パリの外国ごはん

週3回通いたい、ママのレシピ。アフリカ料理「BMK Paris-Bamako」

  • 文・写真 川村明子 イラスト 室田万央里
  • 2018年8月7日

ベトナムのごはんを立て続けに食べに行ったあと、パリの気温もすっかり夏らしくなっていた。日々、30度を超える中で食べたくなったのはアフリカ料理だ。思い浮かべたのは、以前ご紹介したセネガル人がオーナーのWaly Fayのようなお米の添えてあるごはん。

サッカーのワールドカップ開催期間中、試合を見ながら別の意味で影響を受けたのか、勝ち残っていた国の料理を食べたくなっていた。それで、お米に豆も付いてくる中南米の料理もいいよなぁ、お米+豆は暑くても食べられそうな気がする、なんて思った。いずれにしても、ひと皿にどかっと盛られたごはんが食べたかった。

「前通ったとき、みんなで賄いを食べていて、家族みたいでいいなぁと思ったの」と万央里ちゃんが、BMKはどう? と提案してくれた。私が目にした記事では、とてもおしゃれなレストランという印象を受けていた昨年オープンしたお店だ。でも雰囲気は家庭的らしい。彼女はずっと行ってみたかったそうで、じゃあ行こう、と決まった。

柄オン柄が魅力的

窓際に置かれたテーブルからしてすでに、まさにアフリカ、と思える色彩と柄だった。一気に楽しい気分になる。店内は満席。唯一空いていたカウンター席に万央里ちゃんが座っていた。奥に見える厨房(ちゅうぼう)は少し高いところにしつらえてあり、ガラス窓で仕切られて、とても清潔そうだ。働いている人はみんな、男性だった。

料理の詳細も書かれたメニュー

メニューを見ると“アフリカ料理”“アフリカ風の料理”“他にも…”と三つのカテゴリーに分かれていた。アフリカ風、ではなくて、アフリカ料理を知りたかったからその中から選ぶことにする。前に学んだmaféとyassaの名前を見つけた。マフェがピーナツソースの煮込みで、ヤッサは玉ねぎたくさんの甘みが肉じゃがを思わせる料理だ。

それぞれにヴィーガンバージョンもあり、グルテンフリーと書かれている。添えるのはお米が伝統的だけれど、マニョック(キャッサバ)を粗粒にしたものもチョイスできるらしい。他にもトマトソースの中でじっくりお米を煮たお祝いの料理というのもあった。

さんざんに迷った末、“私たちのママのレシピ”と銘打たれた“マフェ・ドゥ・ママン”に野菜を加えた“マフェ・ダカール”を頼むことにした。ママのレシピは牛肉を煮込んだもののようだ。シャロレー牛のブッフ・ブルギニヨン用のお肉を使用、と明記されこだわりがうかがえる。

万央里ちゃんは、ヤッサのヴィーガン版にマニョックを付けるという。おそらくアフリカのお皿はボリュームいっぱいだよね、と前菜は取らず、メインだけにした。

すでにドリンクもチェックしていたらしい万央里ちゃんが、南アフリカ産のルイボスティーを元にしたフレーバーアイスティーの中から、レモンジンジャー風味を注文するのを聞き、私もお願いした。

ちょうどいいタイミングでテーブルがひとつ空いたので、そちらに移動。あらかじめ置かれている筒状のカトラリー入れには、どうしたらこの柄の取り合わせになるんだろうなぁと感心してしまうプリントの布が巻かれている。

アフリカ産の食品が並ぶ

アイスティーは水色に赤いロゴの入った缶入りだった。店内では紅茶やお菓子、ジャムなどの食品も売っている。アフリカ製品のパッケージはそれほど見たことがないから、どれも手に取って見てみたかった。席に近い方に並べられたバナナチップスが特に気になった。

料理はテイクアウトをして帰る人もいた。ショーケースの上のデザートもなにやらおいしそうだ。惹(ひ)かれるものがいくつもあって目移りしているうちに料理がやってきた。望んでいた、ひと皿にどかん、と盛られたごはん。これがたとえばカレーだったとして、結構な迫力だ。

フレッシュなピーナツの入ったマフェ

ソースの中を探ると、大きなジャガイモとさつまいもがごろごろ入っていた。見るからにおなかいっぱいになりそうだなぁと思いながら食べ始めると、意外にもソースはさらっとしていた。ピーナツの風味はふんだんながら、モタつきがない。スパイスがたくさん入っていそうだ。少しカレーっぽい味もする。でも何かはわからない。お肉はしっかり煮込まれていて、その煮込み具合がまたカレーを思わせた。

