猫と暮らすニューヨーク

脱走、流血、尻尾も燃えた。愛おしき、変てこな猫

  • 文・仁平綾、写真・前田直子
  • 2018年4月16日

アルフィーさんに抱かれた姿を見ると、体の大きさが一目瞭然ですね

[猫&飼い主のプロフィール]
猫・The Shah(シャー)6歳 オス 長毛の雑種
飼い主・ラグを始めとするインテリアアイテムのブランドAELFIEのオーナーAelfie Oudghiri(アルフィー・ウギリ)さん。夫でエンジニアのHichan(ヒシャン)さん、4歳になる娘のMirah(ミラ)ちゃんと共に、ブルックリン・ウィリアムズバーグのロフトアパートメントに暮らす。

    ◇

 猫や犬に囲まれ育ったというアルフィーさん。初めて自分で猫を飼ったのは、19歳のとき。「ブルックリンの通りを歩いていたら、異様な大声で鳴く白猫がいて、保護したんです」

 当時、パンクバンドでドラムを担当していたアルフィーさん。自宅に連れ帰り、ホワイティと名付けたその猫の様子が、少しおかしいことに気づいたのは、ドラムの練習をしていたときのこと。「大音量にも平然としていて。調べてみたら耳の聞こえない猫だとわかりました。大きな鳴き声は、耳が聞こえないせいだったみたい」

 その後、ヨーロッパの大学へ通うことが決まり、ホワイティをNY郊外に暮らすお父さんに託した。学業を終えてNYへ戻り、猫を受け取りに帰ったところ、「断られました(笑)。父がホワイティを大好きになってしまって、もう手放せないって」

 毎朝5時から、すさまじい大声で鳴き、ごはんを要求する。ちょっと困った猫だったけれど、アルフィーさんも、お父さんも深い愛情と絆を感じていた。「だからホワイティが亡くなったとき、父は悲しみのあまり、しばらく話しができなくなってしまったほど」。お墓を作り、キャンドルを灯して愛猫を弔ったのはお父さんだった。アルフィーさんはしみじみ言う。

「猫を飼うと、人は誰もが優しくなり、慈悲深くなるものですね」

Shah(シャー)の名前の意味は、ペルシャ語で王様。確かに、キングの風格が漂ってます!

 さて、そんなアルフィーさんが現在、惜しみない愛情を注いでいるのは飼い猫のシャー。一緒に暮らし始めたのは6年前のこと。マンハッタンにあるシェルターから、殺処分される予定だった猫を譲り受けたという。

「たぶんメインクーン(大きな体で知られる長毛の猫)が混じっていると思う」というシャーは、納得の貫禄ある体つき。おっとりした性格で、ほとんど鳴かない物静かな猫。「今までに鳴き声を聞いたのは5回ぐらい。どんな声だったかも思い出せないぐらい」と笑うアルフィーさん。そんなシャーをひと言で形容するならば、「変てこな猫」だとか。

 ある時はキャンドルに近づきすぎて、胸の毛や尻尾のふさふさを自らチリチリに焦がし、またある時は、玄関ドアの隙間から脱走し、立ち入り禁止場所に居座ってしまったことも。「そこは屋上に出る階段で、人が立ち入らないようセンサーで感知するアラームが取り付けられていたんです。シャーの体にセンサーは反応しないけれど、シャーを捕まえにいった私には当然反応して、深夜の建物内にアラーム音を鳴り響かせてしまったというわけ」(アルフィーさん)

ゴハンを食べてご満悦のシャー。ぺろりと口から飛び出た舌が、まるで桜の花びらのよう

 流血事件も起きた。アルフィーさんが友人と自宅で談笑していたところ、ふとシャーを見ると口元が真っ赤な血で染まっていたという。「え、何が起きたの?って。わからないし、怖いしでパニックになったんです。そうしたら一緒にいた友だちが、シャーの口の中からワイヤーピンを発見して…」。一体全体、どうしてそんな鋭利なものを、わざわざ口に入れたのだろう…。いまだ動機は謎のままである。

広いアパートメントの中で、なぜかテーブルの、それも一番端っこに寝転ぶ、変てこな猫。首は苦しくないんでしょうか……

 何を考えているのかわからない、予想すらつかない。「いつも謎めいた存在であること。それこそ、猫が誇れる特技だと思う。あとは昼寝することね」とアルフィーさん。

 そんな飼い主の言葉を、身をもって表すように、テーブルの上のシャーはなぜか一番端のぎりぎりのところに寝転んで、頭が今にもずり落ちそうな体勢でうつらうつらしている。あのぅ、その姿勢、つらくないですか…? 猫ってば、本当に不可思議な生き物です。
>>つづきはこちら

    ◇

AELFIEのインスタグラム
https://www.instagram.com/aelfie_

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http://www.aelfie.com

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 連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。


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PROFILE

仁平綾(にへい・あや)編集者・ライター

仁平綾

ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。

http://www.ayanihei.com
http://www.bestofbrooklynbook.com
photo by Naoko Maeda

前田直子(まえだ・なおこ)写真家

前田直子

24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
http://www.naokomaeda.net

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仁平綾

ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
http://www.ayanihei.com
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photo by Naoko Maeda

前田直子(まえだ・なおこ)写真家

前田直子

24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
http://www.naokomaeda.net

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