MUSIC TALK

20年の“練習”を最高の形に ハンバート ハンバート(後編)

  • 2018年8月14日

撮影/山田秀隆

 今年、結成20周年を迎えたハンバート ハンバート。夫婦デュオとして、ともに暮らし子育てしながら、音楽を生み奏でてきた。そんな二人が振り返る、これまでとこれから。(文・中津海麻子)

    ◇

(前編から続く)

20年経っても、変わらず好きな音

――今年結成20年を迎えました。振り返っていかがですか?

佐野遊穂(以下、佐野) こんなにたくさんの人に聴いてもらえるようになったということは単純にうれしいし、改めてびっくりだなぁと感じています。

――20年間で変わったこと、変わらないことは?

佐野 変わったこと……。昔は本当に何も考えないでやっていたけど、ちょっとは考えるようになりました。

佐藤良成(以下、佐藤) 考えてなかったんですか?

佐野 ねぇ(笑)。今は、たとえばもっとよく歌いたいとか、どういうステージしたらお客さんが喜んでくれるかとか、考えるようになった。

佐藤 確かに前はそんなことに思いが至らなかったね。ライブの曲目も開始20分前ぐらいにババっと衝動的に決めたり(笑)。

佐野 変わらないものは、好きなもの、かな。

佐藤 そうだね。自分の中にある「こういう音がいい音だと思う」「こういうメロディがグッとくる」という尺度みたいなものがあって、それを手がかりに曲を作ったりアレンジしたりする。その好き嫌いの尺度みたいなものは、つくづく変わらないなと思います。今回、20周年記念でリリースしたアルバム「FOLK 2」を作っていても、それはすごく感じていて。1曲目の「メッセージ」という曲は一番最初のライブでもやった古い曲の再録なのですが、当時の音源を改めて聴いてみると、歌や演奏は下手だったりはするものの、根本のメロディラインは意外と変わらないんだなぁと。自分の好きな音を積み重ねて作っている、それは昔も今も同じです。

7月にリリースした「FOLK 2」(写真は初回限定盤)

――2016年にリリースした「FOLK」同様、今回もサポートなし、二人きりでのレコーディングで作られました。改めて二人だけでの創作、いかがでしたか?

佐野 ほかの人が入ってくれた方がいい時もあります。二人だけで根を詰めて作業をしていると空気がピリピリしたりもするので(笑)。ただ、ほかのミュージシャンが入ると私たちのイメージを伝えるのに最も苦労するのですが、二人だと共通認識が作りやすいというか。音のことなので言葉にすること自体とても難しいけれど、それでも二人の間なら通じる言葉がある。

佐藤 たとえ話のようにしか説明できないので伝えきれないということが常につきまとう。でも、遊穂と二人だとブレが少ない。

佐野 それはやっぱり、20年の積み重ねが大きいと思います。

又吉直樹さんが出演したMV

――「FOLK 2」のコンセプトは?

佐藤 二人きりで、というのもそうなのですが、12曲のうち半分はオリジナル、半分はカバーという構成も、2年前に出した「FOLK」と同じです。オリジナルの中に1曲新しい曲を入れる、カバーも70年代のいわゆるフォーク時代の曲に加え、90年代ポップスをフォークアレンジで録音するといったことも、前作でやってみてとてもよかったので、今回も踏襲しました。

佐野 「虎」は新しくMVを撮ったのですが、又吉直樹さんに出演してもらって。「虎」の世界観、又吉さんのイメージに合うんです。

佐藤 ぴったりかなと思ってお願いしました。


ハンバート ハンバート 「虎」

――無表情で歌うお二人を横から又吉さんが見つめたり、かと思えば、三人でダンスしたり。笑顔一切なしのなんともシュールな……。

佐野 そういう演出で(笑)。

佐藤 又吉さんが目の前でジロジロ見てくるのにずーっと真顔で歌わなきゃいけない。意外と大変でした。

佐野 ダンスは小一時間練習して。大した動きに見えないんですが、実は3人とも必死で、ハァハァと息が上がっています(笑)。

歳月を経て、よりよくなった。そう思える曲をセレクト

――新アルバム、どんなふうにリスナーに届けたいですか?

