リノベーション・スタイル

特別編<1>リノベーション、どう始める?

  • 石井健インタビュー
  • 2018年2月14日

ブルースタジオ執行役員石井健さん / 撮影 鈴木愛子

 自分らしく暮らすために住まいを編集する――。「ブルースタジオ」が手がけたリノベーション事例を紹介する「リノベーション・スタイル」も連載を開始して5周年を迎えました。今回から特別編として、ブルースタジオ執行役員の石井健さんに「リノベーションの始め方」、「中古マンションのリノベーション事例」、「一戸建てリノベーション事例」、「お金のはなし」と4つのテーマについてお話を伺いました。

 第1回は「リノベーションの始め方」についてです。

    ◇

 「リノベーション」という言葉の認知度は、今や96.9%と言われています(2016年度、リクルート住まいカンパニー※註)。この10年、20年でリノベーションをめぐる状況はかなり変わってきました。中古住宅を選ぶ人は今も確実に増えています。
 ※註『住宅購入・建築検討者』調査(2016年度)~「リノベーション」、「DIY」の認知度、関心度が共に上昇し、過去最高に~(2017.5.18)

 それでは、なぜ多くの方が中古住宅を選んでいるのでしょうか? そこにはどんな魅力があるのでしょうか。

 まず、1つ目に挙げられるのは価格です。一部例外もありますが、おしなべて新築より安いというのは大きな魅力ですよね。

 2つ目は立地。中古住宅ならどの駅や地域にも何かしら物件があり、選択肢が多いということも外せません。それに比べ、新築は自分が住みたい町に必ずしも物件があるとは限りません。特に最近は子どもの学区や保育園問題で、住みたい地域を絞ってから探す方も多くいます。希望のエリアに物件があるかどうかは重要なファクターです。

 3つ目は暮らしに合わせてリノベーションできること。中古住宅をリノベーションすれば、自分の暮らしやテイストに合わせて、こんなデザインにしたい、あんな間取りにしたいというだけでなく、働き方や子育ての多様化、家族のあり方の複雑化に合わせて、家を自分に合わせて造ることができます。もちろん注文住宅でもできますが、価格や立地の選択肢を考えると、中古住宅のリノベーションの方に軍配があがります。

 とはいえ、中古住宅に対する不安があったり、リノベーションに興味があっても、何から手をつけたらいいのかわからない方も多くいるでしょう。

物件探し、と急ぐ前に!

 物件探しをいきなり始める前に、自分探しや不動産/金融の最低知識を知ることが大切です。

 そこで、想像してみてください。自分にとっての暮らしってなんですか? あなたの理想とする働き方、家族のありかた、子育て、休日の使い方、友人とのつきあい……それらをどんな町に住んでこれからの人生を過ごしていきたいでしょうか。そしてその町では、どれくらいの大きさの部屋に住みたいでしょうか。具体的に考えていくと、住みたい町や家に求めることが頭に浮かんでくるのではないかと思います。

 その次に、じゃあいくらまでなら払えるのか、築年数は何年くらいまでなら許容できるのか……といった問題も浮かんできます。もちろん、5年、10年で売却し、住み替えるという選択肢もあります。

 ちなみに、マンションは20年で購入時の半額に、戸建てだと15年で上物の価値がゼロになると言われています。これは日本特有の現象ですが、それをふまえると、どの場所なら価格があまり落ちないか、ということも考えないといけません。

管理や資産性などにも気をつけよう

 中古住宅を買うときにはいくつか気をつけるべきポイントがあります。

1.耐震

 不安要素として真っ先にあがるのが耐震の問題ですよね。こればかりは、実は地震が実際にこないとわかりません。地震の波動の種類や建物の立地、施工精度などさまざまな要因で変わるので、これなら絶対に大丈夫という物件はありません。

 とはいえ、そうも言ってばかりいられないので、一つの基準にしているのが法律です。耐震に関して必ず引き合いに出されるのが、1981年6月1日の法改正。このときに建築基準法が改正され、新しい耐震基準で建物を建てなくてはいけなくなりました。よって、この日付より前の確認申請で建てられた建物は「旧耐震」、それ以降を「新耐震」と呼んでいます。

 でも、阪神淡路大震災のケースを見ると、深刻な被害にあった建物は旧耐震の場合全体の6%、新耐震の場合は2%だったと言われています。そこには3倍の差がありますが、100でみたとき、旧耐震の94%、新耐震の98%の建物が大丈夫だったと思えば、どちらもあまり変わらないと考える人もいます。要はどこにお金を使うかということ。古い建物でも大丈夫と言うつもりはありませんが、建築年月や新耐震基準の適用の有無だけで判断するのではなく、実際に建物の状態などを確認することが大切です。

