クリトモのさかな道

移転まで1カ月半、最強の胃袋を持つ私が行く築地市場内飲食店(1)愛養・トミーナ・中栄・センリ軒

  • 文・栗原友 写真・馬場磨貴
  • 2018年8月21日

わたり蟹のトマトクリームソース(トミーナ)

行ってみたいけどなかなか足が向かない。そんな風に思っている人が多いであろう、東京の名所、築地も10月11日の移転まで残り約1カ月半。

約5年間と短い間でしたが、築地で働いていた私が市場の中でもなかなかメディアに取りあげられない場所をご紹介したいと思います。特に飲食店は魚市場だけに寿司(すし)屋か海鮮丼のお店ばかり目立っていますが、今回はそれ以外にもおいしいお気に入りの店を取材させていただきました。また、私自身が行ってみたかった初訪問のお店もご紹介。ぜひ参考にしてみてください。

「銀座と目と鼻の先。いつでも行けるから」と後回しにしていた築地散策。今やっておかないと!

    ◇

夫と築地で二人で過ごす唯一の時間だった「愛養」

私が愛養で頼むメニューはこの3品。トーストのハーフはジャムとバターが半分ずつのトーストのことです

「おんな酒場放浪記」という番組に出ていた時に、スタッフの方が「いつも観(み)てるよ」と声をかけてくれたのがきっかけで頻繁にサボりに行くようになりました。初セリの1月5日にまぐろのセリを見て、お店の開店準備までの30分、夫と2人でここでコーヒーを飲んで過ごすのも年に一度の楽しみのひとつでもありました。

私が働いていたお店はまかないが出るので、外にお茶をしに行く時間がなくて、夫と築地で二人で過ごす唯一の時間だったんです。懐かしいなあ。ここに来るといろんな人に会うんですよね。江戸懐石の先生やフレンチのシェフや同業の方など。みんな愛養さんがすきなんです。

私が頼むのは「ミルクコーヒー甘いのちょっと」と「トーストハーフ」か「ゆでたまご」。どんなにのどが渇いて飲み足りなくても、オーダーしたものを飲み終えると同時にお茶を出してくださるので、おなかががっぽがっぽになるくらい満足します。

現在は新しいオーナーさんに変わりましたが、経営者の夕子さんや以前から働いているお店の顔であるケンさんにもとても親切にしていただいています。築地に用事があると必ず顔を出す。そんなお店です。

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ずっと食べたかったカニのパスタを2種類「トミーナ」

開店時間が周りのお店に比べて少し遅めなので一度も行ったことがなかったお店。ずーっと行きたかったのでこの場を借りて取材させていただきました。本当にラッキー。噂では量がめちゃくちゃ多いということだったので朝からそんなにたくさん無理でしょと思っていたのですが、実際、本当に量が多い。なんといっても普通サイズの豪華サラダが付いてくる。なんてヘルシーなの! 

野菜でおなかがスッキリしたら本命のパスタが登場。ずっと食べたかったカニのパスタを2種類オーダー。一つはワタリガニのトマトクリームパスタ。これでもか! というくらい大きなワタリガニが上にドカンとのったパスタです。足に詰まった身を一気にほじってソースと絡めていただきます。こんなにカニの身が多くて濃厚トマトクリーム、ぜいたくすぎる!

念願のカルボナーラ。カニ入りって絶対に家じゃ食べられない(ズワイ蟹のカルボナーラ:トミーナ)

もう一品はこのお店オリジナルで名物、ズワイガニのカルボナーラ。卵とクリームが濃厚! そして柔らかい長ネギとカニの身が混ぜ合わさって、さらにソースの粘度が増します。

築地場内唯一のイタリアン。今回はトマトベースばかり頼んでしまいましたが、ぜひピザも食べてみたい。後ろ髪を引かれる思いで店を後にしました。

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キャベツとご飯を混ぜ、ルーをたっぷりが最高「中栄」

築地勤務時代、従業員のまかないを任されていたのですが、お店が忙しすぎる時はいろんなお店のお弁当を食べていました。火事で焼けてしまったラーメン井上、鳥藤の焼き鳥弁当、吉野家の牛丼、そしてこの中栄のカレーです。

こちらのカレー、スパイスがかなり効いています。そしてご飯と同じくらいの量の細切りキャベツがてんこ盛り。私が好きな食べ方はキャベツとご飯を混ぜてルーをたっぷり含ませて食べる。とにかくたっぷり。スープのように。これが最高。

中栄さんのカレーをお店で食べるようになったのは数年前の取材がきっかけ。とにかく築地で働いている時は場内で座って食事をするなんて許されませんでしたから、まさか合いがけ(ハヤシライスと)があるなんて知らなかったし、カレーもインドカレーとビーフカレーの2種類あるのも知らなかったのです。

ルーの湖の上にライスの丘とキャベツの森が浮かんでいるかのよう(築地魚河岸シーフードカレー:中栄)

今回は初のシーフードカレーをチョイス。エビ、ホタテ、イカ、アサリの他にズワイガニの爪まで入ったぜいたくカレー。築地ならではですね。シーフードをソテーして蒸し焼きにした汁も入れているので、他のカレーよりも提供時間が少しかかります。でもその一手間のおかげでカレーはめっちゃシーフードエキスたっぷりで口に含んだ時にスパイスに負けない風味を楽しむことができます。次回食べるとしたらシーフードとハヤシの合いがけに決定だな!

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半熟卵入りクリームシチュー!「センリ軒」

クリームシチューセット(センリ軒)

こちらもずっとお邪魔したかったお店のひとつ。大正時代からあるお店だそうで、お湯でコーヒーを温めるという、レトロなシルバーのコーヒーアーンが目立ちます。こちらのお店に来たかった理由のひとつ。名物、私の大好きなクリームシチューを食べたかったのです! しかも! 半熟卵入り! クリームとゆるい卵の黄身、合わないわけがない! 

セットについているパンをつけて食べれば、たちまちおなかいっぱいに。うーん、朝から幸せ。店内はまるで映画のセット。この空間で食事ができるのはあとわずか。残念でなりません。こちらのお店はテイクアウトも有名です。それはまた後日「テイクアウト編」でゆっくりご紹介しましょう。

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PROFILE

栗原友(くりはら・とも)料理家

写真

1975年生まれ、東京都出身。2012年から4年間、築地「斉藤水産」に勤務した。現在は料理教室を中心に活動する傍ら、魚料理の啓蒙や、魚を用いた食育に力を入れている。また、東京・浅草の遊園地「花やしき」内の居酒屋「夜のさわぎ」をはじめとする飲食店のプロデュースなど、幅広く活動中。近著に『クリトモの大人もおいしい離乳食』(扶桑社)、『クリトモのさかな道 築地が教えてくれた魚の楽しみ方』(朝日新聞出版)。http://kuritomo.co.jp/

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栗原友(くりはら・とも)料理家

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1975年生まれ、東京都出身。2012年から4年間、築地「斉藤水産」に勤務した。現在は料理教室を中心に活動する傍ら、魚料理の啓蒙や、魚を用いた食育に力を入れている。また、東京・浅草の遊園地「花やしき」内の居酒屋「夜のさわぎ」をはじめとする飲食店のプロデュースなど、幅広く活動中。近著に『クリトモの大人もおいしい離乳食』(扶桑社)、『クリトモのさかな道 築地が教えてくれた魚の楽しみ方』(朝日新聞出版)。http://kuritomo.co.jp/

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