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<63>眠らないホテルで本の世界に旅をする

  • 文 吉川明子 写真 山本倫子
  • 2017年4月21日

 東京・赤坂に「不眠症」という名前のホテルがある。正しくは「ホテル・ザ・エム赤坂 インソムニア」。小さなホテルを表す“INN”と、不眠症を指す“INSOMNIA(インソムニア)”を合わせ「INNSOMNIA」と綴る。

「開業当初は、『ホテルなのに眠れないってどういうこと?』って驚かれました(笑)」

 そう話すのは、チサンホテルズやロワジールホテルなどのホテルを運営するソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ マーケティング本部の平岡彩未さん。同社では新たに“その土地に求められることを。”がコンセプトの「ホテル・ザ・エム」という自社最上級ブランドを設け、ここが第1号のホテルとなった。

「赤坂にはテレビ局や大手広告代理店などのオフィスがあり、昼夜営業している飲食店も多く、“眠らない街”というイメージがあります。そんな場所にあるホテルなので、“眠らない”をコンセプトにしました。眠ってはいけないわけでも、眠れないわけでもないんです」

 ガラス張りの大きな自動ドアをくぐると、奥行きのある縦長の空間が広がっている。左手には窓に面したカウンター席やソファ席、細長いテーブルがあり、右手にあるカフェの注文カウンターからはコーヒーのいい香りが漂う。

 ホテル1階には京都発のスペシャルティコーヒーブランド「Unir(ウニール)赤坂店」があり、ロビー空間を兼ねている。何も知らずに足を踏み入れた人は、ここがホテルとはすぐには気づかないかもしれない。

 「ホテルスタッフはバリスタとしてコーヒーを淹(い)れたり、レセプション業務にあたったりと、お客様に合わせて臨機応変に接客しています」

 白く清潔感のあるシャツに黒いベスト、フランスのA.P.C.(アーペーセー)のデニム姿というスタッフの装いもまた、ホテルのロビーらしからぬカジュアルな空間作りに一役買っているようだ。

 しばらくこの空間に身を置いていると、パソコンを広げて仕事をする人の前で大きなスーツケースを持った観光客がチェックインしたり、コーヒー片手に打ち合わせをする人の横で大きな買い物袋をいくつも手にした外国人宿泊客がソファーで休憩したりする姿が目に入る。

 24時間営業で年中無休のカフェの運営を可能にしているのは、ここがホテルだからだ。確かに赤坂は“眠らない街”かもしれないが、意外にも深夜でも利用できるカフェはほとんどない。真夜中に淹れたての本格コーヒーが飲めて、Wi-Fiと電源が自由に使える同店は貴重な存在だ。そのため、赤坂で働く人たちが深夜のワーキングスペースとして活用したり、終電を逃した人たちのオアシスとなっている。

 一方、ソファ席には時差ボケで眠れないのか、コーヒーを飲みながら本棚の本を読む宿泊客の姿もちらほら。宿泊客は24時間好きな時にコーヒーを無料で何杯でも飲めるので、このカフェは彼らにとってもくつろぎの空間として機能している。

「開業当初から宿泊者サービスの一環として本は並べていたのですが、本格的に品ぞろえして販売できるようにしたのは去年の12月から。3カ月ごとに本のラインナップを見直しています」

 本棚には日本や東京、旅をテーマにした本が約400冊並んでいる。中でも人気なのは旅の本。ホテルという空間に身を置いていると、自然と旅のことを考えたくなってしまうのかもしれない。

 このように、「不眠症」という名のホテルは、24時間いつでも旅人も、地域の人も分け隔てなく受け入れている。

 眠るのが惜しくなるようなカフェで、真夜中に旅の本を眺める――。都心にある深夜のホテルならではの愉(たの)しみだ。

■おすすめの3冊

『一生に一度は泊まりたい絶景ホテル』(編/アサヒカメラ編集部)
美しい自然や歴史遺産などを一望でき、優雅なひとときを過ごせる宿を集めた一冊。「今回、当ホテルで人気の本を3冊ご紹介します。まずはこちら。海底12mにあるホテルや全て氷でできているアイスホテル、オーロラが眺められるホテルなど、すばらしい景観のホテルが紹介されています。美しい自然や世界遺産など約50カ所が厳選されており、写真集としても楽しめるガイドブックです」

『世界のホテル』(編/パイインターナショナル)

世界約50カ国にある、今すぐ旅に出たくなるような78ホテルを紹介。「単に豪華なホテルを集めたのではなく、さまざまな環境のもとで特色を生かした、個性的で特徴のあるホテルが紹介されています。ページをめくりながら世界を旅する気持ちになれる一冊です」

『おとな女子が見たい 世界の絶景100』(著/世界の絶景100選考委員会)
働く女性のための“等身大の海外旅行本”。「働く女性が実際に足を運んだ中から、女性目線でチョイスし等身大で楽しめる世界の絶景100カ所を旅の予算やベストシーズン、旅のポイントなどを紹介しています。掲載されているのはどれも絶景ばかりで、見ているだけで旅欲が高まります」

    ◇

Unir赤坂店(ホテル・ザ・エム赤坂 インソムニア)
東京都港区赤坂2-14-14
http://www.unir-coffee-akasaka.com/

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