MUSIC TALK

子どもとの時間を大切に 夫婦デュオ「ハンバート ハンバート」のある決断(前編)

  • 2018年8月10日

撮影/山田秀隆

 共働きで子育てする夫婦にとって、子どもと過ごす時間をいかに確保するかは大きな課題だ。アーティストもしかり。夫婦デュオとして活動するハンバート ハンバートは、ある決断を発表した。来年1年間、土日を休みにする「週休2日宣言」。週末にライブの多いミュージシャンの常識からは外れているといえる。
 なぜそのような選択をするのか? 宣言に至った思いを聞く。(文・中津海麻子)

    ◇

家事は二人で自然に分担

――お子さんが3人いるんですよね?

佐野遊穂(以下、佐野) 男の子3人です。上から小4、小2、保育所の年中さん。毎日怒鳴りまくってます(笑)。

佐藤良成(以下、佐藤) どうしてもそうなっちゃうよね(笑)。

佐野 長男は「活字中毒」を自称するほど本が大好きなインドア派。対して次男は活発なタイプで、最近野球を始めました。末っ子は上の二人を見て頭を使うというか、ちょっとずる賢いちゃっかり者ですね。みんな歌は大好きでよく歌ってるけど、「音楽やる人になる?」って聞いたら「ユーチューバーになりたい」って(笑)。

佐藤 イマドキだよね(笑)。

――三人三様なんですね。子育てや家事について分担やルールはありますか?

佐野 特に決めたりはしていませんが、なんとなく自然と分担しているという感じです。

佐藤 僕は主に洗濯と食器洗い担当かな。

佐野 ツアーから帰ってきたときの荷物の片付けも良成がやってくれます。これは2階に片付けて、これはクリーニング……といった具合に、あっという間にトランクを空にしてくれるのは助かります。料理は私が。子どもたちは、大人ほどの量を食べるわけではないですが、とはいえ作る量はなかなかなもので。

佐藤 単純に人数が多いからね。

佐野 おみそ汁も、食卓まで運ぶと腕がプルプルしちゃう。

佐藤 みそ汁用の鍋、そろそろ片手鍋から両手鍋にした方がいいかもね(笑)。あと、息子たちの散髪は家でやってるんですが、遊穂がハサミ担当で俺がバリカン担当です。ときどきちょっと虎刈りになっちゃうけど(笑)。

自宅で(photo:ハンバート ハンバート提供)

家庭と音楽業の両立

――子育て、家庭生活と、仕事や創作活動は、どのように両立させていますか?

佐野 基本的に子どもたちを学校や保育所に送り出してからが仕事の時間になります。

佐藤 家でできることは家で。子どもたちが帰ってきてからは、僕は家の隣にある仕事用の部屋に行って作業することが多いですね。

佐野 ライブなどで数日間、家をあけることも。赤ちゃん時代は置いていけないのでツアーに連れて行ったこともありました。マネージャーがおんぶヒモで背負いながらサウンドチェックして(笑)。

佐藤 今は両家の親に頼んでいます。ただ、やんちゃで言うこと聞かないから、お迎えに行くと両親がげっそり。だから、今回はこっち、次回はあっちというように、連続にならないようローテーションを組んでお願いしています。

――夫婦でありながらデュオでもあり、家庭生活と仕事が地続きにあります。メリットとデメリットは?

佐野 子どもたちと一緒にいる時間でも、完全にオフにはなれなかったりしますね。子供が寝た後に作業したり、休みの日もちょっと時間があれば練習したり。どこか行かなければ仕事をできない環境なら離れられますが、家でもできてしまうので。

佐藤 そうだね。でも、それがメリットでもある。わざわざ場所を取り時間を決めて集まらなくても、家族だから思いついたらすぐに一緒にできる。子育てをしているとまとまった時間を取るのが難しい。ちょっとでも時間が空いたら作業できるというのは、僕らにとっては大きな利点だと思います。

自宅で(photo:ハンバート ハンバート提供)

子育てが創作に与える影響

――そうした環境やスタイルは、音楽性や創作活動に影響を与えていますか?

佐野 歌詞には表れていると思います。すぐには気づかなかったりするんですが、振り返ってみれば子どもと過ごしている時間や暮らしが影響しているんだろうな、と感じることはあります。ただ、親になったからと言って自分が違うものになったわけじゃない。ハンバート ハンバートとして「こういう風にやっていこう」という部分にはあまり影響はないかな、と。

佐藤 そうかな? 俺はあるかな。以前は自分が好きな音楽をやりたいだけだったんだけど、子どもと向き合っていると、「好きなことだけやってればいい」ということでは説得力がないと気づきました。叱るにしても、僕自身ができていないことを叱っているという矛盾に日々直面してしまう。なんでも自分に返ってきて、自分の姿に気づかされるというか。そういう意味では、仕事への向き合い方についてもちょっと変わったんじゃないかと。少し社会人ぽくなったというか(笑)。

