このパンがすごい!

“みんな大好き”サンドイッチで「トリュフ×半熟卵」の夢コラボ/トリュフベーカリー

  • 文・写真 池田浩明
  • 2018年4月17日

■トリュフベーカリー:東京

 高級食材トリュフを目玉にしたパン屋が下町・門前仲町に現れた。町のパン屋さんでトリュフを使っていることなんてちょっと記憶にない。

トリュフ入りパンとその断面

 一抹の危惧。高級食材でパンの値段を釣り上げようというだけではないのか? と。食べて思った。いやいや、これはパン自体がおいしいではないか!

 名前はずばり「トリュフ入りパン」。2つに切った瞬間。ランプの中からアラジンが出るみたいに、トリュフの竜巻が巻き起こった。食べればなお激しい。香りのとぐろは鼻腔(びくう)に駆け上がり、びりびり粘膜をふるわせる。パンも負けていない。表面にまとわせたかりかり。小麦の甘さと旨味(うまみ)がボディ豊かに、でも、あくまで優雅に。トリュフの油の旨みまで引き受け、引き立てる。

 夢だけど、夢じゃなかった「トリュフの卵サンド」。トリュフに半熟卵というベストカップリングを、「みんな大好き卵サンド」に落とし込んだ。卵の風味が濃いめにあふれかえると、かき分けるように飛びだしてくるトリュフの香り。その刺激を甘くまろやかに卵感が包みこむ。食パンも秀逸。コシがあるのにやわらかいため生じる、はむっとした歯ごたえ。そして、後味も、鼻腔の中にまでじんじんトリュフ。

 塩パンも「白トリュフの塩パン」。

 トリュフオイルとトリュフ塩を使用。もちもちと量感のある食べ口。あふれるバターの風味がやさしい塩パンである、と思った束の間、バターのあわいからそこはかとなくにじみでる白トリュフの香り。ときどき、トリュフ塩が舌にあたって味わいはぎゅーんと高められる。虜になるまで時間はかからなかった。

 それにしても、なんでこんなにトリュフの雨あられを降り注げるのか? 実は、世界中から選び抜いた高級食材を販売する「ハイ食材室」(楽天市場)が昨年12月にオープンさせたパン屋だから。

 「扱っている高級食材を、毎日食べるパンと組み合わせることで、身近なものにできるのではないかと。社長(丸岡武司さん)がすごくパンが好きだったんです。中学・高校からパンを食べ歩いていて。だから、試作のときも、作っては社長が食べ、作っては社長が食べ……そうやって完成させました」

 世界中の高級食材を食べ歩く丸岡社長が自らの舌で納得したものだけを出す。「マイヨンヌ&ブリー」は、フレンチバスク・マイヨンヌの生ハムとブリーチーズを使ったジャンボンフロマージュ(ハムとチーズのバゲットサンド)。社長がずっとあたためていた組み合わせだという。

 ミルキーなブリー、肉の旨味と熟成香にあふれる生ハム。どちらも香り豊かなれど、尖りなく、まったりまろやかなのである。バゲットは風味と食感にバランスがとれたもの。フランス産小麦の濃厚な味わいが生ハムとチーズの熟成香をがっしりと受け止めたとき、社長の食べさせたかった「この味」がびんびん伝わってきた。

 店内に、アメリカ・セントラルミリングカンパニー製の小麦が置かれていた。サンフランシスコの世界的名店「タルティーンベーカリー」と同じものをわざわざ輸入。それを使い、タルティーンのレシピも参考に作りあげた、「カントリーライ」。フルボディの甘さと清涼感が同居。濃厚であればあるほど、食べ口も重くなるのが小麦の常であるが、これはその範囲外に突出している。濃厚さとポップな甘さ、軽い食べ口が両立しているのだ。そのあと、店内で起こしたサワー種の風味がじわじわ。後から後から心地いい酸味が効いてきて、飽きさせない刺激になる。

 他にもダンデライオンのカカオニブを使った「スコーンカカオニブ」や、笑ってしまうぐらい甘くてすっぱいオーストラリア産のドライトマトを使った「オリーブとセミドライトマトのフォカッチャ」などなど。おいしい食材を見抜く目利き力と、それを世界中から引っ張ってくる機動力。食材専門会社の長所がフルに発揮されている。

>>続きはこちら

■トリュフベーカリー
東京都江東区門前仲町1-15-2
03-5875-8435
8:00~17:00
月曜休み(祝日の場合、翌火曜休み)
https://ja-jp.facebook.com/bakerytruffle/

>>「このパンがすごい!」でご紹介した店舗マップはこちら

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PROFILE

池田浩明(いけだ・ひろあき)ライター

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

BOOK

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