東京ではたらく

ヨガインストラクター:河野紗世さん(32歳)

  • 文 小林百合子 写真 野川かさね
  • 2018年7月19日

  

職業:ヨガインストラクター
勤務地:都内各所
仕事歴:7年目
勤務時間:不規則
休日:不規則

この仕事の面白いところ:さまざまな人とつながれること
この仕事の大変なところ:心身ともに常に自分を整えておかなければならないところ

    ◇

都内で会社員として働きながら、休日を中心にヨガのインストラクターとして働いています。知人の美容院で出張教室を開いたり、都内のヨガスタジオでクラスを持ったり、教える場所はさまざまです。

出身は京都です。父が彫刻を生業としていたので、小さい頃は父がアトリエを移すたびに引越しをして、関西を転々としていました。

物心ついた頃から父が彫刻を作るのを見ていて、小学生くらいになると簡単な手伝いなんかもしていました。人体をモチーフにした作品を作るときにはモデル役をしたこともありましたね。

そんな姿を間近で見ていたせいか、私も気づけば絵を描いたり、物を作ったりすることが好きになって、高校時代には自然と父と同じ、芸術の道に進みたいと思うようになりました。

美術大学に進学したいという希望は随分早く固まっていたと思います。当時はとにかく芸術を学びたいという気持ちで、将来アーティストになりたいとか、その道で絶対食べて行くぞという具体的な目標は持っていなかったと思います。

幼少期にクラシックバレエを習っていたこともあって、体は柔らかいほう。「ヨガを続けていると体が硬い人も徐々に柔らかくなっていきます。大切なのは焦らないこと」

父は芸術の道一本で生計を立てていましたが、それはかなり厳しい道だということは大学を卒業する頃に感じ始めました。そんなことは父は重々承知だったと思いますが、美術大学への進学については賛成してくれました。

東京の大学に進学して彫刻を専攻したのも父の影響が大きかったと思います。大学ではとにかく製作漬けの日々で、気づけばあっという間に4年生。周囲は大学院に進んで芸術家の道を目指したり、美術館の学芸員を志したり、教員免許を取って美術教師になる人もいました。

私はというと、就職活動もほとんどせず、「この先どうやって生きて行こうかな?」という感じで。彫刻は大好きでしたが、「その道一本では到底生きていけない」ということも薄々感じていました。このままじゃ生活していけないぞ……。はっきりわかっていたのは、それだけですね(笑)。

平日は古材を扱う会社の社員として勤務。「仕事もですが、とにかく上司や仲間が大好きで。ヨガインストラクターは副業になりますが、それも快く認めてくださる会社の方々には感謝しかありません」

そんなときに偶然見つけたのが、アメリカから古材を輸入して販売したり、それを使って店舗の内装を手がけている会社の求人でした。もともと古い物が好きで、自分の作品作りにも古材をよく使っていたので、これは面白い仕事かもしれないなと。

最初はアルバイトからのスタートでしたが、どうせ働くなら好きなものに関われる仕事がいいと、その会社でお世話になることにしました。仕事内容は扱う古材の在庫管理やショールームでの接客、ディスプレイの企画などさまざま。

大学時代は一人で作品作りに没頭していたので、たくさんの人と関わりながら仕事をするのはとても刺激的で、「働くって楽しい!」と思ったことをよく覚えています。

店舗作りの仕事などでは、自社の古材を使って家具や雑貨を作る仕事もあったので、そういう場面では美大で培ったもの作りのスキルが役立ちました。木材にペンキを塗ったり、家具を組み立てたり、手を動かすことは得意だし好きな作業ですから、本当にいい会社に巡り合えたなあと思っていました。

休暇にはヨガのワークショップ合宿に参加するなど、より深い知識を身につける勉強も欠かさない。先生の話はしっかりノートを取って、自分のクラスにも役立てている

でもその半面、パソコンを使って在庫管理をしたりといった事務作業は苦手で(笑)。そういう作業が続くと「ああ、体を動かしたい!」と思ってしまうんですよね。そんなときちょうど実家の母がヨガをやっているということを聞いて、じゃあ私もやってみようかなと。それがヨガを始めたきっかけでした。

最初は近所のホットヨガスタジオに通いました。純粋に体を動かすのが気持ちよくて、事務作業で凝った体がほぐれていく実感がありました。でも1年間ほど続けているうちに、体だけでなく心の変化が生まれていることに気づいて。

言葉にするとしたら、「心と体はつながっているんだな」ということを体感できたと言いますか。例えば、体が凝り固まっていると気持ちもだんだん暗くなってくるんですよね。体をほぐせば心も楽になって、前向きな気持ちになれる。心が健康になると体調も不思議とよくなるというか。

そういうことを体験するうちに、「もっと深くヨガのことを知りたい」という気持ちが強くなってきました。純粋なアクティビティーとしてのヨガだけでなく、その本質的な部分、哲学のようなものを学んでみたいと思ったんです。


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PROFILE

小林百合子(こばやし・ゆりこ)編集者

小林百合子

1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

野川かさね(のがわ・かさね) 写真家

野川かさね

1977年神奈川県生まれ。山や自然の写真を中心に作品を発表する。クリエイティブユニット〈kvina〉、自然・アウトドアをテーマにした出版・イベントユニット〈noyama〉の一員としても活動する。作品集に『Above Below』(Gottlund Verlag)『with THE MOUNTAIN』(wood/water records)、著書に『山と写真』(実業之日本社)など。
http://kasanenogawa.net/

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小林百合子(こばやし・ゆりこ)編集者

写真

1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

野川かさね(のがわ・かさね) 写真家

写真

1977年神奈川県生まれ。山や自然の写真を中心に作品を発表する。クリエイティブユニット〈kvina〉、自然・アウトドアをテーマにした出版・イベントユニット〈noyama〉の一員としても活動する。作品集に『Above Below』(Gottlund Verlag)『with THE MOUNTAIN』(wood/water records)、著書に『山と写真』(実業之日本社)など。
http://kasanenogawa.net/

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