猫が教える、人間のトリセツ

猫には正義の味方がいる。byふく&はな(飼い主・たなかともみさん)

人間を思うがままに操る、飼い猫たちの実例集「猫が教える、人間のトリセツ」。
月に1回、「猫と暮らすニューヨーク」の筆者、仁平綾さんと、イラストレーターのPeter Arkle(ピーター・アークル)さんでお届けします。

     ◇

「猫には臭いがない。そんな猫の匂いが好き」。これは以前、とある猫の飼い主が口にした名言。そうなんです、猫には動物特有の臭いの代わりに、お日様の下で干された布団のような、なんとも形容しがたい芳香がある。今回登場する飼い主のたなかともみさんも、「猫のちょっとほこりっぽいような、香ばしいような匂いが最高」と話す猫好き。ちなみにたなかさんは、猫に対するちょっと特殊な能力(?)を持っているんです。


「猫を拾ったり、野良の子猫に遭遇したりすることが多くて、しょっちゅう里親探しをしています。子どもの頃からそうなんです。猫を拾うって“あるある”なのかと思っていたら、『めったにないよ!』と最近友人から言われて……。はじめて珍しいことなんだと知りました」

そう話すのは、エディターのたなかともみさん。捨て猫&野良猫とたびたび出くわす人生、その始まりは小学生のとき。

「塾の下で段ボールに入った子猫を拾ったり、家の近所の駐車場で小さな猫に出会ったり。ちなみにその猫は、子猫だと思って病院に連れて行ったら、すごく小柄なおばあちゃん猫でした。歳をとってから捨てられてしまったようで、私のいとこが引き取って、最期までかわいがってくれました」

猫には正義の味方がいる。byふく&はな(飼い主・たなかともみさん)

たなかさんが保護した猫たち。中には友人を介して、某有名料理家さんにもらわれていったというシンデレラストーリーをもつ子猫も

最近は特に猫のレスキュー率が増し、ここ3年で10匹以上は保護しているのだとか。

「以前事務所を借りていたところでは、向かいの住居で多頭飼育崩壊が起きていて、そこから逃げ出してきた猫を保護したことも……」と、なかなかまれなケースも体験。

もちろん保護だけで終わらず、いつも里親探しまできっちり任務遂行するのが、たなかさん。お世話になっている保護猫ボランティアさんの協力を得たり、猫を飼っている友人たちのネットワークを活用したり、「みんな猫好きだけに、親身になって里親を探してくれて感謝しかありません。すごい速さで、友だちの友だちの友だちまで聞いてくれちゃう。無事に引き取られ、里親さんのもとでかわいがられて育つ猫たちの様子をインスタグラムで見ると、幸せな気持ちになります」。

猫には正義の味方がいる。byふく&はな(飼い主・たなかともみさん)

たなかさんが鳴き声に気づいたことで、塀に挟まれたところを無事救助された子猫、ふく

高性能の猫センサーを持っているに違いない、たなかさん。まわりからも「猫を引きよせる能力がある」とよく言われるらしいけれど、「外で子猫の鳴き声がすると、普通なら『かわいい~』ってなるところが、『また子猫がいる! なんとかしなきゃ!』って心配で、心配で。夜も眠れなくなってしまうんです」って、もうこれは正義の味方じゃないですか! 

きっと、猫界も公認の猫の庇護者(ひごしゃ)。その素質はどうやら遺伝のようで、たなかさんのお母さんも昔からたびたび猫を拾ったり、保護したりしてきたのだとか。

猫には正義の味方がいる。byふく&はな(飼い主・たなかともみさん)

救助されたあと、たなかさんの実家に引き取られた、オス猫のふく。か、かわいすぎます……

そんな田中家(たなかさんの実家)で、19年間飼われていた愛猫2匹が、1匹、翌年にまた1匹と亡くなってしまった4日後のこと。

たなかさんの猫センサーがにわかに発動。実家とは離れて暮らすたなかさんの住まい近くで、隣家との塀の隙間に挟まったまま、動けなくなって鳴いている子猫を発見!

「警察のかたに塀を壊して救出してもらいました。このままだと保健所に連れて行かないといけないので、誰か保護できませんかと言われまして。我が家はペット不可だったので、実家で引き取ることに。4日前に猫を亡くしたばかりで、私の親も運命的なものを感じたらしく、今はその猫をすごくかわいがっています」

猫には正義の味方がいる。byふく&はな(飼い主・たなかともみさん)

田中家のかつての愛猫、オス猫のにこ(左)と、メス猫のくろ(右)。「にこはとても穏やかな子で、家族の中でも私にだけ懐いていたので、特別な思い入れがあります」

塀の隙間という珍しい場所から救出されたのは、サバ白柄のオス猫、ふく。

「食欲旺盛で、ぷくぷくしていた」ことから、福が来るようにとの思いを込め名付けたものの、成長するに従い、わがまま猫に。隙あらば人間の食べものを盗み食いしようとし、機嫌が悪くなれば嚙(か)みつき、動物病院では鳴き叫んで、獣医さんも困惑するほど……。

