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<58>わくわく感を手紙に乗せて 雑貨と本を「編集」する店

  • 文 吉川明子 写真 石野明子
  • 2017年2月2日

 調布市の京王線柴崎駅は、各駅停車しか止まらない小さな駅だ。新宿からは約20分。駅前には小さな商店が軒を連ね、のんびりとした郊外の雰囲気が漂う。

 しかし、地元と縁もゆかりもないのに、この駅で下車する人が増えている。個性的なイベントの運営や商品企画などで知られる手紙社直営の店がこの街に2軒あるからだ。FacebookやInstagramで13万人のフォロワーを持つほどで、北海道や九州、海外からの訪問も珍しくないという。

 「本とコーヒー tegamisha」は、手紙社が運営する初の新刊書店。同社代表の北島勲さんは、かねてから「本屋をやってみたいのと、お店にコーヒーの焙煎機(ばいせんき)を入れてみたい」という夢があった。2013年から営業しているカフェ兼雑貨店「手紙舎 2nd STORY」の1階部分が空き店舗となり、2015年4月にこの店を開店した。

 店長の城田波穂さんは長く編集の仕事に携わっていた。客として通っていた「手紙舎 2nd STORY」の階下に書店ができることを知り、求人に名乗りを挙げた。城田さんをはじめスタッフは全員、書店経験ゼロで、本の注文や返品の方法もよく分からないといった状態。スタッフたちが本当にいいと思った本だけを揃(そろ)えるという方針があったが、もう一つルールがあった。それは、「装丁がきれい」ということ。

 「いくら内容がよくても装丁がいまいちだったら泣く泣く諦めます。ここは雑貨のにおいのする本屋だと思っていて、もちろん読んで面白い本ではあるんですけど、飾ってかわいいとか、本棚に並べて心がうずうずする感じを大切にしたいんです」

 店内には料理や手芸など暮らしに密着した本が多く、木のぬくもりが感じられる店内にしっくりとなじんでいる。

 城田さんには楽しみにしている仕事がある。それはフェアの棚づくりだ。毎回テーマを決めて、それに合わせた本を選び出し、並べていく作業。

 「スープの本を並べてその横にマグカップを置いてみたら、『2階の雑貨コーナーに木のスプーンがあったはず!』と思い出して、それを持ってきて並べてみたり……。本や雑貨を、生け花のように30分くらいで組み立てていくのが面白いんです」

 フェアの棚をはじめとした本の世界を満喫した後は、書店の奥にあるカフェスペースで一息入れたくなる。「クラシックホテルのロビー」をイメージした空間で、小さなタイルが敷き詰められた床に、アンティーク調のテーブルがよく似合う。そして店の一番奥が大きな焙煎機の特等席。コーヒーマスターの関根利純さんが自ら焙煎し、香り高いコーヒーを提供している。

 「煙が出るのでカフェの営業中には焙煎しないのですが、焙煎が終わると機械からザザザザッと豆がでてきて、すごくいい香りがするんです。朝イチで店に来ると残り香が楽しめることもあります」

 ところで、手紙社のwebサイトを見ると、紹介文のところに「編集チーム」と書いてあるのが気になり、城田さんに聞いてみた。

 「手紙社は編集チームと名乗っているんですけど、多摩川の河川敷にさまざまな作り手さんが集まる『もみじ市』や、古雑貨や古道具など古いものを中心とした『蚤(のみ)の市』などのイベント活動が中心なんです。でも、カフェを運営するのも、イベントをするのも、本を選書するのも編集。みんなが想像するような本や雑誌の編集ではないけれど、スタッフ全員が編集者と考えているんです」

 “編集者”たちは日々、調布の小さな街ですてきだと思う本を揃えたり、参加者がわくわくした気持ちになるようなイベントを企画し、SNSを通じてさまざまな“手紙”を送り続けている。手紙にはいつもセンスのいい写真が添えられ、イベントの紹介やスタッフおすすめの一冊、カフェで用意しているランチやスイーツの数々をうかがい知ることができる。そして、その便りに共感した人たちが今日も店を訪れているのだ。

■おすすめの3冊

『手紙にそえる季節の言葉 365日』(著/山下恵子、絵/西淑)
一日に一語、季語や季節感を表す言葉を取り上げ、その言葉を使った手紙の文例を紹介した一冊。「この店がオープンした頃に出た本で、西淑さんのイラストがすてきで注文したらすごく売れて、去年の売り上げランキングの上位に入りました。365日の季節の言葉が毎日記されているのですが、きれいな言葉が一つずつ自分の中に入っていくような気がするんです」

『めがねこ』(著・絵/柴田ケイコ)
クールに見えて、実はやさしさあふれるめがねこと、母親思いのねずみ3兄弟が織りなす物語。「これは手紙社が初めて作った絵本です。著者の柴田さんのお子さんが小さい頃からメガネをかけていて、その子がすごく嫌がっていたそうなんです。それで、めがねってすごくかっこいいんだよ、というのをテーマにして作ったのがこのお話なんです」

『英国人デザイナーが教えるアルファベットのひみつ』(著/アンドリュー・ポセケリ)
日本やイギリスで活躍している英国人グラフィックデザイナーが、英語のアルファベットの各文字について成り立ちや歴史、英語圏人が各文字に持っている印象などを解説した一冊。「例えば私の名前のNを開いたなら、Noを意味する単語はどの国の言葉も全てNから始まるって書いてあるんです。駐車禁止のマークも、Nの形に似ていますよね。そんな誰かに言いたくなるような話がいっぱい載っています。しかもこの著者、お店の近辺にお住まいで、年末にイベントもしてくださったんです!」

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本とコーヒー tegamisha
東京都調布市菊野台1-17-5 1F
http://tegamisha.com/shop#books

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