猫と暮らすニューヨーク

みんな違って、みんな変。それが猫という生き物

  • 文・仁平綾、写真・前田直子
  • 2018年8月6日

リビングで、家族集合。無邪気に遊ぶメイを、上から冷ややかに見下ろすミミの姿に注目

[猫&飼い主のプロフィール]
猫・Mimi(ミミ)13歳 メス 黒猫、May(メイ)6歳 メス トラ柄の雑種
飼い主・イラストレーターのPeter Arkle(ピーター・アークル)さんと、ライターのAmy Goldwasser(エイミー・ゴールドワッサ-)さん夫妻。マンハッタンのイーストビレッジにて、ジグザグ4フロア構成のキャットタワーのようなアパートメントに暮らす。

    ◇

「以前飼っていた黒猫のSonny(ソニー)が亡くなって、ちょうど一年後ぐらい。たまたまアップステート(NY市郊外)にある友だちの家を訪ねたあと、まさか猫を連れて自宅に戻ることになるなんて、思いもしなかった」

そう話すのは、現在2匹の猫と暮らすピーターさんとエイミーさん。2人は、訪れた友人宅で、猫を保護した顚末(てんまつ)を聞いた。雨が降る野球場にぽつりと一匹、濡(ぬ)れそぼち、おなかをすかせた黒猫がたたずんでいたのだという。「その話を聞いて、数年前に突然亡くなった私の父を思い出したんです。父は熱狂的な野球ファンだった。野球場で保護された猫は、きっと私が飼うべき猫に違いない、そう思ったんです」(エイミーさん)

そうして自宅に連れ帰ったのが、丸顔の黒猫ミミだった。

丸顔の黒猫、ミミ。以前飼っていた黒猫のソニー以来、「なぜか黒猫が好き」というエイミーさん。「黒猫ばかりを4匹飼っている知り合いもいますよ」。黒猫にはやはり魔力があるのだろうか

猫との出会いは、いつも突然だ。2匹目の猫メイも、たまたまエイミーさんが立ち寄ったペットショップでの保護猫譲渡会で見つけ、家族に加わることになった。

「ケージの中にいたメイは、とっても小さくてスィートで、おとなしくて、か細い声でニャアって泣く、そんな猫だったんです、家に連れ帰るまでは……」

自宅に到着したメイは、ミミを見るやいなや襲いかかって年長の黒猫を恐怖に陥れ、夜は部屋中を走り回ってベッドに派手に飛び乗り、飼い主たちを不眠で悩ませた。猫をかぶる、とはまさにこのことである。

そんなメイを、エイミーさんはこう表現する。「ミミに繰り出すパンチは人間の右フック並みの威力。私たちのふくらはぎや足首を嚙むわ、やりたい放題。血の気の多い、いじめっこ。まるで小さなヴェロキラプトル(恐竜)です」

おでこのところに、黒いMの文字が読みとれるメイ。「普通の猫に比べて尻尾が細いし、乳首もないんです。どこかのラボで実験的に飼育された猫なのでは……なんて考えたことも(笑)」(ピーターさん)

ところが内実、小さな恐竜は怖がりで臆病者。肝が据わっているのは、むしろ黒猫ミミであることが露呈する事件がおきた。

「あるとき窓を開けたら鳥が入ってきたんです。ミミとメイ、どっちが鳥を捕まえたと思います? ミミですよ! 鳥を素早く口に加えて、自分のゴハンの器まで持って行って置いたんです。“さあ、いただきます!”って具合にね(笑)。急いで鳥を救出して逃がそうとしたら、またミミが口にくわえてしまった。それを再び奪うようにして助け出し、ようやく外に逃がしたんです。とんでもない勢いで、空に消えていきましたよ(笑)」(ピーターさん)

ミミの隠された野性を見たり。一方メイはというと、リアルな鳥を目の前に恐怖のあまり固まってしまい、何もできずにいたのだそうだ。「いじめっこほど、弱虫なものですよね」とエイミーさんは笑う。

ピーターさんによるミミの味わい深いイラストが表紙を飾る2人の著書『All Black Cats are Not Alike』(Chronicle Books)。「日本語版のオファーがあればいつでも!」と2人

ところで、エイミーさんとピーターさんには、『All Black Cats are Not Alike(一匹として同じ黒猫はいない)』という著書がある。

飼い猫のミミはもちろんのこと、さまざまな人が飼う黒猫の顔をピーターさんがイラスト化し、それぞれの猫の性格や暮らしぶりについて、エイミーさんが文章を添えた。

目つきが鋭く、いかにも悪そうな黒猫、まぬけな表情の黒猫、しゅっとした顔つきで頭の切れそうな黒猫……。どのページをめくっても、同じ顔形の猫はなく、その表情からそれぞれの個性がにじみ出ていて、楽しい。

「猫の素晴らしいところ、それはどの猫も変な生き物だってこと!」と2人。「我が家の二匹で言えば、特にめざましいのは朝。なんとか私たちを起こそうと、あの手この手を使う彼らの必死な姿といったら。近寄って顔や体の匂いを嗅ぐ、物をたたいて音を出す、ついには棚から物を落とすことも」

不可解で騒がしい、変なヤツらの振る舞いに、思わず朝から吹き出す飼い主たち。そうやって今日もまた、猫とのおかしくも愛(いと)おしい一日が始まる。

>>つづきはこちら

    ◇

連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

    ◇

ウェブサイト http://allblackcats.com
インスタグラム http://www.instagram.com/allblackcats
ピーターさんのウェブサイト http://peterarkle.com

[PR]

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

PROFILE

仁平綾(にへい・あや)編集者・ライター

仁平綾

ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
http://www.ayanihei.com
http://www.bestofbrooklynbook.com
photo by Naoko Maeda

前田直子(まえだ・なおこ)写真家

前田直子

24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
http://www.naokomaeda.net

今、あなたにオススメ

Pickup!

Columns