猫と暮らすニューヨーク

猫を観察することは、海を眺めることに似ている

  • 文・仁平綾、写真・前田直子
  • 2018年9月3日

コンテンポラリーなデザインで支持を集めるアニカさんのジュエリーブランドAnnika Inez(アニカ・イネズ)。日本では全国のセレクトショップなどで販売されています

[猫&飼い主のプロフィール]

猫・Coco(ココ)4歳 メス 黒猫、Selam(セラム)10歳 オス トラ柄の雑種、特別出演の預かり猫、Webster(ウェブスター)15歳 オス 茶トラ

飼い主・スウェーデン出身のジュエリーデザイナー、Annika Inez(アニカ・イネズ)さん。元は教会だった建物をリノベートしたブルックリンのアパートメントで、娘のMatea(マテア)さんと暮らす。

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夏、真っ盛りの8月。「12歳になる娘のマテアは、夏休みを利用してサマーキャンプ(体験学習)に参加しているんです。今は、日本の長野にいるみたい」と母であるアニカさん。ブルックリンのアパートメントでは、アニカさんと飼い猫2匹、それからアニカさんと同じ北欧出身でブルックリン在住のテキスタイルデザイナー、ロッタ・ヤンスドッターさんから預かり中の猫1匹というメンバーで、まさに“猫のサマーキャンプ”真っ最中。といっても猫たちは、各自カウチや椅子の上でのびのびと寝ているだけだけれど……。

性格や態度がまったく異なる3匹。そのためケンカもなく、「猫のサマーキャンプは、今のところ順調です」とアニカさんは笑う。普段は家にいない預かり猫のウェブスターが加わったことで、「それぞれの性格がさらに際立つ気がします」とも。

例えば、黒猫のココは、いつもアニカさんをくすりと笑わせる天然系。つい先日も、「なぜそこに?」というような、本棚から落ちそうなカゴの中で絶妙なバランスを保ち、涼しげな顔で座っていたという。

保護施設から譲渡してもらったという黒猫のココ。ツヤッツヤの毛艶(づや)の良さが自慢です

「よくしゃべるのもココの特徴なんです。朝は“マイッ”(起きてる?)って言って寄ってくるし、夜、本を読んでいるときは“メラッ!”。Hey!っていう感じですね」(アニカさん)。あるとき、テラスでココが遊んでいたときのこと。部屋に戻るようアニカさんが促しても聞かなかったため、そのままにした。しばらくしてテラスにココを迎えに行くと、「“マーマママママママッマ!!”って、急ぎ足で部屋に戻りながら、ものすごい勢いで文句を言ってきたんです(笑)。私を放ったらかしにしないでよ!ってね。笑っちゃいました」。それにしても、“ニャー”や“ミャオ”なんていう猫の標準語は話さないココ。さすが天然系です。

一方のセラムは、ルーティンにのっとって行動する、生真面目なタイプ。アニカさんが洗面所にいるときは、必ず蛇口から水を出してもらって飲む決まり。娘のマテアさんがシャワーを浴びているときはそばで待ち、タオルで体を拭き終わったのを見はからって、抱きかかえてもらう決まりだとか。

ココと同じく保護猫のセラム。よくしゃべるココとは正反対に、「ほぼ鳴きません。目で語ってきます」(アニカさん)。目ヂカラあります

初志貫徹の完璧主義のため、時として妙なこだわりも。例えばアニカさんのお母さんがブルックリンの家に遊びに来たときのこと。農場育ちのため、猫はペットというよりねずみ退治用という認識で、いわゆる“猫好き”ではないお母さん。それを不満に思ったのか、「セラムは、母を猫好きに改心させようと心に決めたみたい。母が訪ねてくるたびに、できるだけ近くに寄り添って、距離を縮めようと必死なんです」(アニカさん)。しかし努力もむなしく、今のところお母さんはまだ猫好き人間にはなっていないそう……。がんばれ、セラム。

さて、そんな2匹を特段気にもかけず、嫌がりもせず、日々穏やかに過ごしているのが、預かり猫のウェブスター。さすが人生経験豊富な御年15歳。抱きかかえようが、放っておこうが、まあ好きにするがいいさ、という具合。「愛すべき猫なんです」とアニカさん。

預かり猫のウェブスター。ロッタさん一家が留守にしているときは、こうしてたびたびアニカさん宅で過ごしています

そんな三者三様な猫たちとの暮らし。夕日を背景にテラスで遊ぶココの美しい姿、アニカさんのわきの下に顔をぎゅうっとうずめて甘えるセラム……、愛(いと)おしく素晴らしい瞬間は数あれど、「猫たちをただ眺めている時間も、そのひとつです」とアニカさん。猫たちのピュアな姿を、無心になって観察する。「それは、ぼうっと海を見ているときと似ています。自然の中に身を置いているような感覚。瞑想(めいそう)に近いかもしれないですね」。私たち人間の雑念をふっと消し去ってくれる、そんなチカラをも猫たちは秘めているようです。

>>つづきはこちら

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連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

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ジュエリーブランドAnnika Inezのウェブサイト https://annikainez.com/

Annika Inezのインスタグラム https://www.instagram.com/annikainez/


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PROFILE

仁平綾(にへい・あや)編集者・ライター

仁平綾

ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。

http://www.ayanihei.com
http://www.bestofbrooklynbook.com
photo by Naoko Maeda

前田直子(まえだ・なおこ)写真家

前田直子

24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
http://www.naokomaeda.net

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仁平綾(にへい・あや)編集者・ライター

仁平綾

ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
http://www.ayanihei.com
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photo by Naoko Maeda

前田直子(まえだ・なおこ)写真家

前田直子

24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
http://www.naokomaeda.net

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