てまひま

“あえて”少ない店員数で、“あえて”いい加減な接客、文京区のカフェ・ひだまりが心をつかむ理由

  • 文・西島恵/写真・島村緑
  • 2018年7月12日

  

デジタルの進化が進み、世の中がどんどん便利になっている昨今。めんどうなことはすべてロボットが私たちの代わりにやってくれるという時代もくるのでしょうか。もちろん、歓迎すべき未来ではありますが、一度、足を止めて考えたいこともあります。

この時代にあって“てまひま”かけて毎日を過ごしている人がいます。便利の波に乗らない彼らの価値観のなかには、私たちが忘れがちなこと、見落としがちなことが少なくありません。そんな“我が道を貫く”専門家の元を訪れ、生きるためのヒントを得る企画。今回は、庭の家のカフェ・ひだまりのオーナー、伊藤晴康さんです。

親子が気兼ねなくくつろげる空間を。都心の真ん中にある癒やしのカフェ

文京区千石に、知る人ぞ知る人気スポットがあります。それは庭の家のカフェ・ひだまり。もともと民家だった家屋をリノベーションし、カフェ兼レンタルスペースとしてオープンしたのが2017年1月のこと。以来、親子連れやご近所さんが集う憩いの場となっています。

  

「このあたりは近隣に小中学校や保育園、幼稚園が多いものの、親子でくつろげる場所が意外と少ないんです。ですから小さなお子さんと親御さんがのんびりと交流できる場を作ったらどうかなと思ったのが、ひだまりを作る最初のきっかけですね」

と語るのは、オーナーの伊藤晴康さん。

  

広々とした庭には大きな梅や桃の木が立ち、芝生の上には椅子やテーブルも並びます。子どもが庭でしゃぼん玉を吹いたり、友達と走り回ったりしている間、親御さんは友だち同士、カフェでゆっくりおしゃべり。

「都会で暮らす子どもにとっては、庭でしゃぼん玉を吹くことさえ目新しい体験。近くの幼稚園や保育園のママさん会が貸切で使われることも多いんですよ」

  

スタッフもお客さんもゆったりしたペースで。居心地がいい“ひだまり時間”

 

取材した日も、すでにお客さんで席はいっぱい。みなさんくつろいだ様子で、おしゃべりを楽しんでいます。こうした雰囲気づくりは、スタッフの力が大きいとのこと。

「うちのスタッフはいい意味で “いい加減”な接客をしてくれるんです。マニュアル的な接客ではなく、親しみをもって接客することがお客様とのいい距離感につながっている。ですからスタッフの顔を見にお店に来てくださる方も多いですし、忙しそうだと『配膳、手伝おうか?』なんて言ってくださる方もいるんですよ」

  

現在、スタッフは総勢3名。カフェとしては驚くほど少ない人数ですが、基本的には一人で接客と調理を担当しているそうです。

聞けば、ある程度の人数を確保していたときもあったのですが、そうするとすべてのことがテキパキ進んでしまい、少し“慌ただしい雰囲気”がでてしまったのだそう。お客さんの回転があがってくると、周囲の雰囲気を察して、『早く帰ったほうがいいのかな?』という気持ちになりますよね。

ところがある日、伊藤さんが助っ人として皿洗いをしていたとき、やむをえず1人になったスタッフの様子を見ていたときのこと。満席で座れなかったお客さんが『ゆっくりでいいよ』と縁側に座って待っていたりと、帰ってしまう方がほとんどいなかったのです。

「そこで、お互いにゆったりした時間で提供し、ゆっくりした時間を過ごしていただくのがいいのかな?と思い、今はあえて少ない人数で運営しているんです」

周りの人の提案がそのままひだまりの変化につながっていく

  

お店の看板メニューは自家製焙煎黒千石茶(500円)と三色団子(300円)。この他に日替わりのケーキ(600円)などもあり、お客様からのリクエストでセットメニューを作ったりと、日々ブラッシュアップしているといいます。

instagramの3/24の投稿写真より

伊藤さん自身はオーナーでありながらも、お店へのこだわりはほとんどない。先ほどのメニューの話のように、お客さんやスタッフから提案を受けて、「じゃあ、やってみましょう」ということが多いそうです。

「こんなことしてみたらどう?」「こんなメニューもひだまりに合うんじゃない?」といった提案は日常茶飯事。実際に、お店の入り口そばのカウンターに販売スペースを設けていますが、これは地域の方からの要望によるもの。個人の作家さんの作品を販売したり、お子さんが喜ぶおもちゃや駄菓子を置いています。

イベントの相談も少なくありません。「将来カフェを開きたい」という方の一日体験カフェをはじめ、生け花、書道、占いなどさまざまなジャンルのイベントを開催。どれも多くのお客さんが集まったとのこと。

お店に置かれたイベントのフライヤーを見て「実は私もこういうことがやりたかったんです」という会話がうまれ、そこから縁が広がっていくのです。

どんな提案にも耳を傾け、実行してみる。そのスタンスの根底にあるのは「人が好き」という思い。

  

「やっぱり人が好きですし、“ご縁はお金じゃ買えない”というのが私の信条なんです。ひだまりのことを考えてくださる人たちが周りにたくさんいるからこそ、ときには甘えたり、頼らせてもらったりしながらやらせていただいています。

この先、この場所がどうなっていくのかはまったくわかりませんが、たぶん一生完成することはないんじゃないのかな。その変化を楽しみながら、続けていきたいですね」

システマチックに効率的に売上を伸ばしていくお店がある一方で、“ゆっくり”と“変化”を受け入れながら成長している。できそうでできない“てまひま”のかけかたが、「ひだまり」にはありました。

INFO/庭の家のカフェ ひだまり
住所/東京都文京区千石2丁目44-11
営業時間/営業時間:11:00〜16:00(火、金〜19:00)
定休日/月曜休
HP/http://www.hidamari.tokyo

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