MUSIC TALK

ウルフルズのメンバー、喫茶店で運命の出会い トータス松本(前編)

  • 2017年6月2日

撮影/山田秀隆

 聴く者の心にまっすぐ響く歌詞をロックやR&Bのサウンドに乗せ、ミュージックビデオやライブでは突飛な演出を惜しまず、常にオーディエンスを楽しませてきたバンド、ウルフルズ。ボーカルのトータス松本さんが、「ウルフルズ前夜の青春」を振り返る。(文・中津海麻子)

    ◇

ほしい曲をレコード屋で歌ってみせた

――少年時代、音楽とのふれあいは?

 親父がベタな歌謡曲ファンで、森進一さんとか奥村チヨさんとか、内山田洋とクールファイブにぴんから兄弟、ピンキーとキラーズまで、ムード歌謡的なレコードが家にたくさんあり、それをポータブルターンテーブルでひっきりなしに聴いてました。うちは自営業で両親が共働きやったんで、おばあちゃんが病院に行くときとか僕も連れてくんですよ。やることないから待合室とかで覚えた歌を歌うと、ミカンもらえたりして(笑)。歌うのも好きやったんやと思います。

――自分で初めて買ったレコードは?

 友達の家に遊びに行くと、そこんちのおばちゃんが内職しながらかけてるラジオが聞こえてくるんです。その中でレコードがほしいなぁと思ったのが、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「スモーキン・ブギ」。親父に言うたら、「なんて歌や?」「わからへん」「誰が歌ってんねん?」「それもわからへん」。で、一緒にレコード屋に行って店員の前で歌ったんです。「目覚めの一服♪」って。そしたら「これちゃうか?」と視聴用のターンテーブルでかけてくれ、「これやこれや!」と。そのレコード屋では何度も歌ったなぁ。おばちゃんの内職でかけるラジオが聞こえてくる、聞いた曲が好きになる、レコード屋行く、歌う。その一連のやつ、結構やりましたね(笑)。

念願のギターを手に入れて

――自分で音楽をやるようになったのは?

 中学の同級生に、家にギターとかがあるヤツがおって。ギターも弾けてドラムも叩けて、めちゃめちゃカッコよかったんです。それを見てたら自分もやりたくなって。「松本もギター買えばええやん」とか言われてその気になって、カタログを取り寄せて授業中もそればっか見てて(笑)。で、誕生日を前についに親に頼んだんです。でも、「そんなもん買ったら絶対勉強せえへんからアカン!」と却下されました。

 それでも明けても暮れても「買うてくれ、買うてくれ」って言い続けてたら、根負けして買ってくれた。ヤマハのエレキギター。当時それが一番安かったんやけど、4万円もした。高いよね。おもちゃやレコードがせいぜい数百円の時代。ケタが違う。親が渋ってたのも、単に高かったからやったと思う。こんな高いもん買い与えて、ホコリ被らされた日にゃたまったもんやない、って(笑)。

――念願のエレギギターを手にして、いかがでしたか?

 当たり前やけど全然弾かれへん。でも、すごいプレッシャーを感じて。「4万円や!」って(笑)。「これで投げ出したら親父にしばかれる!」って必死に練習したんです。ギター持ってたヤツに教えてもらったり、テレビの音楽番組でギタリストの手元を食い入るように見たりして。そのうち自分の好きな曲や弾きたいと思っていた曲が弾けるようになり、夢中になっていきました。

 最初にバンドを組んだのも中学のとき。僕と同じようにギター持ってるヤツに影響されてギターとか買ったヤツらと一緒に。10人ぐらいおったんちゃうかな。ベースが2、3人、ギターが5人ぐらいおって、みんな同じこと弾いてる、っていう(笑)。RCサクセションのコピーやったり、ディープ・パープルの「Smoke On The Water」のリフを延々弾いたり、アナーキーがはやってたからその曲もやってたね。

忌野清志郎さんを生で見て、道がはっきりした

――高校では?

 バンドを組んで、中学時代と似たような音楽をやってました。で、高2のとき、大阪の厚生年金会館であった大好きなRCサクセションのコンサートに初めて行ったんです。生で清志郎さんを見て、そのとき自分の中ではっきりした。「こうなる」って。完全なる勘違いやったけど(笑)。

 そのためにも、高校を出たら何がなんでも大阪に行かなきゃアカン。僕が生まれ育った町はすごい田舎で、ホンマに何もない。映画館はポルノしかやってないし、化粧品屋に文房具とか売ってるし。文化がまったくないんです。そこでくすぶってるのがイヤやった。でも、大学行けるほど勉強せえへんかったし、アルバイトしながら音楽やりたいなんて親に言ったら絶対反対されるし。で、選んだのが服飾の専門学校でした。うちは実家が繊維業やったから、服飾ならちょっとはつながりあるなと思ったんです。親に言ったら割とすんなり「じゃあ行け」と。ホンマは大阪に出るための口実やった。

――大阪に出てからは?

