東京の台所2

〈特別編〉取材を機に、自分で買って本当に良かった台所道具10

〈特別編〉取材を機に、自分で買って本当に良かった台所道具10

(左上から時計回りに)持ち手付きストッカー(野田琺瑯〈ほうろう〉)、レイエ計量みそマドラー(オークス)とクッキングスプーン(フライングソーサー)、パック&レンジ(iwaki)、ストウブ・ココット・ラウンド(ツヴィリング)※すべて大平私物=本城直季撮影

 台所取材の楽しみのひとつに、便利グッズやこだわりの道具との出会いがある。
 女性誌などの仕事で目にしていた道具の、生活に根ざした使い勝手や使用感の本当のところを聞けるのは興味深い。
 また、国内外の旅先で買い求めた珍しくて便利な道具は、眺めるだけでも楽しい。

 8年間、海外編などを含め250回余の取材で、思わず感化されて自分でも買ってしまった、使えば使うほど便利さを実感している道具がたくさんある。今回はその一端をご紹介したい。

1.なぜ早く買わなかったか。やっぱり最強の鍋

〈特別編〉取材を機に、自分で買って本当に良かった台所道具10

■ストウブ(ツヴィリング)

 あまりにたくさんの台所で「最も気に入っている鍋」と聞くので、あまのじゃくな私はむしろ背を向けていたストウブの鍋。重い、高い、日本では見慣れない楕円(だえん)のオーバル型も。敬遠する理由はいくつもある。

 しかし、訪ねる先々でみなが口をそろえる。「煮物が上手にできる」「お米もこれで炊いています」「母に持たされて以来、便利すぎてほかの鍋が買えない」。それらのまなざしは愛(いと)しい子を見つめるよう。

 で、ル・クルーゼにひびが入ったのを機にえいやっと購入してみた。

 かぼちゃは煮崩れせずに中まで火が通り、ハヤシライスはトロトロに。重い蓋(ふた)の実力に脱帽する日々を送っている。

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2.「可視化は保存容器の肝」と住人は語った

〈特別編〉取材を機に、自分で買って本当に良かった台所道具10

■パック&レンジ(iwaki)

 「〈158〉酒と、3週間前に逝った夫と、彼女の話」の住人は3児の母。オーケストラ団員のため、夜はコンサートで不在に。「作り置きを中身がよく見えない半透明の保存容器に入れると、結局家族の誰もわからない。可視化できる透明のガラスは便利ですよ」と語った。半透明のものは処分し、すべてiwakiのパック&レンジという耐熱保存容器に替えたそうだ。

 私もまねしたら、作り置き料理を伝える家族への書き置きやLINEをする手間がなくなった。オーブン加熱ができ、スタッキングも可能。先日も一つ買い足したほど。

3.たくさんすくえて、炒める、混ぜるにも活躍

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■クッキングスプーン(フライングソーサー)

 使い勝手や手のおさまりかた、機能がちょうどいいお玉やレードル、ターナーとは意外に少ないもの。取材で知って愛用しているのが、厨房(ちゅうぼう)機器・台所用品を扱うフライングソーサーのオリジナル。汁気の多い煮物をやさしくすくって盛り付けるなど、とりわけ和食に重宝する。

4.くるっとすくえる快感

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■レイエ計量みそマドラー(オークス)

 「大」が大さじ2、「小」が大さじ1。味の濃さをマドラーでつかめるところがいい。みそにさしてくるっとすくって、鍋の中で溶かす。ひとつの道具で一連の動作がすむ(写真:計量カップの左横)。

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5.残った汁物の悩みを解決

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■持ち手付きストッカー(野田琺瑯)

 みそ汁がひとり分残った、シチューが明日ふたりで食べたら終わるという微妙な量のとき、鍋ごと冷蔵庫に入れるのはじゃまくさい。ストッカーに入れると、場所を取らず、翌日そのまま火にかけて食べることができる(蓋は熱に弱いので外す)。中身が見えない保存容器は使わない主義だが、ストッカーは「汁物」と決まっているので家族の誰もがわかる。水だしポットとしても使える。

