野村友里×UA 暮らしの音

野村友里さん「さようならとこんにちはの季節に、“ともだち”についてふと思う」

「eatrip」を主宰する料理人の野村友里さんと、現在カナダの島で暮らす歌手UAさんの往復書簡「暮らしの音」。カナダのオオカミ「Takaya」の死のドキュメンタリー映画から、想像力が足りなくなっている最近について考えをめぐらせて、またもやすこししんみりしてしまったUAさんへの、野村さんのお返事は――?

野村友里さん「さようならとこんにちはの季節に、“ともだち”についてふと思う」

新芽の季節。「Cocco farm」のルバーブ

>>UAさんの手紙から続く

うーこ

春がきたね。

日本の春は、世界を見渡してもやっぱり独特な空気に包まれる。
東京の街にいても、こんな所にもあんな所にもと桜がいっせいに咲きだすと、意外にも桜の木の多さに毎度びっくりする。

そして人がいっせいに同じ心持ちになって “桜” のつぼみから開花、そしてその最後の最後、散り際の行く末までの風情を、全てはかなくも美しいと想(おも)っているように感じる。

お正月とも違う桜の時期は、一年の節目にあたるからなのか、またその裏に焼きつく景色だからなのか、なぜだか過去の記憶も合わさってよみがえる人が多いように思う。
そう情緒的になる。

とにもかくにも、唯一無二の力を桜は持っている。
そんな桜も散り、今はまさに新緑の季節。

カナダの春はどうかしら?

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とっても久々に会ったけど話せるっていいね。ある日の光景。小島聖ちゃんと市川実和子ちゃん

“春”
うーこは何を連想する?

私はね、“食”以外でふと頭に浮かんだのは、“ともだち”。
友達という言葉だった。
この年になってまでまだ、友達とは何かということを時々改めて考えたりする。

“ともだち”

なんかあいまいで不思議な距離感で、最初に覚える単語の一つぐらいな言葉なのに、
意味合いはそう簡単でもない。

野村友里さん「さようならとこんにちはの季節に、“ともだち”についてふと思う」

「the little shop of flowers」のいきちゃん。20年仕事も一緒、いろいろ一緒。友達、同志、仲間、家族

最近は申告をして承認を得てからの友達カテゴリーもあるけれど。
仲間、先輩、後輩、同級生、知り合い、仲がよい、好きな人、慕っている人、尊敬している人、親友、恋人。
いろんな表現があるとしても、“ともだち”はやっぱり“ともだち”としか言えない関係が確かにある。

この間おなじ年くらいの男性が、ふともらした。

「“ともだち”って言われたら誰がいるかな〜と思ってね、あれ自分もしかしたら友達いないかも!?と思ったけど、次に⚪️⚪️くんの顔が浮かんできたんだ。そしたら、あー自分は⚪️⚪️くんのことをとっても大事な友達だと思っているんだな〜、と知ったんだ。」

って、告白みたいにつぶやいた。
そう、私もよくそう思う。

野村友里さん「さようならとこんにちはの季節に、“ともだち”についてふと思う」

友達の子供はやっぱり友達なのか? とまくんは2年生。今のところ「友達」といって私を友達に紹介してくれる^^

歩道橋を歩いたりしていて、フト“うーこ元気かな?”とか頭をよぎる。
笑顔だといいな〜とか思いながら。
そんな風に想える相手がいるだなんて自分よかったじゃない、とも思う。

相手の承認より自分が想えるかが大事なのかな、と。
それに“友情”となると、もっと無償性がでてくるのかな。
思わず意味を調べてみたら、
「共感や信頼の情を抱き合って互いを肯定し合う人間関係、もしくはそういった感情のこと。友達同士の間に生まれる情愛。しかし、それはすべての友達にあるものではなく、自己犠牲ができるほどの友達関係の中に存在」と、でてきた。

野村友里さん「さようならとこんにちはの季節に、“ともだち”についてふと思う」

猫。人間の言葉が話せたらどんなにいいか……といつも思うが、ほぼ意思疎通はとれている気がする

野村友里さん「さようならとこんにちはの季節に、“ともだち”についてふと思う」

私の好きな、友達のような親子。鎌倉のパン屋さん「パラダイスアレイ」

数年前に『コクーン』という舞台をみた。
友人が関わっているということで初日の開演直前、緊迫した通し稽古をみたのだけど、ふいをつかれて心の深いところの琴線に触れてしまったのか涙腺が完全に崩壊してしまい、最後はあふれる涙を必死にこらえようと天井を見上げる始末だった。