佐野 カバー曲のオリジナルを知らない若い世代の方もいっぱいいるんじゃないかと思っていて。であれば、これはオリジナル、これはカバーと意識せずに聴いてもらえるかな、という期待はあります。このアルバムをきっかけにオリジナルに興味を持ってもらい、原曲を聴いてみるという出会いがあったなら、それはすごくステキなことだと思っています。

佐藤 オリジナルについては、曲ができたばかりのころはどんな風に歌ったり演奏したりしたらちょうどいいのか、理解しきれてなかった。それが15年、20年と歌い続けてきたことで、いろんなことに気づき、より緻密(ちみつ)になってきた。新曲として出した時よりももっとよくなっているんじゃないか――。そう思える曲を、今回改めて録音し直しました。再録した方こそがオリジナル、本番になったんじゃないかと。

佐野 20年間練習してこうなりました、ってね(笑)。

佐藤 長い練習だったけど(笑)、一番いい形になっていると思います。

――7月末にはフジロック、8月からはこの新アルバムのツアーとライブが続きます。ハンバート ハンバートにとってライブとはどんな場ですか?

佐野 歌うことがとにかく楽しいです。

佐藤 そうだね。レコーディングがぐーっと込めていく作業だとすると、ライブは中にあるものを発散していくので、すごく気持ちがいい。

佐野 フェスは単独ライブとはまた雰囲気が違う楽しさがあります。単独にはわざわざ行かないというお客さんもたくさん来てくれるので、そういう人たちの心をつかめた! と感じた瞬間は本当にうれしいですね。

佐藤 自分たちのライブでもそうなんですが、「手応え」を感じるときがあるんです。僕たちが奏でる音でお客さんと一つになって行く感覚、というか。野外フェスは舞台の上から見える自然も空気感もすごく大きい。どんどん解放されていくようで気持ちいいです。そういう場で新しいお客さんに会えるのはうれしいし、お客さんにも新たな音楽との出会いを楽しんでもらいたいですね。20周年のツアーは、長く一緒にやっているスタッフと回るので、気心知れたチームだからこそできるステージングをあれこれ考えています。きっと楽しんでもらえるはず。

――デュオとして、そして家族として年月を重ねてきたお二人。これからどんな風景を描いていきますか?

佐野 息子たちが成長して、これから反抗期とか来たら新しい歌詞ができるんじゃないですかね(笑)。

佐藤 おもしろいものができるかもしれないし、深みが加わるかもしれないし、もしかしたら詞も曲も書けなくなっちゃうかもしれないし(笑)。

佐野 家族との暮らしや経験は、なんらかの形で映し出されて行くとは思います。

佐藤 これまでハンバート ハンバートは派手に大ヒットを飛ばしたりはなかったものの、地味ながら昨日より今日、今日よりも明日と、少しずつ良くなってきた。お客さんも少しずつ増えてきた。それが20年間、ずーっと続いてきた。これからも、自分たちの音楽や活動はまだまだよくできることがあると思うので、少しずつでも、ゆっくりでも、進化していけたらいいなと思っています。

    ◇

ハンバート ハンバート

1998年結成、佐藤良成(さとう・りょうせい)と佐野遊穂(さの・ゆうほ)によるデュオ。2人ともがメインボーカルを担当し、フォーク、カントリーなどをルーツにした楽曲と、別れやコンプレックスをテーマにした独自の詞の世界は幅広い年齢層から支持を集める。芥川賞を受賞したお笑い芸人・又吉直樹氏がファンであることを公言するなど、クリエーターからの評価も高い。映画「包帯クラブ」(堤幸彦監督)、「プール」(小林聡美・もたいまさこ出演)で劇中音楽や主題歌を担当し、「シャキーン!」「おかあさんといっしょ」などの子ども番組、人気アニメ「この素晴らしい世界に祝福を!」にも楽曲を提供。話題を呼んだCMソング「アセロラ体操のうた」を始め、現在もミサワホーム、パリミキ/メガネの三城などのCMが多数オンエア中。2017年には細野晴臣氏・長岡亮介氏らをゲストに迎えたアルバム「家族行進曲」を発売。2018年には結成20周年を迎え、記念盤「FOLK 2」を7月にリリースした。

ハンバート ハンバート公式サイト:http://www.humberthumbert.net/

【ライブ情報】結成20周年記念ツアー「FOLK IS MY LIFE 2018」
8月16日(木)仙台・Rensa
9月8日(土)東京・日比谷野外大音楽堂
9月17日(月・祝)大阪・大阪城音楽堂
9月27日(木)札幌・Zepp Sapporo
10月7日(日)広島・CLUB QUATTRO
10月26日(金)、27日(土)長野・ネオンホール
11月9日(金)静岡・LIVE ROXY
11月10日(土)名古屋・Zepp Nagoya
11月16日(金)福岡・電気ビルみらいホール
11月25日(日)松江・メテオプラザ

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