たすかる料理

味付けは塩のみ! 按田優子さんの「たすかる料理」チチャロン

  • 按田優子 写真・鈴木陽介
  • 2018年5月21日

按田優子さん

 「按田餃子」の按田優子さんの本『たすかる料理』から、たすかる自炊のコツをご紹介します。一つ目は南米の豚バラ肉料理「チチャロン」の作り方です。

    ◇

南米には、チチャロン・デ・チャンチョと呼ばれる皮つきの豚バラ肉を柔らかくなるまで火を通した料理があります。現地では、家の台所でも庭でも市場でも作られていて、チチャロン専門店もあるくらい一般的な食べ物です。

味もさることながら、なんといっても作り方が素晴らしい。味つけは塩のみ。火の通し方は状況によって様々。容器に入れて土窯でじっくり焼いても、鍋で作ってもいい。はたまた炊飯器だっていいのだから、どんな人だってぜひ自分の生活に合った方法で作ってみてほしい!

簡単でおいしい料理といわれるものはいろいろあるけれど、私にとっての簡単とは、あまり包丁とまな板で切るものがないことと、時間を気にしなくていいものです。うちには土窯も炊飯器もないので、中華鍋で作ります。

1、まず中華鍋に水をはり、塩を入れて豚を茄でる。

中華鍋に水をはり、塩を入れて豚を茹でる

塩加減も火加減もなんでもいいです。私はガス台の火加減ほどの微調整はしたくないので基準を野外に合わせます。薪だったら、そんな火力調整はないでしょう。それで、もうずっと茄(ゆ)でればいいのです。蓋はしてもしなくても、これはあなたのうちの自慢料理になるので好きに作ってください。

2、鍋のなかの水が減ってきたところで、再びたっぷりの水を注ぐ。

鍋の中の水が減ってきたところで、再びたっぷりの水を

ここでいっそのこと、茄で汁をすべて中華鍋からあげてしまい、 スープなどを作るためにとっておいてもよいです。その時は、新たに肉が浸るほどの水を入れ、塩も足します。

3、一時間くらい茄でると、おいしい茄で豚とスープができあがる。

肉がさらに柔らかくなり、水分が減ってきたら……

茄で豚は、
・スライスしてそのまま食べる
・麺や炊き込みご飯、炒め物、サンドイッチの具にする
スープは、
・野菜を入れてポトフ、豆や春雨を入れてスープにする
・麺を入れてラーメンやビーフンにする
・炊き込みご飯にする ……など食べ方はいろいろ。

チチャロンを作ろう、という決心から、今日はやっぱり途中で止めて、茄で豚とスープだけ取り出してビーフンにしました、と気が変わってもいい。味噌味にしても、醤油味にしても、トマト味でもカレー味でも、その時の気分で決めてみてください。按田餃子では、茄で豚とスープができたところで止めて、いろんなメニューに使います。

4、肉がさらに柔らかくなり、水分が減ってきたら、ここからがクライマックス。

水分と油の分量が逆転する瞬間が!

じーっと観察したくなる瞬間の到来です。水分と豚から出てきた油の分量が逆転し、今度は豚が自分の脂分によって揚げられていきます。皮つきの豚ならば、皮をはずしてわきで揚げるとカリカリに! 肉はほろほろに。こんがり表面に焼き色がついたらできあがり。
チチャロンは、真夏でなければ常温で5日間くらい持ちます。水分が飛んでいるので、茄で豚より日持ちがするのです。

こんがり表面に焼き色がついたらできあがり

私は別のお皿にのせて蓋をして、そのまま台所に放置します。
チチャロンの食べ方は、
・豆の煮込みに加える
・南米風のモツと豆と芋の煮込みにする
・その他、茄で豚とまったく同じ食べ方ができる

いかがでしょうか。この料理の道中、おそらく2時間くらいの間に、じつはたくさんのことができます。メールチェックに掃除に洗濯。誰かを家に招いて、おしゃべりしながら作って食べるのもいいと思います。

私は自分のやる気が一番信用ならないのです。ニンニクのみじん切りをはじめたと思ったら次に壁にペンキが塗りたくなっている頓珍漢です。だから、誰かにどちらかをお願いするか、べつの作業もこなせる料理を作るしか道がないのです。みんなはそんなことにはなっていないと思いますが……。

今までできなかったことが、急にできるようになるなんてそうそうない。自炊なんてしなかった頃の生活のペースを変えないで、自炊ができる作戦があるならいいと思いませんか? 私にとってはそれがチチャロンでした。ちなみに、この考え方に共感してもらえたら、豚肉の他にも、鶏肉だって豆だって魚だって同じです。 調理の過程でいくつ道草を摘めるか、見つけてみればいいのです。

(「三、自由に生きるための自炊」から)

BOOK

『たすかる料理』

『たすかる料理』(リトルモア)
按田優子 著 鈴木陽介 写真

自炊はわがままでいい。台所にしばられず、自分らしく食べて、生きるには?
東京・代々木上原で行列の絶えない「按田餃子」のしなやかな生活のすすめ。

「按田餃子」は、水餃子をメインにした小さな飲食店。女性がひとりでも入りやすく、キャッチコピーは「助けたい包みたい按田餃子でございます」。

「近所に引っ越して、毎日通いたい」というお客さんの声が続出。
本書では、今まで語られてこなかった、お店の成り立ちや厨房の裏側、そして調理のベースになっている按田さんの自炊の方法がひもとかれます。
詳しくはこちらへ
税込1728円

[PR]

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

PROFILE

按田優子(あんだ・ゆうこ)

菓子・パン製造、乾物料理店などを経て独立。その土地の気候を生かした保存食に興味があります。かつて仕事でペルーのアマゾンを訪れること6回。餃子屋を開くなんて夢にも思いませんでした。

今、あなたにオススメ

Pickup!