パリの外国ごはん

ジャージャー麺とモモでテンション最高潮!チベット料理「Bar à momos」

  • 文・写真 川村明子 イラスト 室田万央里
  • 2018年9月4日

パリ在住のフードライター・川村明子さんと、料理人の室田万央里さんが、いま気になるパリの外国レストランを訪問する連載「パリの外国ごはん」。今回は麺から餃子(ぎょうざ)モモ、スープまで、2人してテンション上がりっぱなし、写真も撮り忘れるほど興奮したという、チベット料理のお店です。

    ◇

この連載で訪ねている店には、インターネットで検索するも、情報の出てこないところがちらほらある。歩いていてたまたま見つけ、食べに行ってみることも少なくない。11区のチベット料理店“バー・ア・モモ”は、ネット上で偶然その存在を知ったのだが、見つけた記事からは店の様子がつかめなかった。それで一度見に行ってみることにした。

すでに何店か「これはなかなかにディープだぞ」と、その様相に食べる前からワクワクする店を紹介しているこの連載でも、“何の確かな前情報もなく一人で足を踏み入れるには勇気がいる度”において、バー・ア・モモは上位に食い込む1軒だった。写真を撮って万央里ちゃんに送ると、やはり興味津々。すぐに行くこととなる。

動くリアル紙芝居的な厨房の様子

小さな店内には、入って右側に厨房(ちゅうぼう)がある。客席フロアと厨房を仕切る壁は、一部が大きく切り取られていて、テーブルに腰掛けて見ると大きな額縁のように感じた。その枠の厨房側には作業台があるようで、着いたときには、2人の男性がモモ(小籠包のような形に包んだ蒸し餃子)を包んでいた。枠には窓ガラスがはめ込まれておらず、それが面白い視聴効果を生み、動くリアル紙芝居のような印象を受ける。

わかりやすい説明の書かれたメニュー

席につくなりその様子に見入っていると、店外に掲示されていた写真付きのメニューとは別の、思わず顔がほころびるイラストの描かれたメニューを渡された。店の大きな柱は、典型的チベット料理とあるモモ、それにthen thukとthukpaという自家製パスタ入りのスープらしい。then thukは小さなパスタ入りのスープ、thukpaは大きなパスタ入りのスープとある。麺、と書いていないことに引かれた。“小さい”“大きい”という言葉で、細い太い、とは形容していないから、細長くはないのかもしれない。

この三つを試したいけれど、「他のスペシャリテ」の欄に、Jajang thukpaとあるのが目に止まった。もしやこれはジャージャー麺だろうか? サービスをしている女性に聞いてみると、スープではなくて、お肉が乗っているという。うーん、気になる。メニューを見ているだけで、すでに私たち2人のテンションはだいぶ上がっていた。

さんざんに迷ったあげく、以前行ったチベット料理店のものと比べてみたくて、ホウレン草とチーズ入りのモモ、それにどうしてもジャージャー麺か知りたくなりjajang thukpa、そして小さなパスタ入りのスープthen thukのベジタリアンを頼むことに決めた。

待っている間にも、他のテーブルに運ばれていく蒸籠(せいろ)から立つ湯気に食欲をそそられる。厨房にいる2人の男性は、生地を細長い筒状に伸ばしたり、モモらしきものを包んだりしていた。見ていて、どうも注文が入ってから生地を伸ばし具を包んでいるのではないか、という気がした。作っている手元の写真を撮らせてもらいたかったけれど、それは何回か通ってからにしようと思い、代わりにライブで、動くリアル紙芝居を見続けた。最初に写真を撮っていいかと聞いた時の、浮世絵Tシャツを着た男性の控えめな笑顔での答え方が、とても印象的だったのだ。

一気に料理が運ばれてきて、またもや私たちのテンションが上がる。jajang thukpaはやはりジャージャー麺だった。美しく包まれたモモは、ツヤがあってハリもあっておいしそうだ。そしてパスタは小さくちぎられたような形をしていた。

まさに肉みそののったジャージャー麺

相当に興奮していたのだろう。その場で確認していたはずなのに、帰ってから見返したら、なんと、ジャージャー麺の写真が1枚しかなかった。おまけにブレている。早く食べたい! という気持ちはこれまでで最高潮だったようだ。稲庭うどんくらいの太さの麺は少し丸みを帯びており、具は、まさに肉みそで、キノコが入り甘ったるくなく硬派な味。少しずつ麺に絡めるよりも、ぐじゅぐじゅによく混ぜ合わせて食べたいと思う濃度で、満遍なく絡むように混ぜた。

