野村友里×UA 暮らしの音

UAさん「カナダの島では“新米の卵屋”」

  • 文・写真 UA
  • 2018年5月25日

  

フードクリエイティブチームeatripを主宰する野村友里さんと、歌手のUAさんが往復書簡を交わす連載「暮らしの音」、今回のテーマは「職業」です。

長いこと歌手として活躍しているUAさん。いま、カナダの島に暮らしながら、職業について思うこととは?

    ◇

>>野村さんの手紙から続く

友里

いいね、いいね。細胞単位でときめく感じ。すごく伝わってきた。
ほんと、あなたのお料理ってオーガニックアート(有機芸術?!)だから。
音楽と料理ってかなり似てるところあると思わない? 何てったって、どっちもライヴだもの。
リズムとタイミング、何よりフレッシュであること、これ共通項でしょ? そしてあとに残らない。

確かに私は、職業欄には「歌手」と書きながら、20数年を歩ませていただいてるわけだけど、これは幸運そのもの。目に見えず、手に触れられず、そして形に残らない「音」に従事できることは、この上なくありがたいことだと感謝せずにはいられない。歳を重ねるほどますます、ステージの上では、細胞が喜びの悲鳴をあげるのを止められずに、むしゃ震いするほど。

しかし所変われば看板も変わり、こちらカナダの島暮らしにおいては、そうだなあ、、新米の卵屋さんというところかしら。ファームとして提供できるのは今のところ、卵だけ。

また、土木土建屋の嫁でもあるのですが、ほとんど出る幕はない。
この春から、とれたて卵をうちのファームスタンドに並べるのが日課。廃材で作った小さな無人販売用の小屋は森の入り口にある。

とれたての卵

森の入り口にあるファームスタンド

雌鶏30羽、雄鶏2羽で、一日平均2ダースほどの卵がとれる。オーガニック、フリーレインジ、1ダースは6ドル也。「卵を入れる紙の箱を集めています」と小さく張り紙をしてあるので、ご近所のどなたかが頻繁にスタンドに置いておいてくれる。時折、花が生けてあったり、子供用の雑貨とか、イチゴの苗なんかが置いてあったりして、無言のコミュニケーションは温かい。

それにしても、毎日お昼頃、卵を頂戴しに鶏小屋に赴く時のあの高揚感、一羽ずつ収まるように区切ってある産み箱の黒い暖簾をめくって、そこに卵がある時のルンルンする感じは、一向に冷めない。とりわけ産みたての生暖かいのに触れる時は、ほとんど癒やしに近い。小屋の外でも陰を見つけて産む子もいて、それを見つける時の子供達の興奮ぶりときたらすごい。

  

そこで、その卵たち、希望としては洗いたくないんだよね。洗ったらもうその卵は孵ることはないから。でもまだうちの鶏小屋は素人で、ころりんと外に転げ出る仕掛けなどはなく、どうしても半分くらいは汚れてしまう。布で拭いても落ちない時は、一つずつそっと洗うのだけど、これがまたサイズこそ違えど、新生児を洗うような感じにも似て、身体は心地良い緊張と脱力する着地感が共存した、瞑想的な時間となる。

うちの鶏は、茶色いのがほとんどな中に、黒いのが数羽、そして1羽だけ白い娘がいるのね。この娘は、前に暮らした所で孵ったので想いもひときわ。それで「白雪ちゃん」なんて呼んじゃって。でも子供達は「豆腐」と呼んでる。しかし名前をつけるとこれがねえ、、辛くなる原因の一つにもなるのよね。だって卵を産まなくなった老鶏は、美味しくいただくことになるのだから。
そこらへん、ワタクシ人間の妙な観念のせいで、スーパーの鶏はOKだけど、うちの白雪(または豆腐)はちょっとね。。とは、子供達の手前、言いたくはない。特に、動くものはなんでも美味そうに見える主人にとっては、そんなセンチメンタルは通用しない。そう言えば、白雪ちゃんのパパもラーメン出汁になったんだっけ。

うちの主人は、出会った頃から「百姓でありたい」と言い、今も変わらない。それが転じてか、検索すると私の配偶者欄には、「マルチクリエイター」などという、何だかよくわからない肩書になっちゃってるのだけど、それって友里のいうところの、「フードディレクター」と似た感じ?笑。

スローライフは、忙しい

日本での拠点長野の村でも、カナダの島暮らしでも、田舎で自然を傍らに暮らす人々は、季節によって仕事が変化する場合も多い。田畑をし、宿を営み、大工仕事をする。収穫したもので加工品を作り、手仕事したものを店先や市場で売る。得意なことを近所の子供達に教えることもあったり、ご老人たちの庭や家のメンテナンスに赴く。冬には、薪を割って、雪かきを手伝い、はたまた家中の刃物を研いでみたり。シーズンオフには旅をして、地元に無いものを見つけて売ることもあろう。
いまどきのスローライフと呼ばれるものこそ、実際、年がら年中途切れなく忙しい。暦を通して仕事の色々を子供と一緒に行うなら、それは決して効率が良いとは言えないし、まさしくスローにもなるだろう。
歌手としてデビューしてからは10年ほど東京で暮らし、子育てもした。今思えばちょっといびつな暮らしをしながらも、様々な縁を通じて、そんな田舎暮らしを選ぶ人々に出会い続けた。その都度、何だか自分がとても無力なようで、恥ずかしい氣持ちになったものだ。

