朝日新聞ファッションニュース

マメ 黒河内真衣子さん「日常に寄り添う服、ふくよかに」

  • 2018年6月14日

モードの新星

1985年生まれ=岡田晃奈撮影

 強さと優しさ。はっとするような大胆なフォルムや素材使いと、繊細な手仕事。マメ(Mame Kurogouchi)の服には、相反する要素が独特の存在感で共存している。デザインを手掛ける黒河内真衣子は「クローゼットに残る服。誰かの記憶に残る服が作りたい」と話す。

 たとえば今年秋冬の新作では、籠のような柄のケミカルな赤いレースのトップスと畳の目のような網目のニット、そしてアヤメの柄のシャツを組み合わせた。日本での工芸指導活動でも知られるフランスのデザイナー、シャルロット・ペリアンの展覧会の図録から着想を得たという。

2018年秋冬作品=大原広和氏撮影

 ペリアンが現在の日本を訪れたら、何に興味を持つか。「そう思って身の回りの美しい物に目を向けてみた」。ぺらぺらの買い物袋と荒々しいわら細工など、異なる質感の意外なバランスを探し、色のヒントは領収書の緑や事務所前に散る落ち葉から得た。素材は工場と組んで独自に作る。

 「自分にとっても面白く、着る人の様々な日常に合うような服。包まれるような素材感があり、しわになりにくく、仕事で新幹線を降りて靴だけ変えたらそのままディナーにも行けるような服を目指した」

2018年秋冬作品=大原広和氏撮影

 ブランド名は学生の頃からのあだ名から。「体が小さくて丸いので。豆のように、ぎゅっと詰まった創作をという思いも込めた」

 自然豊かな長野育ちで、子供の頃からデザイナーになるのが夢だった。器や着物を愛する祖母の美意識に影響を受けたが、ファッション情報は皆無だった。「そのせいか、自分の感覚だけが服を生み出す、というやり方が一度もぶれたことはない」

 文化服装学院卒業後、三宅一生率いる三宅デザイン事務所に入社。筒状のニットにハサミを入れて作る「A-POC(エイポック)」などに携わった。「ものづくりのベースを学んだ。デザインを形にするまで何度も試作を繰り返し、決して諦めなかった三宅さんの姿勢を尊敬します」という。

 ブランド設立8年目で、国内外の卸し先は約80。今年3月、パリ・コレクションにデビューした。いま世界で注目される日本の若手ブランドの筆頭だ。

 他の多くのブランドのように青山辺りではなく、緑がうっそうとした世田谷に事務所を構える。「じっくりと自分たちの仕事をしていくため。私にとって意味や価値のあるものを提案し、そのストーリーに着る方が興味を持って頂けたら。スタンスを変えず、ふくよかな創作を続けていきたい」(編集委員・高橋牧子)

生まれ変わる、日本の伝統
ファッションエディター・軍地彩弓(ぐんじさゆみ)さん

 マメの服には、現代らしい、こびない色気があるように感じます。機能性やゴージャスさではなく、自然体で大人っぽくて、独特の女性らしさがある。まさにデザイナー本人そのもの。こういう服はありそうでなかった。見る人の情動につながる服。私が着ていると、男性にも女性にもよくほめられます。
 日本のアイデンティティーが入り込んでいることも魅力です。全国各地の素材工場と向き合い、裂き織りや刺繍(ししゅう)など、伝統技術を用いて、現代に生まれ変わらせています。黒河内さんには、川久保玲さん、サカイの阿部千登勢さんに続き、世界で有名な日本女性になって欲しい。

     ◇

 モードの世界で頭角を現したデザイナーを紹介します。随時掲載します。

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