急がない校風が、利他の心を育てる ~洛南高等学校附属中学校校長~[PR]

  • 2018年6月19日

  洛南高等学校附属中学校 岩﨑順一校長(左)と、鈴木 顕 アエラムック教育編集部副編集長

 弘法大師の「綜芸種智院(しゅげいしゅちいん)」がルーツとなる洛南。中学校の岩﨑校長は、洛南は進学校でもエリート校でもないと語る。「33歳になった時に幸せでいられる教育を」という基本方針に基づいた急がせない教育がどのような生徒を育むのか。その秘密に迫る。

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人間教育の基本は掃除とあいさつから

鈴木 先ほど校内に入る時、「校門一礼」という看板が目に入りました。この学校では礼儀作法を非常に大切にされているようですね。

岩﨑 本校には、学校は道場であり修養の場という考え方が根底にあります。普段の生活のなかで特に指導を徹底しているのは、掃除とあいさつです。

鈴木 洛南は、ルーツをたどれば弘法大師に行き着くという大変歴史の長い学校ですね。

岩﨑 約1200年前に弘法大師が開いた庶民のための教育機関、「綜芸種智院」が本校の源流です。それ以前は、教育を受けることができたのは貴族の子弟ぐらいしかいませんでした。お大師さんは、この国の将来のためには庶民も知識を持つことが大切だと考えたのだと思います。

鈴木 それではまず、教育の理念と特色を教えてください。

岩﨑 お伝えしたいのは、洛南は進学校でもエリート校でもないということです。そう名乗ったこともありません。生徒たちへの指針としているのは「自己を尊重せよ」「真理を探求せよ」「社会に献身せよ」という三つで、これは仏教の根本的な教え「三帰依」を現代の言葉に置き換えたものです。

鈴木 素晴らしい教育理念だと思いますが、中学に入ったばかりの生徒に真理の探求や社会への献身といっても、初めは難しいのではないですか。

岩﨑 もちろんそうです。だからこそ、掃除やあいさつといった形から指導しています。もし自分がよそへ行った時、掃除が行き届いていれば気持ちがいい。あいさつをしてくれたら嬉しいだろう。自分を高めることで他者を喜ばせることができる、社会を良くしていくことも可能なんだと実感してほしいからです。そのような利他の心で周囲に目をやれば、自分に必要な力や足りないものが見えてきます。誰かの役に立ちたいという気持ちは、学びの原動力にもなるはずです。

対話を通じて思考力を伸ばす伝統の授業

鈴木 学習のうえで特徴的なカリキュラムはありますか。

岩﨑 中学では1学年上の内容を教える先取りを基本としていますが、生徒の負担が大きくなるのでそれ以上進度を速めることはありません。高校では最難関大学・学部をめざす「空パラダイム」と、その他の難関大学をめざす「海パラダイム」とにコースが分かれています。附属中からの生徒は原則として「空」に進学していますが、高校から入学の生徒は出願時の希望に基づいて、適性をはかって「海」または「空」に分けています。

鈴木 あくまで自主性を重んじるということですね。とはいえ大学受験で洛南は例年際立った実績を上げていますので、学習にはそれなりの厳しさもあるのではないですか。

岩﨑 もちろん、しっかりやるべきことはやらせていますが、オーバーワークにはならないよう気を配っています。学校の勉強だけやっていれば希望の大学に進めるだけのものは与えているつもりですので、放課後は部活動に打ち込む生徒も多いですね。

鈴木 2020年度から大学入試が新テストに変わる予定です。何か対策をしていますか。

岩﨑 約30年前に大学入試センター試験が始まった時も、本校では一切特別なことをしていません。私はもともと数学科の教諭ですが、当時から授業は記述問題が中心でした。答えよりもプロセスを重視し、生徒たちと教師が議論をしながら検討を進める。最近はそれをアクティブラーニングと呼ぶようですが、本校では昔からそれが基本的な授業スタイルです。公式だけを覚えている生徒は、どんな問題でもそれをあてはめて解こうとしますが、考え方の根本がわかっていれば、公式はテスト中に自分で導き出すこともできます。生徒たちには、「どう解くのか教えてください」ではなく、自分でしっかり考えたうえで「なぜこの公式が使えるのですか」と質問するようにと指導しています。

