猫と暮らすニューヨーク

よくしゃべる保護猫。犬派の夫を、猫派に変える

  • 文・仁平綾、写真・前田直子
  • 2018年5月7日

ネズミが出た以前のアパートメントでは、名ハンターぶりを発揮。「朝起きたら、ラルフが鳴いて大興奮していて。付いていったらリビングにネズミが転がっていました」(レイチェルさん)

[猫&飼い主のプロフィール]
猫・Mrs.Ralph(ミセス・ラルフ)5~6歳 メス 長毛の雑種
飼い主・ブルックリン在住のコピーライター、Rachel Wright(レイチェル・ライト)さんと、夫で教師のSam(サム)さん夫妻。ブラウンストーンと呼ばれる古いタウンハウスの最上階に暮らす。

    ◇

 夫妻が、西海岸のオレゴン州から、NYへ引っ越してきたのは4年前のこと。

 「冬に向かって寒くなり始め、ネズミたちが暖かで快適な住処(すみか)を探しだす頃、我が家のアパートメントにも、その灰色の小動物が姿を見せたんです」とレイチェルさん。

 子どもの頃から農場で育ち、犬や猫などの動物全般が好きなレイチェルさん、これは猫を飼う格好のチャンスと、夫のサムさんに「ネズミ退治のために猫を飼うべきだ」と提案をした。

 猫アレルギーを主張するサムさんは、そんなレイチェルさんに消極的な反応だったけれど、ともあれ2人は譲渡可能な猫を探すことに。ある週末に、ペットショップでの譲渡イベントに出かけたときのこと、「ひときわ体が大きくて、毛がもふもふの猫がいたんです」(レイチェルさん)。その猫にひと目ぼれしたのは、なんとサムさん。躊躇(ちゅうちょ)することなく即決し、翌日にはその猫を自宅に連れ帰るという惚(ほ)れこみようだったとか。猫アレルギーはどこへやら……。

 ミセス・ラルフと名付けられた、ふわふわのロングヘアが自慢の保護猫は、「犬みたいな性格。名前を呼べば走ってくるし、いつもかまってほしくて仕方がない。私たちのそばにいるのが大好き」とレイチェルさん。

 実はラルフは、野良猫として屋外で保護された猫だった。「元々は飼い猫だったみたい。マイクロチップが埋め込まれていたから」(レイチェルさん)。保護施設の人が、チップの情報をもとに飼い主にコンタクトを取ろうとしたが、まったく連絡がつかず、譲渡イベントで新たな飼い主を探すことになったのだという。

 そんなラルフの切ない過去に、「動物を捨てるなんて、信じられない」と語気を強めるレイチェルさん。すこぶるフレンドリーで人懐っこいラルフだけに、なおさら無責任な飼い主に対する怒りや、やるせない悲しみが込み上げてくる。

謎の声でしゃべる、ふわふわ、もふもふの生き物。「一週間に一回ぐらい、嬉しいときに“パルル”って鳴くんです」とレイチェルさん。それはぜひとも聞いてみたい!

 ところで、ラルフはよくしゃべる猫である。なんとも表現しがたい鳴き声で(あえて文字にするなら「え゛え゛え゛え゛ぇぇぇ」)、しきりに話しかけてくる。

 そんなラルフの巧みなトークに籠絡(ろうらく)されたのかどうかはわからないけれど、ラルフと暮らし始めてから、犬派だったサムさんはすっかり猫派に心変わり。「猫は人を変えてしまう力がある」とレイチェルさんはつくづく感じたという。

 ちなみに、気になるサムさんの猫アレルギーだが、結局のところ発症せずじまい。「自分でそう信じていただけというのもあるし、猫を飼いたくないから、いい口実にしていたところもあると思います」とレイチェルさんは笑う。

 それでも、猫の毛がつくという理由から、寝室のベッドだけは、ラルフ禁制の場所だった。ごく最近までは…。

サムさんのいない間に、すっかり味をしめてしまったベッドの上。今夜もレイチェルさんとぬくぬく体を寄せ合って寝ます

 というのも、撮影で訪れたこの日は、サムさんが出張中で不在。レイチェルさんはサムさんに内緒でラルフと一緒に、ベッドで寝ているのだという。「ラルフもベッドがすっかり気に入ってしまったみたい」と話すレイチェルさんに、サムさんが帰ってきたらどうするの?と聞けば、「さあ、どうなることやら」と笑って肩をすくめるのみ。

 さて、出張から戻ったサムさんの運命やいかに。恐らく、一度ラルフとベッドで寝てしまえば、もう元に戻ることはできないはず……。そう確信する猫好きは、きっと私だけではないことでしょう。
>>つづきはこちら

    ◇

レイチェルさんのインスタグラム
https://www.instagram.com/rachel_wrong

レイチェルさんのウェブサイト
http://www.rachelhisakowright.com

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連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。


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PROFILE

仁平綾(にへい・あや)編集者・ライター

仁平綾

ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。

http://www.ayanihei.com
http://www.bestofbrooklynbook.com
photo by Naoko Maeda

前田直子(まえだ・なおこ)写真家

前田直子

24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
http://www.naokomaeda.net

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仁平綾

ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
http://www.ayanihei.com
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photo by Naoko Maeda

前田直子(まえだ・なおこ)写真家

前田直子

24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
http://www.naokomaeda.net

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