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6.パリで探しまくった。今は日本で

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■油はねよけネット

 フライパンで揚げ物や炒めものをするときに、これで蓋をすると油のとびちりを防ぐことができる。2014年の『番外編 トリコロールの台所』でいたく感動し、取材の帰りにパリ市内を探し回って買った。最近、女性誌の取材先でもたまにみかける。当時の日本にはないと思い込んでいたがそうでもないのだろうか。揚げ物後の掃除が楽で助かっている。

7.うすはり風100円ショップのグラス

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■グラス(ダイソー)

 オーストリアのリーデルのワイングラスや、松徳硝子(ガラス)のうすはりシリーズは口当たりがよく憧れるが、安くない。また売り場が限られる。

 ある日、取材で出された麦茶のグラスが華奢(きゃしゃ)で美しいフォルムだったのでどこのものか尋ねたら「100円ショップです」。百均も侮れないなとたいへん驚いた。我が家でも来客時によく働いてくれる。

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8.サラダチキンも作れてしまうのだ

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■ヨーグルトメーカー

 いまや発酵フードメーカーとも言うらしい。ヨーグルトはもちろん、塩麹(こうじ)、醬油(しょうゆ)麹、半熟卵、低温でサラダチキンも作れてしまう。我が家のそれは細長い角柱タイプ。場所を取らず、デザインもおしゃれな商品が年々増えている。買って最も気に入っている調理家電かもしれない。

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9.じつはいちばん使うサイズと形

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■ジップロックお手軽バッグssサイズ(旭化成プロダクツ)

 漬かりすぎないよう早めにひきあげたぬか漬けや、使いきれなかったニンジンやきゅうり1、2本など、長い野菜の保存に活用。四角より、こぶりな筆箱サイズの長方形バッグは、意外と出番が多い。取材先の住人はサンドイッチをいれていた。

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10.手でなでるとどんどん美しくなる茶筒

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■茶筒(開化堂)

 明治8年創業の京都の茶筒製造専門店。今も手作業で作っている。寸分のすきまもなくぴたりと蓋がおさまり、使うたびに手で銅の本体をなでると徐々に艶(つや)が増す。水滴で錆(さび)ができたので、一度磨き直しに出したらピカピカになって戻ってきた。長屋暮らしの料理好きの男性が大事そうに使っていたのが忘れられない。

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おまけ

取材を機にリピーターになった〈我が家の切らしたら困るもの〉

〈特別編〉取材を機に、自分で買って本当に良かった台所道具10
マキシマム(中村食肉)。「〈197〉人生を変えた魔法のスパイス」で1本いただいて以来、何本買い足したことか。ナツメグ、パプリカ、クミン、ローレルの全部入り。肉はもちろん、スープやチャーハンでひと味たりないときに頼る。宮崎県民なら知らぬ人はいないソウルスパイス。大手スーパーやカルディファームで買えるようになった。

(文中4、5、9の写真は本城直季、そのほかは大平一枝撮影)
 

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PROFILE

  • 大平一枝

    文筆家。長野県生まれ。失われつつあるが失ってはいけないもの・こと・価値観をテーマに各誌紙に執筆。著書に『東京の台所』『男と女の台所』『もう、ビニール傘は買わない。』(平凡社)、『届かなかった手紙』(角川書店)、『あの人の宝物』『紙さまの話』(誠文堂新光社)、 『日々の散歩で見つかる山もりのしあわせ』(交通新聞社)、『昭和式もめない会話帖』(中央公論新社)、『新米母は各駅停車でだんだん本物の母になっていく』(大和書房)など多数。HP「暮らしの柄」。
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    http://www.kurashi-no-gara.com/

  • 本城直季(写真)

    1978年東京生まれ。現実の都市風景をミニチュアのように撮る独特の撮影手法で知られる。写真集『small planet』(リトルモア)で第32回木村伊兵衛写真賞を受賞。ほかに『Treasure Box』(講談社)など。

    公式サイト
    http://honjonaoki.com

    スタジオ兼共同写真事務所「4×5 SHI NO GO」
    https://www.shinogo45.com

〈225〉家族が減ったわたしの台所

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