川島蓉子のひとむすび

<46>外苑前でヨガと、ようかん。期間限定「TORAYA AOYAMA」

  • 文・川島蓉子 写真・鈴木愛子
  • 2018年7月18日

外苑前の「Itochu Garden」の中にできた「TORAYA AOYAMA」

東京・港区外苑前の「Itochu Garden(以下、イトウチュウ ガーデン)」の一画に、「TORAYA AOYAMA(以下、トラヤ アオヤマ)」が登場しました。ここは、東京オリンピック・パラリンピック開催後の2021年1月(予定)までの期間限定ショップ。いくつかの実験的な試みが盛り込まれた、ちょっとユニークなお店です。

外苑前のイチョウ並木の横にある複合商業施設「イトウチュウ ガーデン」は、レンガ造りの低層の建物に、さまざまなお店が入っています。1980年に作った躯体(くたい)を生かしながら、東京オリンピック・パラリンピックを前に化粧直しをし、2021年3月までの期間限定施設として、リニューアルオープンしました。

その「イトウチュウ ガーデン」の地下1階中央に位置しているのが「トラヤ アオヤマ」ですが、青山通りから、入り口の上部に刻印された「TORAYA AOYAMA」のモダンな文字が見え、惹かれて近づくと「とらや」ののれんがかかっていて、きりりとしたかっこいいたたずまいです。

店内に入ると、伝統に裏打ちされた上質さはそのままに、従来の「とらや」より、少しカジュアルでアクティブな空気が漂っています。「青山は、野球場やラグビー場、テニスコートといった施設が数多くあって、スポーツを好む人が集うところ。そういった方々に気軽に寄っていただいて、和菓子や羊羹(ようかん)を楽しんでもらおうと考えたのです」と取締役の増田久子さん。この軽やかさや気楽さは、そんなところに根ざしていると、腑(ふ)に落ちました。

  

お店が掲げているテーマは「スポーツのおともに 羊羹を」。ちょっと意外な組み合わせですが、羊羹には低脂質で高糖質という特徴があり、手軽なエネルギー補給に向いています。増田さんは、「以前からスポーツと羊羹のかかわりについては、テニスプレイヤーの方や、セーリングチームの方々に羊羹を提供したりと、さまざまな試みを重ねてきましたが、今回はまさにスポーツの祭典であるオリンピックに向け、最適な場所でその思いをかたちにしていきたいと考えています」と言います。

小形羊羹は「スポーツのおともに」適した一品

言われてみれば、とらやの小形羊羹は、手のひらにおさまるスティック状のかたち。持ち歩きに便利で、包装もテープを引っぱるとくるりとむけるので、開けやすくて食べやすい。小豆、砂糖、寒天とシンプルな素材なので、甘さがすっきりしていて、すぐ身体に入っていく気がする――スポーツのお供として適していると聞いて納得です。そう言えば、三浦雄一郎さんがエベレスト登山で、とらやの小形羊羹を持参しているというエピソードを思い出しました。

すっきりした店内は、手前の物販コーナーと奥のカフェスペースが複合した空間に。とらやの品々がそろっています

お店は奥にカウンターがあって、手前には大きなテーブル状の什器(じゅうき)が置いてあり、小形羊羹をはじめ、定番の羊羹や季節羊羹、水羊羹など、とらやの品々が並んでいます。右手は窓に沿ってベンチシートと机、椅子が並んでいて、喫茶として利用できるようになっている――物販と喫茶との複合ショップなのです。

セルフサービス形式なので、注文した品をカウンターで受け取るのですが、お盆はシンプルな木で、器類は簡素でカジュアルなものになっています。銀座や伊勢丹新宿店などにある「虎屋菓寮」の優雅でゆったりした気分とは一味違う、上質な手軽さも新鮮です。

カジュアルなしつらえで供されるかき氷

そして、暑い季節に向けての目玉商品は、オリジナルのかき氷です。「『宇治金時』は、とらやの定番的存在であり、お薦めのひとつです」と増田さん。粒あんと宇治茶を使用した抹茶蜜と、上に乗ったふ焼きの組み合わせが絶妙で、シャキッとしているのに、ふわっと溶けるかき氷をいただくと、吹き出る汗が一気におさまリます。他に、紀州産の南高梅と白あんの「梅氷」や、レモン蜜と白あんの「レモン氷」もあって、さっぱりしていながら、白あんの風味がしっとりと――こちらは、この店だけの限定商品です。

ここ数年、かき氷がはやっていて、洋風やエスニックなど、バラエティが広がっていますが、やはり伝統に根ざした日本のかき氷は別格と感じました。

その他、あずき粥やスープなど、小腹にたまるものも用意されています。季節限定の「茄子(なす)と大麦の冷たいスープセット」は、夏野菜の茄子に大麦、青大豆をたっぷり加えた冷製スープ。ミョウガや大葉を薬味に、ショウガが隠し味に使われています。パンと付け合わせがセットになっているので、軽いランチやおやつにもぴったりです。

季節の上生菓子をいただくのも一興です

まずは8月から、朝のヨガ教室をスタートします。店内の中央にある什器は可動式になっているので、動かしてスペースを作り、10名程度でヨガをやるというのですから、ちょっと魅力的。終了後に、あずき茶と小形羊羹をいただくという特典が付いています。

店長を務める菅野千恵子さんは、ヨガのインストラクターの資格を持っている方で、「羊羹はすべて天然素材だけでできているもの。ヨガで身体をリフレッシュした後にいただくと、身体にすっと入っていく気がします」という言葉に説得力がありました。ヨガをやって心身を整え、すっきりした気持ちで食べる羊羹は、どんな味わいだろうと好奇心が湧いてきます。「スタートはヨガですが、今後はさまざまなスポーツとの取り組みを考えています」(増田さん)とのことです。

東京オリンピック・パラリンピックに向けて、どう進化していくのかが楽しみです。

■TORAYA AOYAMA
東京都港区北青山2-3-1 Itochu Garden 地下1階



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PROFILE

川島蓉子(かわしま・ようこ)

川島蓉子

伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。
1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。多摩美術大学非常勤講師。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。
ifs未来研究所 http://ifs-miraiken.jp

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伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。
1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。多摩美術大学非常勤講師。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。
ifs未来研究所 http://ifs-miraiken.jp

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