 専門学校行ったら自分と同じようなヤツがおるかもしれへん、っていう薄い望みを持ってたんです。服飾の学校に来てるけどホンマにやりたいことは音楽で、「お前もか!」みたいな。でも、おらんかった。ただ、学校にはちゃんと通いました。自分で言うのもなんやけど手先が器用で、ミシンも製図も上手やった。それに気の合う仲間はいっぱいできて、お互いに影響され合うから、楽器弾けるようになったヤツもいて、遊びでバンドやったりはしていました。

 就職試験も2社ほど受けたんやけど、落ちた。でも、これ幸い!と(笑)。親や先生には「受けたけど落ちた」って示しがつくやないですか。自分としては「これは音楽をやれということやな」と確信し、いよいよ腹くくってアルバイト生活に突入じゃー! と。それでバイト先を探し始めたんです。

 最初は貸しスタジオとかライブハウスとかギター屋の店員とか、自分の好きなところから攻めて行ったんやけど、どこもピンと来ない。働きたいっていう感じがせえへん、っていうか。挙句、当時僕は長髪やったんやけど、あるライブハウスで「うちは一応飲食店やから、君みたいな髪が長いのは切ってもらわなアカンのよ」と。えらいマジメなライブハウスやなぁ、と(笑)。

たまたま心引かれた、インド喫茶

 いよいよ金もなくなるしどうしようと思っていたときに、たまたまある喫茶店に入って。すごいシャレてんなぁ、店員さんも雰囲気のある人ばっかりで、こんなところで働いたらすごい楽しいやろなぁ、と。で、「働かせてください」と頼みに行ったんです。それがインド喫茶「カンテ・グランデ」でした。

――インド喫茶? とは?

 インド喫茶としか言いようがないんだよねぇ(笑)。チャイと、ダージリンとかセイロンとかを出す紅茶専門店なんです。でも、デコレーションされたオシャレなカップに紅茶が入って、角砂糖が2つ乗っかって、っていう上品な感じじゃなく、粗悪なガラスのコップとかに乱暴にジャー! とミルクティーを入れてポーンと出す、みたいな。水も出てこうへんし。社長に「なんで水出さないんですか?」って聞いたら、「インドは水出てこうへんよ」(笑)。

――そのカンテ・グランデに音楽をやっている人たちがいた?

 偶然やけどね。雇ってもらうことになって、店員の荷物置場みたいなところを案内してもらったら、ギターがいっぱいあるんですよ。よくよく聞いたら「みんなバンドやってる傍でここで働いているのよ」。そういう店やったんや、道理でみんな雰囲気あるはずやわ! と。

 当時カンテは、僕が働いていた梅田の中津本店を含め4店舗あって、店員はどこの店でもタダでお茶を飲むことができたんです。僕も休みの日によく丸ビル店に行ってチャイ飲んで、店員とも顔見知りになった。で、丸ビル店にはウルフルケイスケとジョン・Bがいて、バンドをやるっていう話になったときに「中津にちょっとおもしろそうなヤツおるぞ」と僕に声がかかったんです。どうやらケーヤン(ウルフルケイスケさん)が「こいつ歌わせたらオモロそやな」と思ったみたいで。

――ギターをやっていたトータスさんに歌わせようと思った?

 そう。僕もそんな気さらさらなかったし、初めて一緒にスタジオに入った時もギター弾くもんやと担いで行ったのに、「ギターは俺弾くから、松本くん歌ってぇや」と。そんなこといきなり言われてもと思ったし、そもそも俺の歌聴いたことないはずやのになんで?と。とはいえ、頑張って歌ってみたらケーヤンが「ええなぁ!」って。

 そんなこんなするうちにみんなで頻繁にスタジオに入るようになって、ライブハウスに出るためにオリジナルの曲を作り、ひたすら練習しました。それがウルフルズになった。1988年のことでした。

(後編へ続く)

    ◇

トータス松本

1966年生まれ、兵庫県西脇市出身。ウルフルズのボーカルとして、92年シングル「やぶれかぶれ」でデビュー。95年「ガッツだぜ!!」でブレイクし、96年のアルバム「バンザイ」はミリオンヒットに。2003年、自身のルーツであるサム・クック、マーヴィン・ゲイなどソウル、R&Bの名曲をカバーした初のソロカバーアルバム「TRAVELLER」を発表した。09年にウルフルズが無期限活動休止を発表、14年活動再開。以降もライブ活動を中心に、ソロ活動も継続している。また、音楽活動と並行し、CM、ドラマ、映画、執筆活動等、多方面でも活躍。
17年5月24日、ウルフルズ25周年を記念した、通算14枚目のアルバム「人生」をリリースした。

ウルフルズ 公式サイト:https://www.ulfuls.com/
トータス松本 公式サイト:https://www.tortoisematsumoto.com/ 

【ライブ情報】
「ウルフルズ ツアー2017 人生~デビュー25周年やな!せやせや!~」 詳細はこちら 

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