スリランカ 光の島へ

<5>列車の旅が好き

  • 文・写真 石野明子
  • 2018年9月7日

スリランカの列車は速くないし、日本の新幹線のようにきれいじゃない、予約もコロンボ・フォート駅まで行かないとダメだしめんどくさい。でも私は好き、列車の旅が。

夫と娘と3人でかつて最後の王朝があった古都キャンディに向かう。家族で電車に乗るのはこれが3回目。スリランカで一番有名な仏教徒のお祭り、ペラヘラ祭りを撮影するための一泊二日の小旅行。

コロンボ・フォート駅は日本でいう東京駅みたいなところで、各地方への長距離列車や近距離列車の拠点となっている。駅前には軽食やスナックが買える売店がずらりと並ぶ。ちょっとのぞくと「ハイ、マダム! 何が欲しい? いくつ欲しい!?」とすばやい客引き合戦。地元の人にならってそこでミルクティーを1杯頼んだ。ガッツーンとした甘さに目が覚める。娘にはほのかな甘さのシンプルな丸パン、ティーバン(約20円)を買う。電車を待ちながらスーツケースに座って食べ始めた。

早朝に出発する長距離列車が多く、駅構内はこれから長旅にでる家族の一団や路線図を広げた旅行者が放つワクワクやドキドキの空気が充満している。ホームに差し込んでくる太陽の光を遮って、巨大な鉄の塊がものすごい轟(ごう)音とともに入ってくる。スリランカの列車の顔はごつい。そして色あせてる。でもそこが冒険気分をあおってくる。

  

コロンボから紅茶畑のある高原地帯に行く列車には展望列車というのがあって、一両だけ窓が大きく造られた一等車両がある。旅行者にはもちろんのこと、価格も高くないのでローカルにも人気の車両。切符争奪戦に勝つためにはとにかく「予約は早めに」、が鉄則。線路と生活の場所との距離がものすごく近いので、窓からはいろんな暮らしが見える。都市部、郊外、農村部、そしてスラム街も。いい場面だけではないけれどそこも私が列車の旅が好きな理由の一つ。

カメラを持って車両の連結部分をフラフラしていると、列車が走っていても乗務員が乗車口をあけてくれる。「さぁさぁいい写真を撮りなさい」とニコニコ。ものすごくありがたいけど、ものすごく怖い。列車は揺れるし、岩山の間をすれすれに走って行く。逆にちゃんと自粛する旅行者たちもいて面白い。

娘は乗車中、おやつを食べたり窓の外に時折現れる水牛やクジャクを見つけては「いたよ!」と報告してくれたり。大きな声で歌い出したりするのだが、そんなときスリランカの乗客はとても優しくて拍手してくれたりもする。

以前、まだ娘もいず夫と2人で旅行で訪れた際に東海岸のトリンコマリーからコロンボまで夜行列車に乗った。一等寝台はすでに満席で、エアコンなし、窓開きっぱなしの二等車両に席を取った。もうすぐ脱線するのでは? と思うほどの揺れの中、リクライニングも0か100かの案配でちょうどいい角度で止められなかった。でも深夜に黒く連なったヤシの木の林の上を、一緒に走る白い月が忘れられない。

そして夜行列車の車掌さんは止まる駅ごとに何か名産があるらしく、家族のためか友人のためかわからないけれどお土産を買い込んでホクホク顔だった。結局ほとんど眠れなかったけれど、夜行列車がいろんなスリランカを見せてくれた。

  

近距離の電車も好きだ。それはコロンボとマウントラヴィニアという郊外のビーチをつなぐ路線。目的地までずっとだだっ広いインド洋のそばを走って行く。波が強い日にはしぶきがちょっと顔にかかるくらい近い。でものんびりガタガタ30分ちょっと、昼下がりの空いた時間に乗る電車は自分もまるで地元の人になったようでうれしい。時刻表の黒板にはだいたい「遅延」と書いてあるけれど。

途中、上り坂で電車が何度か止まりながらも、キャンディに着いた。お祭りの場所取りのためか降りた途端走り出す乗客も。でも表情はみんなうれしそう。私たちは荷物が多くてのんびり改札口へ向かう。すれ違ったパリッとした制服姿の車掌さんが「良い一日を!」と言ってくれた。

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PROFILE

石野明子(いしの・あきこ)

いしのあきこ

2003年、大学卒業後、新聞社の契約フォトグラファーを経て06年からフリーに。13年~文化服装学院にて非常勤講師。17年2月、スリランカ、コロンボに移住して、写真館STUDIO FORTをオープン。大好きなスリランカの発展に貢献したいと、その魅力を伝える活動を続けている。
Instagram @studiofortlk
http://studio-fort.com/
http://akikoishino.com/

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石野明子(いしの・あきこ)

いしのあきこ

2003年、大学卒業後、新聞社の契約フォトグラファーを経て06年からフリーに。13年~文化服装学院にて非常勤講師。17年2月、スリランカ、コロンボに移住して、写真館STUDIO FORTをオープン。大好きなスリランカの発展に貢献したいと、その魅力を伝える活動を続けている。
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