一見何が入っているかわからない、こちらがヤッサ。中には野菜がごろごろ

万央里ちゃんのヤッサは、さつまいもと玉ねぎの煮込み。まさに肉じゃがの肉無しバージョン。私の大好きなやつだ。ただ違うのは、レモンが効いていること。でも、玉ねぎの甘みにレモンはぴったりで、お芋さえいらないくらいだった。クスクスの粒のようなマニョックも汁を吸い込んで、粒が細かい分、お米よりするする食べられそうだ。一晩マリネした地鶏を合わせているというお肉入りの方を次回ぜひ食べてみたい。

料理と一緒に出してくれた唐辛子のソースが、辛いけれど辛過ぎず、絶妙な案配で、2人して「買って帰りたいね」と、食品の並ぶ棚にこのソースがないかと期待した。これを少し混ぜると、途端にどちらの料理も味の輪郭が変わる。おかげで、かなりのボリュームに思えたひと皿を難なく食べ終えた。

マニョック粉を使ったバナナブレッド

デザートもいけるね、とマニョック粉で作っているというバナナブレッドと、グルテンフリーのサツマイモとココナツのケーキを注文することにした。それにアフリカ産のスモーキー・ティーを。思いがけず、この日いちばんのヒットは、最後のサツマイモのケーキが放った。これもマニョック粉で作ったもの。

翌日も食べたかったサツマイモとココナツのケーキ

このレシピを習うためにここで働かせて欲しいくらいにおいしかった。少しペトっとした質感は懐かしいもので、小学生の時に調理実習で作った茶巾絞りを思い出した。家の近所にこのお店がなくてよかった。週に3回くらい買いに行ってしまいそうだ。バナナブレッドも、きめの粗さが軽さを出していておいしかった。

帰り際に、唐辛子ソースのことを聞くと、自家製だけれど売っていないと言われた。残念。若きオーナー兄弟はマリの出身で、厨房は、マリ、セネガル、エチオピアの混合チームだそう。店名のBMKの下にparis-bamakoと小さくあったので、帰ってからもしかして、と調べてみてバマコはマリの首都だとわかった。海に面していない国ということも。この歳まで知らなかったなぁ。魚を使った料理がひとつもなかったのは、それゆえか。次回行ったら聞いてみよう。

東駅の近く。移民の多いエリアにある

BMK Paris-Bamako(ベーエムカー パリ-バマコ)
14, rue de la Fidelite 75010 Paris
09 82 54 17 48 (予約不可)
12時~22時30分
日、月休み


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PROFILE

川村明子(かわむら・あきこ) 食ジャーナリスト

川村明子

東京生まれ。大学卒業後、1998年よりフランス在住。ル・コルドン・ブルー・パリにて製菓・料理課程を修了後、フランスおよびパリの食にまつわる活動を開始。現在は執筆のほか、パリで活躍する日本人シェフのドキュメンタリー番組『お皿にのっていない時間』を手掛けている。著書に『パリのビストロ手帖』『パリのパン屋さん』(新潮社)、『パリ発 サラダでごはん』(ポプラ社)
日々の活動は、Instagram: @mlleakiko、朝ごはんブログ「mes petits-déjeuners」で随時更新中。

室田万央里(むろた・まおり) 料理人

室田万央里

無類の食べ物好きの両親の元、東京に生まれる。
17歳でNYに移り住んだ後、インドネシア、再び東京を経て14年前に渡仏。
モード界で働いた後に“食べてもらう事の喜び”への興味が押さえきれずケータリング業に転身。
イベントでのケータリングの他、料理教室、出張料理等をパリで行う。
野菜中心の家庭料理に妄想気味のアジアンテイストが加わった料理を提供。理想の料理は母の握り飯。未だその味に到達できず。
Instagram @maorimurota

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川村明子(かわむら・あきこ) 食ジャーナリスト

写真

東京生まれ。大学卒業後、1998年よりフランス在住。ル・コルドン・ブルー・パリにて製菓・料理課程を修了後、フランスおよびパリの食にまつわる活動を開始。現在は執筆のほか、パリで活躍する日本人シェフのドキュメンタリー番組『お皿にのっていない時間』を手掛けている。著書に『パリのビストロ手帖』『パリのパン屋さん』(新潮社)、『パリ発 サラダでごはん』(ポプラ社)
日々の活動は、Instagram: @mlleakiko、朝ごはんブログ「mes petits-déjeuners」で随時更新中。

室田万央里(むろた・まおり) 料理人

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無類の食べ物好きの両親の元、東京に生まれる。
17歳でNYに移り住んだ後、インドネシア、再び東京を経て14年前に渡仏。
モード界で働いた後に“食べてもらう事の喜び”への興味が押さえきれずケータリング業に転身。
イベントでのケータリングの他、料理教室、出張料理等をパリで行う。
野菜中心の家庭料理に妄想気味のアジアンテイストが加わった料理を提供。理想の料理は母の握り飯。未だその味に到達できず。
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