MUSIC TALK

ペトロールズがこれからやりたい”遅い音楽” 長岡亮介(後編)

  • 2017年8月25日

撮影/山田秀隆

  • 撮影/山田秀隆

  • ペトロールズ 初のフルアルバム「Renaissance」(2015年)

 オーディエンスはもちろん、アーティストをも魅了してやまないミュージシャンズミュージシャン、ペトロールズ。フロントマンの長岡亮介さんが語る、独自のスタイルの理由と、これからやりたい音楽。(文・中津海麻子)

  ◇

(前編から続く)

ペトロールズ結成10年目にして、ファーストアルバム

――ペトロールズは、ほとんどライブをやらない時期があったり、CDはライブ会場で限定販売したりするなど、独自のスタンスで活動しています。ファーストアルバム「Renaissance」(2015年)もまさかの結成10年目のリリースで、これが初の全国販売。ある意味「常識破り」なバンドです。

 だらしなさすぎですよね(笑)。でも、CD売るのって、流通がどうのプロモーションがどうのと、大変だしめんどくさい。それを否定はしないけれど、ミュージシャンが音を作って届けるという単純で根源的な作業のほかに余計なものがありすぎる。そういうのを省いてシンプルにやるのもアリでしょう? という提示でもあるし、そもそも僕らにとってもやりやすい。だからそうしてみた、という感じです。

 ただ10年経って、さすがになんかしなきゃな、と。「10年ありがとう」という気持ちも強かったし、10年目でファーストアルバムってウケるよね? なんて下心も(笑)。幸いにもお尻をたたく人がいないので、やりたい音楽をやりたいペースでできています。本当に仲間にもスタッフにも恵まれて、それが自分のすべてかも。

――活動を続けてきて変化はありましたか?

 音がどんどん少なくなってきた。「ホロウェイ」という曲からだと思うのですが。スカスカでもきっと大丈夫、信じる、みたいな(笑)。楽器で埋めずにコーラスで、というスタイルがより鮮明になりました。

 あとは、ライブでやっているうちに曲がどんどん変わってきた。演奏は毎回違うから当たり前なんだけど、変わっちゃったらそれでいいじゃん、って。僕は車が好きなんですが、アメ車いじってる連中って改造途中でも仲間に見せに行ったりする。塗装がまだ仕上がってないけど今こんな感じ、その途中経過を含めてみんなで愛でるんです。車好きのマインドと同じなのかもしれないなぁ。

 CDは単なる記録でしかないと思っているんです。「インサイダー」や「よなかのすうがく」は、楽曲ができた当初の感じとはかなり変わりました。特にツアーに出ると曲が育つ。それがすごく楽しいんです。

――楽曲だけでなく作詞も手がけています。独特の美しい世界観で、日本語へのこだわりも感じられます。

 聞いたような言葉、ありきたりな表現は使いたくないというのは昔からあります。言ってることは同じで、最終的にたどり着く感情が一緒だとしても、違う道を通って行きたい。

 でもなんかね、最近ちょっと変わってきて、あえて簡単な言葉を使うことも。3人でひたすら「愛してる」って熱唱する曲とか。ペトロールズもアラフォーバンドになったし、そういうのもいいかなって(笑)。

――ペトロールズは、多くのミュージシャンから支持される「ミュージシャンズミュージシャン」でもあります。オリジナル・ラブ、Suchmosなどが参加したトリビュートアルバム「WHERE, WHO, WHAT IS PETROLZ?」もリリースされ、好評です。

 「出したい」という話をいただき、どうぞどうぞ好きにやっちゃってください、と。完成したのを聴いたら、みんなすごくカッコいい。自分たちの曲がキャンバスになるのはいいなと思いました。「こうすりゃいいんじゃん」という発見もたくさんあって、それはパクろうと(笑)。

 でも、なんというか、ペトロールズはバンドでありながらもバンドじゃないようなサウンドにしようとしていつも苦労してるんですが、それをバンドらしくジャーン!とやったら、そりゃいいよなぁ、楽しいよなぁ……。そんな嫉妬もあったりして(笑)。

――自らのバンドに加え、星野源さんや大橋トリオのバッキングなど、他アーティストのサポートやコラボの活動もされています。

 これもまた恵まれているんですが、皆さんが僕のことを尊重してくれるんです。最初から「長岡くんの感じで」とオファーしてくれる。だから本当に楽しいですね。

 誰かと一緒にやる音楽は「フィットさせるおもしろさ」みたいなものがあります。あと、ペトロールズではギターのことはまったく考えていないのですが、サポートのときはギターに意識がいく。ギタリストっぽくなりますね。ギタリストなんだけど(笑)。

聴いている人が、自分から入っていけるような曲を

――ペトロールズは今年12周年を迎えました。今後の予定は?

 ツアーはありますが、CDの予定はナシ。何曲か録ってはいるけど、録ったままになっていて、どうするか全然わからないです。ツアー前にトントンと進んで出すかもしれないし、それはもうコウノトリのご機嫌次第ということで(笑)。

 12周年でひと回りして、もうひと回りもふた回りも普通に続いていく。そんな感じです。具体的なことはあんまり考えてないけど、やりたい音楽はあるのでそれをやって行こうと。

――どんな音楽?

 「遅い音楽」。って、ちょっとシュールですね(笑)。少なくとも今の日本のちまたにはテンポの遅い曲ってほとんどない。攻撃されるような曲はいっぱいあるんだけど、聴いている人が自分から入っていけるような曲がない。以前からそういう曲を作りたかったけれど、よりその気持ちが強くなっています。

 日常の中の大事なものや愛着のあるもの、たとえば好きなタオルとか好きな食器とか、そんなふうにペトロールズの音楽が聴く人の暮らしの中にあったらいい――。そう願っています。

    ◇

長岡亮介(ながおか・りょうすけ)

1978年生まれ、千葉県出身。2005年、スリーピースバンド「ペトロールズ」を結成、リードボーカルとギターを担当。また、2005年から2012年まで浮雲名義で「東京事変」のギタリストとしても活動。自らのバンド活動に加え、星野源など様々なアーティストのサポートを行っている。
2015年、ペトロールズ結成10年目で初のフルアルバム「Renaissance」をリリースした。
ペトロールズ 公式サイト:http://www.petrolz.jp/

【ライブ情報】「BASE-12 II」

9月12日(火) 東京 新木場スタジオコースト
9月16日(土) 広島 広島クラブクアトロ
9月17日(日) 兵庫 神戸VARIT.
9月24日(日) 北海道 旭川CASINO DRIVE
9月25日(月) 北海道 札幌ペニーレーン24
10月1日(日) 秋田 秋田Club SWINDLE
10月2日(月) 宮城 仙台RENSA
10月7日(土) 岐阜 岐阜CLUB ROOTS
10月13日(金)島根 松江AZTiC canova
10月15日(日)山口 周南RISING HALL
10月20日(金)大阪 BIGCAT
10月27日(金)愛知 名古屋クラブクアトロ
10月28日(土)静岡 SOUND SHOWER ark
11月10日(金)福岡 FUKUOKA BEAT STATION
11月11日(土)熊本 熊本NAVARO
11月25日(土)徳島 徳島club GRINDHOUSE
11月26日(日)高知 高知X-pt.
12月2日(土) 沖縄 桜坂セントラル
12月9日(土) 大阪 梅田クラブクアトロ
12月20日(水)東京 新木場スタジオコースト
12月22日(金)新潟 新潟LOTS

[PR]

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

今、あなたにオススメ

Pickup!