しかし、不器用な私は、未だに恥ずかしいことも多く、、。あなたに「才女」なんて形容されても、全く的を射ない感じ。もっと土と緑と、水と月と対話して、憧れるなら「菜女」と呼ばれてみたいわ、なんて。

森に生い茂るネトル

ネトル

さて、こちらは、森に、Nettle(ネトル)が生い茂ってきたよ。日本のイラクサとは種類が違うようで、西洋イラクサと言うのかな。これがまた、とんでもなく身体に良いらしい。鉄分やビタミンも豊富で、何よりアレルギー改善に絶大効果があるんだって。日本では昔はひどかった花粉症も随分軽減したのだけど、食が変わったせいか、こちらのヘイフィーバー(花粉症)にはひどく悩まされてるの。だからちょうどこの時期、手を替え品を替えネトルを摂取するべし!!なわけ。

こちらに越してきたばかりの頃、知らずに紫蘇と間違えちゃって、ためらうことなく触ってしまったからもう大変!電撃が走るほどの痛みにギャアッと叫んでしまった。そしてその後もズッキンズッキン2、3日は痛み続けたっけ。ほとんど火傷みたいな感じ。イラクサの別名は蕁麻(じんま)で、蕁麻疹の由来になってるというのも頷ける。

それからは、ゴム手袋に剪定バサミ、大きなカゴを片手に、決して触れないように採取する。ちょきりと切っては直接カゴに落とす。

  

乾かしてお茶にするも良し(ちょっと癖があるから私は番茶などに混ぜます)、炒め物はもちろん、スープやpestoにするのも素敵。うちのお氣に入りは、乾燥させたものを粉状にして、青海苔がわりにお好み焼きにふりかけるの。オツな風味もあって言わなきゃ誰もネトルだとは気づかない。

それにしてもその繁殖力といったらとんでもなくて、油断するとトレイルが埋もれてなくなりそうなほど、採取してるのも間に合わなくて、小道の脇のは踏んで倒してる。
いやまてよ、そこを家族総出で刈り取り続ければ、うちのファームのビジネスに成りうるかもしれない。。?

先週は、島の日本人の知り合いに株分けしてもらった蕗を、そのネトルの群勢のそばに植えてみたの。蕗もまた強い繁殖をするからね、畑に植えるのはちょっとね、半日陰が好ましいし、だったら森だなと。
上手くいけば来春には、ふきのとうに遭遇できるかな。うふふ。

蕗の葉

せっかく、奇跡の星に生まれ落ちたのだから、地球人として勤しんでいたい。
確かにロボットだって地球の産物なんだけど、人工のものより、神の創造物の方が断然面白いな。だって細胞が笑うのが聞こえるもんな。
そして歌える時には、どうか地球も喜んでくれるようでありたい。

さて、もうすぐライヴもあることだし、足湯して寝ようかな。

友里、本当に素敵な機会をありがとう。
あらためて思うけど、書くことって、とっても大事。
感受性の波打ち際から、頭と心への架け橋となる言葉を連ねられるあなたへの手紙。

おやすみ。

うーこ

    ◇

ライブ情報
5月27日(日)
GREENROOM FESTIVAL '18に出演
http://greenroom.jp/

6月2日(土)
頂 ITADAKI2018に出演
http://www.itadaki-bbb.com/2018/

ラジオ出演
α-STATION(FM京都)の番組『FLAG RADIO』のDJを担当
奇数月の毎週火曜日21:00~22:00
http://fm-kyoto.jp/blog/flag_radio/

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PROFILE

UA(うーあ)歌手

UA

1972年大阪生まれ。母方の故郷は奄美大島。1995年デビュー。1996年発表のシングル「情熱」が大ヒット。2000年、ブランキー・ジェット・シティを解散した浅井健一とAJICOを結成。同年、初主演映画「水の女」(テサロニキ国際映画祭グランプリ受賞作品)公開。2003年から放送されたNHK教育テレビ番組「ドレミノテレビ」に、歌のおねえさん「ううあ」としてレギュラー出演。2004年、数々の童謡・愛唱歌を集めた、ううあ名義アルバム「うたううあ」をリリース。2006年、菊地成孔とスタンダードジャズアルバム「cure jazz」をリリース。2010年、デビュー15周年企画カバーアルバム「KABA」をリリース。2016年、7年ぶりとなるオリジナルアルバム「JaPo(ヤポ)」をリリースした。また、2005年より都会を離れ、田舎で農的暮らしを実践中。現在はカナダに居住。4人の母でもある。
UAオフィシャルサイト:http://www.uauaua.jp/

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