東京ではたらく

渋谷区のセラピスト:鈴木愛さん(38歳)

  • 文 小林百合子 写真 野川かさね
  • 2018年6月7日

  

職業:セラピスト
勤務地:渋谷区
仕事歴:9年目
勤務時間:さまざま
休日:不定期

この仕事の面白いところ:さまざまな方の人生を見せていただき、そこに寄り添えるところ

この仕事の大変なところ:自分がどんな状況にあっても、常にフラットな状態を保たなければならないところ

    ◇

 セラピストとして活動を始めて9年ほどになります。「セラピスト」という言葉を聞き慣れない方は「どんな仕事?」と思われるかもしれませんが、なじみのあるものには「アロマセラピスト」というお仕事もありますよね。

 アロマセラピストは香りを使って人をリフレッシュさせたり、癒やしたりするお仕事ですが、私の場合はタロットなどのカード類を使った占いや、「アカシックリーディング」といって、「アカシャ」と呼ばれる人の記憶の中から必要な情報を読み取っていくセッションなどを行うことで、悩みや不安を抱えた方々の手助けをさせていただいています。

 もしかしたら中には「占いって怪しそう……」と思っている方もいるかもしれません。じつは私もこの仕事を始める前はそのひとりで(笑)。いわゆるスピリチュアル的なものに対しては懐疑的な見方をしていたんです。

 始めて占いに触れたのは28歳のとき。私は山形から上京して東京の大学に通ったのですが、文学や芸術、音楽など、興味のある分野を学んだり、サークル活動をしたりして、とにかく楽しく、充実した学生生活だったんですね。

仕事場はマンションの一室で、完全プライベート。「恋愛や仕事、結婚など具体的な悩みを持っている方もいれば、漠然とした生きづらさを話しに来る方もいます」

 でも、いざその楽しい大学生活が終わってしまったら、「将来こういう仕事がしたい」とか「こうなりたい」という具体的な目標を持っていないことに気づいてしまって。人から声をかけてもらった事務の仕事をしたり、まあ言ってしまえば、流れに乗ってなんとなく生きていたという感じです。

 占いに出会った当時は、ちょうど仕事を辞めて、宙ぶらりんなときでした。一向に夢らしい夢も見つからないし、「自分って何のために生きてるんだろう?」なんて、ほとほと自分が嫌になっていた時期だったと思います。

 そんなとき、たまたま好きな作家さんがご自身の占い体験を書かれた本を手に取ったんです。彼女が長らく通っているセラピストの方との対談集だったのですが、自分が尊敬している作家さんだったこともあって、「へー、占いかあ」と。そこはファン心理も働いて、「じゃあ自分もこの人に占ってもらおうかな」ということで、半ばノリで人生初の占いを受けることにしたんです。

 今でも忘れられないのですが、とにかく衝撃的だったのは、そのセラピストさんと対面したときの彼女のひとこと。「『当ててみやがれ』と思っているんだったら帰ってもらえます?」と(笑)。その頃はまだ「占いってどうなの?」と内心思っていたので、その気持ちを全部見透かされていたんですね。

タロットカードを使ったリーディングも知りたいことによって方法はさまざま。「過去、現在、未来」を見る方法、「現在の状況、本音、深層心理」など本人の心の内を見る方法なども。

 それで、これは「ナメてかかってはいけないぞ」と。そのときは、当時悩んでいた「この先の人生どうなるんだろう?」とか、「自分は何のために生まれてきたんだろう?」みたいな漠然としたことを質問したのですが、驚いたことに「あなたは占い師になりますよ」と言われまして。

 思いがけないことに「へ?」という感じだったのですが、「あなたのアカシックレコードにはちゃんとそう書いてあるから」と。ここで少し専門的なお話になりますが、アカシックレコードとは、簡単に言うと潜在意識の集合体のようなもので、その人の輪廻(りんね)転生における記憶のすべてが刻まれていると言われています。

 本来、人間誰しもがそのアカシックレコードにアクセスして、生まれる前の記憶や未来の記憶を読めると考えられていますが(実際に子どもが胎児期のことを話したりすることがありますよね)、瞑想(めいそう)などの鍛錬を積んだセラピストたちはより的確にその情報を読めるということで、近年ではタロットなどのカードリーディングと並んでアカシックリーディングという手法も主流になりつつあるんです。

 もちろん当時は私もアカシックレコードなんて聞いたこともありませんから、「へー、私、占い師になるんだ」程度に軽く聞き流していたのですが、ここからが不思議で、その後、別のセラピストの方々にも軒並み「君は占い師になるよ」と言われ続けて(!)。

悩みの内容はもちろん、相手の表情や口調からも心情を読み取っていく。「優しくアドバイスすることもあれば、この人には強く言ってあげた方がいいと思った時はガツンと行きます」

 偶然にしては出来過ぎているなと思っていたら、みなさんが「だって、そうなるって決まってるみたいだから」と(笑)。それで、お世話になったセラピストさんのうちのひとりが、「とにかくやってみたらいいじゃない」とおっしゃってくださって。

 その方に直接ご指南をいただいたり、占いのイベントや展示会でブースを出せるようにサポートしていただいたりするうちに、あれよあれよという間に独立することになりました。正直「やりたい!」と強く思っていたわけではないのですが、本当に何かに導かれるようにしてこの世界に入ってきたという感じです。

 最初の頃は本当に見よう見真似で、クライアントさんのアカシックレコードを正確に読めているのかどうか不安もありました。うまく言葉では表現できないのですが、それはあくまでも直観の世界の話ですし、この先の未来のことだったりもするので、その場で「ハイ、大当たり!」という風にはならないんですよね。

 じゃあどうやって自分の資質を知るかというと、それはお客さんが繰り返し来てくださるかどうかということに尽きると思います。これはこの仕事を始める時に先輩から言われたことですが、「一度来たお客さんが数年後に戻ってきてくれたら自信を持っていい。それはあなたのリーディングが的確だったということだから」と。

 占い師さんの多くがそうだとは思いますが、やっぱり最初は大変で、私もそれだけでは食べられず、飲食店などでアルバイトをしながら細々と活動をしていました。だから徐々にリピーターさんが増えてきたなと実感できた時はうれしかったですね。それはそのまま自信にもつながっていきました。

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PROFILE

小林百合子(こばやし・ゆりこ)編集者

写真

1980年兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、アラスカ大学フェアバンクス校で野生動物学を学ぶ。出版社勤務を経てフリーランスに。山岳・自然をテーマに雑誌や書籍の編集を手がける。2010年に女性向け登山雑誌『Hutte』(山と溪谷社)を立ち上げ、独自の視点で登山や自然の楽しみ方を提案した。著書に『山と山小屋』(野川かさねと共著、平凡社)、『山登りのいろは―たのしい登山のヒント集』『一生ものの、山道具』(ともにホシガラス山岳会著、パイ・インターナショナル)など。

野川かさね(のがわ・かさね) 写真家

写真

1977年生まれ。神奈川県出身。雑誌、書籍で活動するかたわら、ライフワークとして山を撮り続ける写真家。著書に『山と写真』(実業之日本社)、『山と山小屋』(小林百合子と共著、平凡社)、『山登りのいろは―たのしい登山のヒント集』『一生ものの、山道具』(ともにホシガラス山岳会著、パイ・インターナショナル)など。

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