川島蓉子のひとむすび

<49>デザインホテル、クラスカが選ぶ上質。「CLASKA Gallery & Shop "DO"」(前編)

  • 文・川島蓉子 写真・鈴木愛子
  • 2018年8月29日

明るい空間に、暮らしを取り巻くさまざまなものが並んでいる本店

日本橋近辺に用事があり、余裕があると立ち寄るのが、「CLASKA Gallery & Shop “DO”(クラスカ ギャラリー&ショップ ドー)」です。器や台所用品、服やアクセサリーなどが並んでいるライフスタイルショップで、「コレド室町2」の2階に入っています。

訪れて「いいな」と思うのは、「普段の暮らしに取り入れたら、少しうれしい気分になりそう」「気楽なギフトとして贈ったら、相手の方が喜んでくれそう」と、自分の中のチャーミングな気持ちを引き出してくれるところです。

本店は、東急東横線の学芸大学から10分くらい歩いたところ。古い建物をリノベーションして生まれたデザインホテル「クラスカ」の2階に入っています。オープンしたのは10年前のこと。電車を乗り継ぎ、わざわざ出かけるのは、それはそれで楽しいと思っていたのですが、その後、渋谷や丸の内にお店ができて、今や全国で13店舗を構えています。

今回は、「クラスカ ギャラリー&ショップ ドー(以下、ドー)」を立ち上げ、ここまでに育てた統括責任者でありディレクターの大熊健郎(おおくま・たけお)さんに話を聞きました。

穏やかな笑顔を浮かべながら、ものについて楽しそうに語る大熊さん

「伝統の手仕事で作られている工芸品から、デザイナーによる新しいものまで、今の日本の暮らしに映えるアイテムを、洋の東西を問わずに集めています」と大熊さん。

業務用の無駄のなさがおしゃれ感に

私が最近手に入れたのは、小型の黒いポシェットです。少し横長の長方形に大きなポケットとファスナーがついていて、使い勝手が良さそうと手に取ってみました。そうしたら薄くてコンパクトなのにものがたくさん入る、合成皮革なのにちっとも安っぽくないと気に入りました。その日の服に斜め掛けしてみたら、さりげなく服を引き立てながら、きりりと全体を引き締めてくれる――楽しんで使えそうと、買うことに決めたのです。

聞けば、もともと業務用の集金バッグだったものを、大熊さんが長めのストラップやポケットを付けるなどの注文をしてつくったのだそう。業務用の良さが使い勝手や丈夫さに現れていて、シンプルなモダンさは大熊さんの注文によるものと納得がいきました。

愛らしいたたずまいの「羽根鶴」

一方、「ドー」で購入して、わが家で愛用しているのは、鶴のかたちをした小さな蓋(ふた)つきの器です。紅をいただいた愛らしい表情と、ふっくらしたかたちに惹(ひ)かれて手に入れました。家では、小さなアクセサリー入れとして使っているのですが、おめでたい鶴にあやかろうと、特別な日に着ける指輪を二つ三つ入れています。身支度した仕上げに「今日はお護(まも)りください」という気持ちで、そっと蓋を持ち上げて、指輪をつけることにしています。

これは、佐賀県の有田焼の窯元で、「鶴の蓋物」という名で昔から作られてきたものだそう。大熊さんが工房を訪ねた時に出合い、買いつけてお店に並べたところ、人気があってロングセラーになっているのです。

こうやって「ドー」には、世界から集めてきたものと、「ドー」が依頼してつくったオリジナルのものとが一緒に並んでいます。ライフスタイルショップですから、服もたくさんあるし、ジャム類や調味料など食品もある――バラエティー豊かな品ぞろえです。

お店のインテリアは、白い壁に木のテーブルや棚が配してあってモダンな印象。これが、あめ色の木に覆われた民芸調の店だったり、住宅のショールームにありがちな“かっこ良過ぎる空間”だったら、まったく違います。「ドー」を巡っていると、「自分が使うシーンや気分」が浮かび上がってくるから、つい欲しくなってしまうのだと思いました。

何より、全体に統一感があって「ドー」らしさが漂っているのは、「たとえば伝統工芸的な漆器でも、白木のモダンなテーブルに置いても違和感なく映えるもの、使えるものを選んでいます」という、大熊さんのフィルターを通しているから。着るものも食べものも、雑貨の数々も、「モダンで上質な普段使い」という光景が透けて見えるのです。

また、大熊さんをはじめとするスタッフが、ものが作られる現場に出かけ、作り手とやりとりしていることが大きいと思います。「作り手の方にお会いして、この人にこういうことをお願いすると、面白いものができるのではと考えることが楽しい」と大熊さん。

「赤ずきんシリーズ」は森の中に赤ずきんがいる光景が浮かび上がってきます

たとえば長崎県の波佐見町を訪れた時に、工場に置いてあったお皿に惹かれ、どんな人が作っているのかと尋ねたところ、ドイツから日本に留学しているミリアムさんという女性が描いたものでした。大熊さんがミリアムさんと話し合い、「赤ずきんシリーズ」という絵柄を、コーヒーカップや茶飲み、プレートなどに施すことにしたのです。

甘さだけに陥らないクールさがあり、手描きの温かさの中にモダンな空気感が漂っている――シリーズの持っているチャーミングさは、ミリアムさんのセンスと大熊さんのアドバイスが合わさってできたものです。

「ドー」に並んでいるものには何かしらのストーリーがあります。「昔から編集が好きだったので、今、やっている仕事も、きっと編集なのだと思います」と、はにかみながら語る大熊さん。技と人、地方と都会、クラシックとモダン、モノと暮らしなど、たくさんの要素を編集しているのが、大熊さんの仕事といえます。

次回は、大熊さんの編集の視点が、どのようにして磨かれ、実践に至ったのかに触れたいと思います。

■CLASKA Gallery & Shop "DO"



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PROFILE

川島蓉子(かわしま・ようこ)

川島蓉子

伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。
1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。多摩美術大学非常勤講師。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。
ifs未来研究所 http://ifs-miraiken.jp

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伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。
1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。多摩美術大学非常勤講師。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。
ifs未来研究所 http://ifs-miraiken.jp

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