#明日何着よう

未来の風吹く、セリーヌの志

  • 文・朝吹真理子
  • 2018年1月26日

お気に入りのセリーヌのバッグ

 昨年末、セリーヌのデザイナーである、フィービー・ファイロが退任することを知った。ミニマルな音楽やファッションが好きな私は、彼女の手がけるコレクションをみるのを毎度心待ちにしていた。

 流行の文脈はよく知らないけれど、ランウェイでモデルが纏(まと)うコートが揺れるとき、いつも未来からの風が吹いているようにみえた。みたことがない服が、新しいということではないことを実感する。メンズテーラードの美しさを女性の服におとしこんだコートやパンツ。フィービーの服は、セクシー一辺倒ではない美しさと心地よさが表現されていた。

 フィービーの、妊娠中に体調を優先してショーを小規模にしたり、家族との時間をとるためにロンドンに住みつづけながらパリでコレクションを発表するすがたは、これからの女性の働き方を率先して体現していて憧れた。

 セリーヌは長らくインスタグラムの公式アカウントがなかったし、今でも日本のECサイトはない。実際に店舗まで足を運んで、ふれてほしいというブランドの意志は、表参道にある路面店を通るときに感じた。採光の広い窓や、大理石の立方体の上に置かれた靴やバッグをながめてはため息をつく。石の色や立方体のサイズ感があまりにも格好いいので、店内にいると、石がほしいのか、靴がほしいのか、よくわからなくなった。

[PR]

 数年前までのセリーヌは洋服の印象が薄く、百貨店のタオルやハンカチ売り場でみかけるブランドだという認識だった。先日、大掃除のときに実家のタンスの奥からセリーヌのロゴがあしらわれたバスタオルがでてくるまで、以前のブランドイメージをすっかり忘れていたので、ぎょっとした。しわくちゃのバスタオルを掴(つか)みながら、ブランドイメージの移り変わりの速さをおそろしく思う。

 (作家)

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

今、あなたにオススメ

Pickup!