家の両親の手を借りることができません。また妻にとっては、それでなくても心細い海外での初めての出産。なのに、これまで4人の子どもたちのときには欠かさなかった私の立ち会いも、コロナのためにかなわなくなりました。

出産時の子どもたちのことやお金のこと、その後の子育てのことなど、心配事は尽きないと思います。それでも5人目を授かったことを喜んでくれた妻に「ありがとう」という感謝の言葉を伝えたいです。

これから産まれてくる新しい家族を家族全員で明るく迎えるという誓いを込めて、妻に花束を贈っていただけませんでしょうか? 韓国へは難しいと思うので、妻の実家へ贈っていただけるとうれしいです。

花のない花屋

≪花材≫ダリア、ラナンキュラス、チューリップ、サンダーソニア、フリージア、ヒペリカム、カトレア、アジサイ、キルタンサス、エピデンドラム、コアニー、カーネーション、エリカ、アネモネ、グロリオサ

花束を作った東さんのコメント

様々な花を使って、5人目を迎えるにぎやかなご家庭をイメージしました。5月に家族が増えるとのことなので、テーマは“春のカラフル”。レモンイエローのダリア、赤・ピンク・オレンジなど色とりどりのチューリップ、ラン(エピデンドラム)もオレンジやピンク、さらにフリージアなど。両脇には1つずつ、アクセントに白いアネモネを配置しました。こちらも春の花です。足元にも実ものでピンクのヒペリカム、青色のアジサイを詰め込みました。
にぎやかな家庭をイメージすると同時に、お子様たちにも目で見て触って、花を楽しんでもらえるように、チクチクした植物は入れないようにまとめました。
言葉も分からない外国で子育てというだけで大変なのに、さらにコロナ禍での出産……。奥様には頭が下がります。このにぎやかなお花を見て、テーマパークに行ったかのように楽しんでもらえれば。そして元気なお子さんが生まれ、さらに楽しいご家庭になることを願っています。

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(文・福光恵 写真・椎木俊介)

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「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

子ども4人、にぎやかな我が家へ飛び込んできた一大ニュース

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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