篠原ともえ アイデアのありか

「耳をすまして空を聴く」 想像を導いてくれるおまじない

服を作るのが子供の頃から好きだった私は、いつかデザイナーになりたい!と願いながら、16歳で歌手デビューしたのち、夢中でタレントや俳優業など表現者としてのお仕事に専念してきました。そんな私が40歳を目前に、服飾学校に通い直し、デザイン会社を夫と立ち上げ、大きなキャリアチェンジをしようとは、想像もしていませんでした。

そんなまさに転機となった昨年、一緒にお仕事しませんかと一通のメールが届きました。お相手は、数々のCMを手掛けていらっしゃるクリエーティブディレクターの太田麻衣子さん。お話を伺うと、朝日新聞に掲載された私のインタビュー記事を見てご連絡をくださったと。「社会のみんなとつながりながら、10年後も手を動かし、いつまでも“創り続ける人”でありたい」。私の発したその言葉が、偶然にも太田さんが取り組もうとされていた、ある化粧品の広告イメージにぴたりとはまり、お声がけいただいたのでした。

「耳をすまして空を聴く」 想像を導いてくれるおまじない

キャッチコピー「100年、美しい人。」

これまで広告のお仕事は出演するのみだったのですが、インタビュー記事の後押しもあり、出演と同時に商品パッケージのデザインのお話もいただきました。夫が広告に携わるアートディレクターということもあり、今までとは違った角度から、広告という作品がどのようにつくられていくのか見てみたいという興味も湧いていたので、お引き受けのお返事をするまでそう時間はかかりませんでした。

広告のディレクションは、「目の前の課題を客観的に捉え、最も伝えるべきことをアートやデザインの視点で感覚的に伝達すること」と聞いたことがあります。伝えるメッセージとともに世界観を決め、それを具現化するためのキャスティング、そして広告としてビジュアライズするカメラマンやデザイナーといったスタッフもディレクションし、ひとつの物語を作り上げてゆく。私もいちクリエーターとしてその世界へ招き入れていただいたのは本当に光栄でした。

「耳をすまして空を聴く」 想像を導いてくれるおまじない

撮影:濱田英明さん

太田さんからいただいた今回の広告イメージは、飾らない日常の私。いつもの生活を切り取ったようなシーンを撮影したいとのご提案でした。絵を描き、服を作り、手を動かしながら、時には気分転換にオフィスの屋上でひと休み。そんな半分ドキュメントのように、普段の私を、写真と映像でとらえられればとのことでした。

「耳をすまして空を聴く」 想像を導いてくれるおまじない

撮影のための衣装製作(都ドレスにて)

今回私は出演やパッケージのデザインだけでなく、衣装デザイナーとしても参加させていただきたいと、着用する衣装は自作のもので臨みました。私らしさを保ちながら、物語に溶け込む衣装は……と、時間をかけ試作を重ねながら、納得のいく作品を完成させました。けれども、併せてご依頼いただいた商品パッケージのデザインでは悩むことが多く、最初のほうは手が止まることもありました……。

「耳をすまして空を聴く」 想像を導いてくれるおまじない

オフィスにてパッケージデザインのイラスト制作

太田さんはみなさんも一度は聞いたことのあるキャッチコピーをこれまで数多く生み出されてきた言葉のスペシャリスト。私が行き詰まってしまった時に、印象的だった出来事があるのですが、モチーフに悩んでいると相談すると「じゃあ……『耳をすまして空を聴く』をテーマに描いてみて」と私に小さなフレーズをくださいました。

「耳をすまして空を聴く」 想像を導いてくれるおまじない

クリエーティブディレクターの太田麻衣子さんと

最初は不思議な言葉だなぁと思ったのですが、ぽんっと出してくださったそのキーワードを思いながら描いてゆくと、私の想像はのびやかになり、イメージがどんどん絵になってゆきました。それはまるで言葉と絵のセッションのようでとても貴重な体験でした。

そして、最終的に選んだモチーフは、羽ばたく鳥たちと大きな木。いま思えば、あの不思議なフレーズは私の発想を広げ、より自由な表現を引き出すためのおまじないだったのかもしれません。

「耳をすまして空を聴く」 想像を導いてくれるおまじない

動画の撮影では太田さんの詩を朗読

そんな心地のよいクリエーティブな掛け合いがあり、いざ撮影を迎えた日、太田さんは「ホワイトペーパージャーニー」という自作の詩をご用意くださいました。それは私の絵から創造し、つむいでくださった言葉たち。完成した絵をかたわらに、その詩を朗読させていただきました。このようなかたちでのコラボレーションは新鮮で、表現は違ってもそれらが合わさる時、さらに物語は彩られ、豊かになることを実感しました。

「耳をすまして空を聴く」 想像を導いてくれるおまじない

阪急梅田駅の電飾看板

振り返ると、今回お話をいただいたきっかけも、私がインタビューで話した「言葉」から。太田さんとのセッションがそこから始まっていたと思うと、おもしろいですよね。ものづくりのヒントはいろんなところに隠れているとあらためて気づいたと同時に、私もさらにアンテナを張って日々過ごそうと思いました。このクリエーティブな掛け合いの結晶は、街中やオンラインでご覧いただけます。みなさんのアンテナに引っかかってくれるとうれしいな。

明色化粧品「Moist Labo」篠原ともえ特設サイト

PROFILE

篠原ともえ

デザイナー/アーティスト
1995年歌手デビュー。文化女子大学(現・文化学園大学)短期大学部服装学科デザイン専攻卒。映画、ドラマ、舞台など歌手・俳優活動を経て、現在はイラストレーター、テキスタイルデザイナーなどさまざまな企業ブランドとコラボレーションするほか、衣装デザイナーとしても松任谷由実コンサートツアー、嵐ドームコンサートなどアーティストのステージ・ジャケット衣装を多数手がける。2020年、アートディレクター・池澤樹と共にクリエーティブスタジオ「STUDEO」を設立。

風呂敷に藍色の星空。手描きの“かすれ”で、伝統工芸品の風合いを

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