ハリもツヤもあるmomos

温かいうちにモモも食べたいと、蒸籠に手を伸ばす。モモは一つ注文すると、蒸籠2段で八つ出てくる。これをつけて、と持ってきてくれたタレは、辛いだけでなく少し苦みもあった。お箸でつまんだだけで、具のたっぷり具合が伝わってくるモモに、少しタレをつけてひと口。キャベツ、ホウレン草、チャイブ、タマネギ、ニンジン、ニンニクにチーズ。タネがなんともジューシーだ。

前に行ったチベット料理店のモモは、ホウレン草とチーズだけのシンプルなものでチーズの味が全体を支配していた。でもこちらは、チーズが入っていることはわかるけれど、つなぎとして使われているのかな、と思うくらいの存在感で、野菜のおいしさが詰まっている。見た目に違わず、生地は食感もぷりんっとしていた。

野菜だしがほっとするThen Thukベジタリアン

そしてスープ。キャベツにチンゲンサイ、ニンジン、ネギ、マッシュルームとこれまた具だくさん。干しシイタケの味が突出しているといったことのない、とてもバランスの良い野菜だしに、ぺらっと薄い生地のパスタがおもしろい。縁が不ぞろいで、基本的には四角いものの、ちぎったような形をしている。どう伸ばしてどうちぎっているのだろうか。具だくさんで風味豊かであっても、パンチのある味ではなくて、やっぱりチベット料理は優しい味わいだった。

盛りだくさんな興奮の食卓

帰り際に、ジャージャー麺の麺も自家製かと聞いてみたものの、確証は得られなかった。店のスタッフはオーナーも含め全員チベット人で、サービスの女性はフランスに来て3年目、まだフランス語がそこまでできず、語学学校に通っているのだそうだ。何度か通って、厨房での作業をもう少し近くで見られるようになり、不ぞろいな切り口のパスタの伸ばし方も、ジャージャー麺を作る工程も、知ることができるといいなぁ。

  

Bar à momos バー・ア・モモ
218, rue du faubourg Saint-Antoine 75012 Paris
01 43 72 89 82
12時~15時、19時~22時30分
日曜昼 休み


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PROFILE

川村明子(かわむら・あきこ) 食ジャーナリスト

川村明子

東京生まれ。大学卒業後、1998年よりフランス在住。ル・コルドン・ブルー・パリにて製菓・料理課程を修了後、フランスおよびパリの食にまつわる活動を開始。現在は執筆のほか、パリで活躍する日本人シェフのドキュメンタリー番組『お皿にのっていない時間』を手掛けている。著書に『パリのビストロ手帖』『パリのパン屋さん』(新潮社)、『パリ発 サラダでごはん』(ポプラ社)
日々の活動は、Instagram: @mlleakiko、朝ごはんブログ「mes petits-déjeuners」で随時更新中。

室田万央里(むろた・まおり) 料理人

室田万央里

無類の食べ物好きの両親の元、東京に生まれる。
17歳でNYに移り住んだ後、インドネシア、再び東京を経て14年前に渡仏。
モード界で働いた後に“食べてもらう事の喜び”への興味が押さえきれずケータリング業に転身。
イベントでのケータリングの他、料理教室、出張料理等をパリで行う。
野菜中心の家庭料理に妄想気味のアジアンテイストが加わった料理を提供。理想の料理は母の握り飯。未だその味に到達できず。
Instagram @maorimurota

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川村明子(かわむら・あきこ) 食ジャーナリスト

写真

東京生まれ。大学卒業後、1998年よりフランス在住。ル・コルドン・ブルー・パリにて製菓・料理課程を修了後、フランスおよびパリの食にまつわる活動を開始。現在は執筆のほか、パリで活躍する日本人シェフのドキュメンタリー番組『お皿にのっていない時間』を手掛けている。著書に『パリのビストロ手帖』『パリのパン屋さん』(新潮社)、『パリ発 サラダでごはん』(ポプラ社)
日々の活動は、Instagram: @mlleakiko、朝ごはんブログ「mes petits-déjeuners」で随時更新中。

室田万央里(むろた・まおり) 料理人

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無類の食べ物好きの両親の元、東京に生まれる。
17歳でNYに移り住んだ後、インドネシア、再び東京を経て14年前に渡仏。
モード界で働いた後に“食べてもらう事の喜び”への興味が押さえきれずケータリング業に転身。
イベントでのケータリングの他、料理教室、出張料理等をパリで行う。
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