ひめゆりの塔をテーマにした物語で、若いたった10代そこそこの女の子たちが極限の過酷な状態の中、生死の選択をせまられながらも健気(けなげ)に生き、気丈に人の死に直面し、そして生きようともする。
ふとそんな時、母の顔が浮かんだ。
もし私がこのような状況下になったとしたら、母を一番に頼って信頼し、友達となって友情をむすんでいただろうな、と。

舞台上の女子と同じ年頃だった頃の私は反抗期まっただ中で、常に母親に “正しいことをいう母としてでなくて、友達のような関係がいいのに”と心の中で叫び、いつも何かとつっかかっていた。

やれやれ。

野村友里さん「さようならとこんにちはの季節に、“ともだち”についてふと思う」

母と私

”ともだち”

そういうことで、
きっとこの春、このさようならとこんにちはの季節に、
改めてふと思った単語だった。

日本がずっとはるか昔から育んできた、人が桜を大事にする、友達のような関係性、散り際まで美しいと感じる気持ちを、人と動物、国と国の間がらにまで広げられたらいいのかな、なんてふと思ったりした。
まっ、桜がどんな時も必ず咲き誇りたくさんの感情を揺さぶる、その無償のエネルギーに、人は魅せられているのだけど。

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動物と人間の関係。姪(めい)と知人の犬

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友情育む。祖父の100歳の椅子

野村友里さん「さようならとこんにちはの季節に、“ともだち”についてふと思う」

木彫りの横顔。これは母方の祖父のもの。よく話しかけてます

さてさて。
人以外にも、私は身の回りのものもなるべく友情がもてるものに整理していきたいと思って片付けをしております。

もうすぐあえるね!

友里

    ◇

■「eatrip」の野村友里さんと、「the little shop of flowers」の壱岐ゆかりさん。東京・原宿の同じ敷地で隣り合わせて店を営むお二人が企画する展覧会「Life is beautiful :衣・食植・住」が開催されます。

「Life is beautiful :衣・食植・住」
会期:5月13日(木)~31日(月)
会場:GYRE GALLERY / GYRE 3階 東京都渋谷区神宮前5-10-1

■往復書簡「暮らしの音」へのご感想をお寄せください! UAさんと野村友里さんへの質問やメッセージなども、こちらの応募フォームから受け付けています。

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PROFILE

  • UA

    1972年大阪生まれ。母方の故郷は奄美大島。1995年デビュー。1996年発表のシングル『情熱』が大ヒット。以降、浅井健一(元ブランキー・ジェット・シティ)らと組んだ「AJICO」、ジャズサックスプレーヤー菊地成孔とのコラボ、映画主演、NHK教育テレビでの歌うお姉さんなど、活動は多岐にわたる。2016年、7年ぶりとなるオリジナルアルバム『JaPo(ヤポ)』をリリース。ライブ、フェス、楽曲制作と精力的に活動している。また、2005年より都会を離れ、田舎で農的暮らしを実践中。現在はカナダに居住。4人の母でもある。α-STATION(FM京都)の番組「FLAG RADIO」にレギュラー出演中。2020年6月21日、デビュー25年を迎えた。

  • 野村友里

    料理人、「eatrip」を主宰。おもてなし教室を開く、母・野村紘子さんの影響を受けて料理の道に。主な活動に、レセプションパーティーなどのケータリングフードの演出、料理教室、雑誌の連載、ラジオ番組など。2009年、初の監督作品『eatrip』を公開。11年、「シェ・パニース」のシェフたちとともに、参加型の食とアートのイベント「OPEN harvest」を開催。その経験を経て日本のシェフたちとともに「nomadic kitchen」プロジェクトをスタート。12年、東京・原宿に「restaurant eatrip」をオープン、19年、表参道・GYREに「eatrip soil」をオープン。著書に『eatlip gift』『春夏秋冬 おいしい手帖』(マガジンハウス)、『Tokyo Eatrip』(講談社)、共著に『TASTY OF LIFE』(青幻舎)がある。

UAさん「美しき孤高のオオカミTakayaの死から思う、想像力の足りなさ」

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