あまりに社会性がないふくを心配したたなかさん、教育係としてメスの子猫を譲り受けることに。はなと命名したメスの白黒猫と、ふくの2匹。距離を保ちつつ、田中家でなんとか仲良く暮らしています。

猫には正義の味方がいる。byふく&はな(飼い主・たなかともみさん)

シンクロしているふく(手前)とはな(奥)。「はなは、マイペースで甘え上手。人を嚙(か)んだり、引っ搔(か)いたりすることはなく、ふくにいじめられても高いところへ避難してやり過ごします」

「猫は耳の先からしっぽの先、まあるい手まで、すべてがかわいい。なぜ、猫はここまで人間がかわいいと感じる姿になったのだろうと、本当に不思議で仕方がないです。特に今は、一歩外に出ると不安なことばかりですが、猫が無防備に寝ている姿を見ると、すごくほっとします。あったかいお風呂に入っているみたいに、こわばった気持ちが緩むんです」

猫をこよなく愛する、たなかさん、現在の住まいのまわりには、ふくの家族が野良として暮らしているため、引き続き面倒を見ているほか、近いうちに野良猫に避妊手術をする計画も立てているとか。さすが、猫の庇護者。頭が下がります。

「猫に操られ続けている人生。でも私には、猫を幸せにするという使命みたいなものがあるのかなーと。ちょっと大げさですけど、そんなふうに思っています」

猫には正義の味方がいる。byふく&はな(飼い主・たなかともみさん)

すっかり巨大化、もとい成長した、ふく。たなかさんは実家に帰るたびに、おもちゃやおやつを献上、ふくとはなのご機嫌とりに余念がないそう

猫には正義の味方がいる。byふく&はな(飼い主・たなかともみさん)

子猫の頃の、はな。「ふくとはなが、夜中にトムとジェリーみたいな追いかけっこを繰り広げ、寝ている私の顔面を思いっきり踏みつけていっても許してしまいます」

猫には正義の味方がいる。byふく&はな(飼い主・たなかともみさん)

最近、実家にペットカメラを設置したせいで、ペットカメラ依存症になりつつあるというたなかさん。「みんながクラブハウスにはまっているなか、1人ペットカメラばかり見ている私です……」

猫には正義の味方がいる。byふく&はな(飼い主・たなかともみさん)

子猫のふくとはなをご堪能ください。わがまま猫のふくは、「輪廻(りんね)転生があるとしたら、絶対に“猫生”1回目」とたなかさん。理不尽に嚙まれても「1回目の子だから仕方がない……」と思うようにしているそう

※次回は、3月下旬の配信予定です。


猫には正義の味方がいる。byふく&はな(飼い主・たなかともみさん)

たなかともみ
雑誌や書籍の編集を経て、映像制作、インタラクティブ展示などのビジュアル表現を中心に活動するクリエーティブオフィス、HOEDOWNに所属。撮影コーディネートや美術まわりのディレクションを務めるほか、最近はプロダクト開発やブランディングにも関わる。開発に携わった精進料理 醍醐監修の「果実とスパイス香る ヴィーガンカレー」が、TOYOKEにて発売中。

https://hodwn.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/tana818/

 

猫には正義の味方がいる。byふく&はな(飼い主・たなかともみさん)

 

>>「猫と暮らすニューヨーク」まとめ読みはこちら

PROFILE

  • 仁平綾

    編集者・ライター
    ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、『ニューヨークおいしいものだけ! 朝・昼・夜 食べ歩きガイド』(筑摩書房)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
    http://www.bestofbrooklynbook.com

  • Peter Arkle(イラスト)

    ピーター・アークル スコットランド出身、ニューヨーク在住のイラストレーター。The New Yorker、New York Magazine、The New York Times、Newsweek、Timeなど雑誌や書籍、広告で幅広く活躍。著書に『All Black Cats Are Not Alike』(http://allblackcats.com/)がある。

『猫と暮らすニューヨーク』が本になりました!!

ニューヨークの猫は、なぜしあわせなの? 75匹の猫と飼い主のリアルな暮らし
仁平 綾(著)朝日新聞出版
1760円(税込み)

猫と暮らすニューヨーク』として連載していたものから、
“猫の飼いかた”の部分に注目し、さまざまなアイデアや実践をセレクト、再編集した一冊。
個性豊かで愛らしい、NYの猫たちの写真が満載で、猫好き必読の書。

人間みたいにふるまう。 byのび(飼い主・若山曜子さん)

一覧へ戻る

RECOMMENDおすすめの記事