 ちなみに一戸建てになるともっと複雑になってきます。1995年の阪神淡路大震災の後、2000年に大きな法改正があり、そのあと2006年にもふたたび法改正がありました。一戸建ての耐震に関しては、敷地の地盤や基礎などにも十分な注意が必要なので専門家の意見を聞いて進めた方がいいでしょう。

 耐震の問題は単に安全性だけでなく、税金、融資、保険などにも関係してきます。旧耐震の場合はローンを組みにくい場合もありますし、将来売却したいときに、売りにくくなることもあります。そのあたりも考慮して、どこまで自分が許容できるのかを考えないといけません。

<耐震について調べる時に参考にしたいサイト>
国土交通省:建築:住宅・建築物の耐震化について
政府広報オンライン:暮らしに役立つ情報
東京都耐震ポータルサイト:耐震Q&A

2.管理

 建物の管理も買う前に気をつけたいポイントです。この点に関しては、「中古の方がわかりやすいから安心」という人もいます。すでに住んでいる人がいるので、洗濯物や止まっている車、ゴミ捨て場などを見ると、なんとなくコミュニティの雰囲気がわかるもの。戸建ての場合も、その街がどんな行政を行っているのか調べてみるといいでしょう。

3.住む街の選び方

 住む街に関しては、マンションの場合も戸建ての場合も注意が必要です。この時代、その街が成長しているのか、シュリンクしているのか見極めることが必要です。ちょっと前までは、東京であれば売れないということはまずないし、相場の変化もある程度見通しがつきました。でも今は、郊外を中心に高齢化と少子化が同時に進んでいる地域もあれば、少子化をなんとか抑え込んでいる地域もあります。

 地方都市になると、多くの行政が機能特区という形でサービスを制限しようとしています。今まではどんな場所でもゴミの回収車は来たし、浄水設備もありましたが、今後はどこでも同じようなサービスが受け続けられるとは限りません。人口減がこれから住もうと思っている街にどんな影響を与えるのか。行政の姿勢によって、明暗が大きくわかれてくるはずです。

いよいよ、物件探しへ

 そのようなさまざまなポイントをふまえた上で、どうやったらいい物件を見つけられるのか。

1.ワンストップサービスを利用する

 基本的には不動産屋へ行くのが一般的ですが、最近多いのは、物件探しから資金計画、リノベーションまでを一手に引き受けてくれる“ワンストップサービス”を提供しているリノベーション会社に頼むこと。理想の暮らし方、資金、将来の売却、街のこと、建築のことまですべてを含めて一緒に話しながら決めていけるのが最大のメリットです。

 というのも、建築がわからない人と一緒に不動産を探してしまうと、買った後に「間取りが変えられなかった」「電気容量が上げられなかった」「フローリングが変えられなかった」「キッチンが動かせなかった」など問題が出てくることが多々あるからです。また、不動産のことに詳しくても建築のことに明るくないと、いい物件だけれども高いものを買ってしまい、あとでリノベーションの費用が足りなくなってしまった、というケースもあります。そういう意味で、デザインと不動産の両方を扱っていて、かつお金にも詳しいリノベーション会社を選べば、時間の無駄がなくなります。

2.住宅のポータルサイトを利用する

 それ以外にも、最近はポータルサイトも充実してきているのでおすすめです。地図から物件を簡単に探せるようになっていますし、検索のパラメーターも「築何年以上」、「耐震基準」、「住宅ローンの控除」など様々な軸から調べられるようになっています。ぜひいろいろなサイトで比較検討してみてください。

<参考にしたい住宅ポータルサイト>
SUUMO:https://suumo.jp/
HOMES:https://www.homes.co.jp

3.自分の「好き嫌い」を大切にする

 そして、意外と見落としがちなのが「気持ち」です。物件を見に行ったときに感じる「好き嫌い」は、みなさんもっと信じていいのではないでしょうか。プロの人は、「このマンションの管理はこうなっています」「修繕計画はこうなっていて、お金が積み上がっていて優秀です」などという情報はいくらでも解説できます。でも、本人がその場に行って感じる「なんかいいな」「なんかいやだな」という気持ちは、その人にしかわかりません。フィーリングというのは意外と大事です。

事例:Kさんが即決で購入した下町にある築20年のマンション(リノベーション前)

 最後に気をつけたいのは、中古住宅市場は驚くほどスピーディーだということ。いい物件は誰が見てもいい物件です。そういう物件は、土曜日に内見に行くと、日曜日にはすでに他の人が申し込みをしているということが珍しくないので、すぐに決断できる状態でいるのが理想的ですね。

 そのためにも、まずは不動産、お金、建築の3つに詳しく、かつ相性のいいプロを見つけ、その人と一緒に実際に物件を見て、早い段階で自分の本当の欲望や、暮らしの理想を見極めておくことが必要です。

(文 宇佐美里圭)

 第2回「中古マンションのリノベーション事例」は、2月28日(水)更新予定です。

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