 そして、そういう思いは確かに詞や音楽にも表れていて。去年出したアルバム「家族行進曲」を作ったときに特に感じたのですが、それまでは自分が辛い、楽しい悲しい、という軸だけだったのが、もっと色んな目線でものを考えるようになった。そもそも家族をテーマにして作り始めたわけじゃないのに、おのずと家族を感じさせる内容になったのは、子どもたちとの生活の影響が大きかったと思います。

“平日しかライブをしない”宣言の理由

――そうした中で先日、「2019年ハンバート ハンバートは平日しかライブをしません」という週休2日宣言をして大きな話題となりました。なぜ週末を休もうと?

佐野 学校や保育所の行事はたいてい週末なので、ライブが入っていると行けなくなってしまう。行事に合わせてライブのスケジュールを組んでも、雨天順延の日にぶつかっちゃうこともあって。いつも一緒のスタッフも同じぐらいの子どもがいる人が多くて、みんな似たような状況なのです。特にうちは夫婦でやっているので、両親とも行けなくなってしまう。じゃあ思い切って週末にライブや仕事を入れないという試みをしてみようと考えました。

お笑い芸人でマンガ家の田中光さんが、土日祝日のライブをお休みする理由のマンガを描き下ろした

佐藤 行事もそうなのですが、週末に僕らがライブで出かけてしまうと、一緒に過ごせる時間は平日の朝と夜だけになってしまう。意識的に作っていかないと、子どもと過ごす時間が本当になくなっちゃうんじゃないか、って。

――これまで週末中心だったライブを平日に。不安などはありませんか?

佐藤 ないとは言いませんが、これまでも平日のライブにもお客さんは来てくれていたし、ライブは基本的に夜なので働いている人も仕事帰りに来られるかな、と。

佐野 逆に、土日は休めないという人も結構いるんですよね。

佐藤 仕事もそうだし、土日は家族サービスをしないといけないという人も。ライブには老若男女が来てくれますが、中心となるのは僕らと同じ子育て世代。状況も感じていることも通じるのかも、と思っています。

佐野 小さいお子さんがいる方から「賛同します!」とSNSにもたくさん書き込みをしていただきました。

佐藤 とりあえず来年1年間の期間限定で。そもそもライブが好きで音楽をやっているので、フェスとか土日のライブに出られなくなっちゃうのは僕ら自身がさみしいですからね。1年間だけテスト的にやってみようと。

佐野 次男の最後の運動会に行けなかったんです。ものすごい組み体操をしたらしいんですが、それが見られなかった。来年は末っ子が保育所最後の年なので、この目で見たいなと思っていて。再来年以降どうするかは決めていませんが、1年間やってみることで何か気づきがあるかもしれないし、ハンバート ハンバートの音楽の形にも新しい何かが生まれるかも。そんな期待もしています。

(後編へ続く)

    ◇

ハンバート ハンバート

1998年結成、佐藤良成(さとう・りょうせい)と佐野遊穂(さの・ゆうほ)によるデュオ。2人ともがメインボーカルを担当し、フォーク、カントリーなどをルーツにした楽曲と、別れやコンプレックスをテーマにした独自の詞の世界は幅広い年齢層から支持を集める。芥川賞を受賞したお笑い芸人・又吉直樹氏がファンであることを公言するなど、クリエーターからの評価も高い。映画「包帯クラブ」(堤幸彦監督)、「プール」(小林聡美・もたいまさこ出演)で劇中音楽や主題歌を担当し、「シャキーン!」「おかあさんといっしょ」などの子ども番組、人気アニメ「この素晴らしい世界に祝福を!」にも楽曲を提供。話題を呼んだCMソング「アセロラ体操のうた」を始め、現在もミサワホーム、パリミキ/メガネの三城などのCMが多数オンエア中。2017年には細野晴臣氏・長岡亮介氏らをゲストに迎えたアルバム「家族行進曲」を発売。2018年には結成20周年を迎え、記念盤「FOLK 2」を7月にリリースした。

ハンバート ハンバート公式サイト:http://www.humberthumbert.net/

【ライブ情報】結成20周年記念ツアー「FOLK IS MY LIFE 2018」
8月16日(木)仙台・Rensa
9月8日(土)東京・日比谷野外大音楽堂
9月17日(月・祝)大阪・大阪城音楽堂
9月27日(木)札幌・Zepp Sapporo
10月7日(日)広島・CLUB QUATTRO
10月26日(金)、27日(土)長野・ネオンホール
11月9日(金)静岡・LIVE ROXY
11月10日(土)名古屋・Zepp Nagoya
11月16日(金)福岡・電気ビルみらいホール
11月25日(日)松江・メテオプラザ

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