上間常正 @モード

プリーツの魅力 解放感と固定された折り目

  • 上間常正
  • 2016年11月25日
  • セリーヌ(2017年春夏パリ・コレクションより)

  • エルメス(2017年春夏パリ・コレクションより)

  • イッセイミヤケ(2017年春夏パリ・コレクションより)

  • エンスウィートの2017年向けプリーツスカート

  • ハオリ・ドゥ・ティティのプリーツドレス

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 ファッションの色んな場面で、プリーツを目にすることが多くなっている。国内の大手アパレル各社は今年秋冬もの、また来年春夏向けにはプリーツに特化した熟年向けのラインを発表している。しかし別にこの世代向けに限ったわけではなく、最新のパリ・コレクションなどでもプリーツが増えている。なぜ、いまプリーツなのか?

 プリーツは「折り目」「襞(ひだ)」という意味で、服の歴史の中では昔からあった。布の一方にひだをいくつも寄せて縫えば簡単にできるからで、服の装飾の技法として使われてきた。しかしファッションというレベルでいえば、その代表は20世紀前半のフォルチュニーと現代の三宅一生のプリーツだろう。

 ベネチアを拠点に服作りをしたフォルチュニーは、プリーツ加工と染色の技術をオートクチュールの水準にまで高め、細かなさざ波が体に沿って軽やかに流れるような美しいドレスを作った。そしてその服は実際にもゆるやかで軽く、それまでのコルセットで締め付けた不自然な形の服から女性の体を解放する服だった。

 三宅一生は、合成繊維で複雑な折り目を保存するハイテク技術と優れたデザイン性によって新しい衣服としてのプリーツを作り出した。その「プリーツ・プリーズ」は、折り目を重ねることで新たな空間を創り出し、さらに軽やかになった。持ち歩いてもしわにならず、洗濯してもすぐ乾き折り目も崩れなくなった。

 軽くて伸縮性もあって動きやすく、着る人の体型を選ばない。そして上品で美しい。それがプリーツの特徴だ。来年春夏のパリ・コレでは、セリーヌやエルメス、ディオールなど多くのブランドが、カジュアル寄りのプリーツのドレスやスカートなどを発表している。単色で布の流れを強調したものや、色を多彩に使って織りの模様地ではできない色の揺らめきを表現したものもある。

 そのどちらにも共通しているのは、一つのスタイルとしての押しつけが感じられないことだ。そしてプリーツの美しさは、ブランドや着るモデルによってみんな違って見える。それは多分、プリーツの服は着る人によってさまざまに変わって見えることが最大の特徴ということだろう。

 ミセス世代が中心顧客のレナウンの「エンスウィート」は、来年春夏向けにプリーツスカートを2型発売する。ラフ過ぎない“キレイめカジュアル”の提案で、体型をカバーするふんわりとしたシルエットだがおしゃれできれいに見える。体型カバーが重点の他のアパレルブランドの高世代向けのプリーツシリーズでも、デザインを重視しておしゃれに見える工夫をしている。

 世代にこだわらず作り込んだ服が特徴の「ハオリ・ドゥ・ティティ」も、今シーズンは薄い生地の繊細で美しいプリーツが特に目につく。デザイナーの八巻多鶴子は「プリーツは装飾ではなくて、解放感のある一つの面白い素材と考えるようになった」と語る。

 プリーツは、スタイルの押しつけから女性を解き放ち、個性の表現を促す。世の中全体に世界的な行き詰まり感が広がる中で、プリーツが注目されるのはそうした解放感があるせいなのかもしれない。プリーツは着る人の形、動きによって無限の差異を生み出すからだ。

 しかし考えてみれば、プリーツはしっかりと固定した折り目があってこそ成り立つ。動きの中で偶然にできたしわや、いい加減にたたんでおいてできてしまったしわとは違うのだ。既成の押しつけから解放されるためには、ただ逃げるのではなくて、どんな折り目を選んでそれをしっかり守るのか。それが問われている、ということなのかもしれない。

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PROFILE

上間常正(うえま・つねまさ)

写真

1972年、東京大学文学部社会学科卒業後、朝日新聞社入社。88年からは学芸部(現・文化くらし報道部)でファッションを主に担当し、海外のコレクションなどを取材。07年から文化学園大学・大学院特任教授としてメディア論、表象文化論などを講義。ジャーナリストとしての活動も続けている。

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