鈴木 そうしたやり方は、思考力や表現力を重視し、記述問題を導入するという新テストの方向性とも合致していますね。昔ながらの教育を続けることが、結果的に新テスト対策になっているというのは興味深いです。

33歳になった時に幸せでいられる教育を

鈴木 中高一貫校では高校募集をしない学校もありますが、洛南では高校入学の生徒、中学から6年間学ぶ生徒、そして今年度からは附属小学校卒の生徒も加わっています。指導のうえで難しさはないですか。

岩﨑 担任の負担は増えますが、生徒たちにとっては多様な背景を持つ仲間と一緒に学ぶことはプラスの影響も大きいと思います。ある分野で早くから熟している子もいれば、後から熟す生徒もいます。根本は同じ人間、違った文化で育ってきた人とも尊重しあって生活することで、生徒たちが得るものは少なくないはずです。

鈴木 学校行事で特徴的なものはありますか。

岩﨑 最も洛南らしいといえば、お大師さんの月命日(毎月21日)に行う「御影供」でしょうか。この日は通常の授業は一切なく、生徒たちは講堂に集まって校長の話を聞き、その後は教室で作文を書いて下校します。家に帰ったら好きに遊んでいいというのではなく、内省し、自己を客観的・批判的に見つめる時間にしなさいと指導しています。こうした経験を通して養われる力は、すぐに目に見えるものではないかもしれません。しかし将来きっと大きな差として表れるものだと思っています。

鈴木 生徒たちの気風・気質はいかがですか。

岩﨑 洛南には、「生徒が33歳になった時に幸せでいられる教育を」という基本方針があります。急がせないことが本校の特徴であり、だからでしょうか、生徒も急がない生き方をしています。高校から入学された生徒でしたが、高校時代からバスケットボールに打ち込み大学で日の丸を背負った生徒がいました。しかし彼は大学を出てから高校の数学・理科を勉強し直し、その後5年をかけて医学部に進学しました。医学部では常にトップクラスの成績を維持し、国家試験にもストレートで合格。念願だった医師になったのは、ちょうど33歳の時です。

鈴木 洛南はエリート校ではないという冒頭の言葉の真意がわかりました。それは狭い意味でのエリート教育よりもずっと素晴らしいと思います。

  

進学は生徒の望む未来を実現するための手段

鈴木 先ほどコース選択では生徒の自主性を重視するという話がありましたが、それは大学選びにおいても同じですか。

岩﨑 それが基本です。ただし、あまりにひとつの方向に考えが凝り固まっていると思えば、違う道を提案することもあります。ある時、家庭の事情で自分は絶対に現役で国公立に行かなければならないという生徒がいましたが、その時点の成績では希望の大学に届きそうもありませんでした。この生徒に対しては、編入試験を受けるという方法をアドバイスしたことがあります。実際に彼は3年次から第一志望の大学に編入し、そのまま大学院まで進学しました。

鈴木 そのエピソードは、先ほどの33歳で医師になった卒業生の話とも通じますね。はじめに進学ありきではなく、長い人生のなかで彼や彼女たちにとって何が最善かを一緒に考える。それが洛南のやり方ということだと思います。

岩﨑 その通りです。生徒の望む生き方を応援するというのが私たちの変わらぬ方針ですから、大学で専門的な学びを受けたいという生徒には、全力で進学のサポートをします。一方で学業以外の分野に秀でた生徒がいれば、その力を伸ばす手助けをしています。

鈴木 最後に、受験生に向けて学習のアドバイスをお願いします。

岩﨑 処理能力で人間は決してAIに勝てないし、自分の頭で考えることのできない人は機械に仕事を奪われていくと言われます。たとえば算数では解き方を覚えるだけでなく、なぜその解き方でいいのか人に説明できることが大切で、それには国語の表現力も必要です。現在の世の中を見ていると、勉強ができることだけが強みという人には、なかなか生きづらい時代だと思います。トータルな学力と同時に、人間力をバランス良く伸ばすよう心がけることが、結果的に望む未来につながるのではないでしょうか。

鈴木 洛南の独特な教育方針には、受験生を持つ保護者にとっても役立つヒントが多くありそうです。どうもありがとうございました。

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洛南高等学校附属中学校
岩﨑順一 校長
いわさき・じゅんいち/1950年生まれ。信州大学工学部卒業後、洛南高等学校で数学教諭に。2009年同校生徒部長、13年同副校長を経て、15年から洛南高等学校附属中学校校長。

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