『ニュー・シネマ・パラダイス』公開30周年 単館映画興行成績No.1ヒットの仕掛け人、吉田佳代さんに聞く

  • 2018年9月7日

(c)1989 CristaldiFilm

シチリア島の小さな映画館に通いつめる少年トトと老いた映写技師との交流が胸を打つ映画『ニュー・シネマ・パラダイス』。1988年のイタリア公開から今年で30周年。そして89年12月の東京・シネスイッチ銀座での公開から30年目を迎える。客席数200足らずのミニシアターでの上映は口コミで評判が広がり、観客動員は27万人を超え、40週に及ぶ異例のロングランに。日本の単一映画館での興行成績歴代1位というこの作品を買い付けて日本に紹介したのは、当時、配給会社ヘラルド・エースの若手社員だった吉田佳代さんだ。公開30年の節目に同作としては世界初の「シネマ・コンサート」として上演されるのを機に、作品の魅力について改めて聞いた。

吉田佳代さん

「トト少年が、自分と重なった」

ファッションフォトグラファー吉田大朋の長女として生まれた。父が雑誌ELLEと日本人初の専属契約を結んだのを機に、小学校1年の時、パリに移住。「自分にとって映画館は庭のようだった。家では『男と女』(ルルーシュ監督)のサントラが流れていました」。映画の仕事をしたい、作品を買い付けて日本に紹介したい、いつしかそんな夢が膨らんだ。
ソルボンヌ大学卒業後、帰国して映画業界への就職活動をしていた吉田さんは、ヘラルド・エースの原正人社長にスカウトされ1983年12月に入社。初仕事は、日仏合作映画としてつくられた黒澤明監督『乱』の制作発表会見でのフランス語通訳だった。

『ニュー・シネマ・パラダイス』に出会ったのは1989年のカンヌ映画祭。世界中から訪れたバイヤーがしのぎを削る場だ。コンペ部門での正式上映を前にわずかな映画関係者を招いた試写の場で作品を見た。監督は無名で、有名な俳優も出ていない。でもなぜか音楽は大御所エンニオ・モリコーネ。どうやらプロデューサーのフランコ・クリスタルディが若手監督と名匠を引き合わせたらしい。見終えた途端「素晴らしい!」と唸(うな)り、買い付けを即決した。「トトは、まるで自分を見ているようだった。アルフレードに夢を捨てるな、シチリアには帰ってくるなと背中を押される姿は、夢を追って日本へ旅立った自分と重なりました」

カンヌ審査員特別賞、米アカデミー外国語映画賞を受けるなど各国で高い評価を得た作品だが、本国イタリアも含めて、日本ほどのヒットを記録した国はない。「師弟や親子のエピソード、舞台となったシチリアの美しさ、トト少年の愛らしさ、そして何よりもモリコーネの音楽。日本人の心に響く要素がそろっている」と吉田さん。実際、試写会を開いてみると、滂沱(ぼうだ)の涙を流しながら出てくる人が続出した。映画評論家の淀川長治さんも「これはまさに僕の映画! トトは僕だよ!」と絶賛し、大いに作品をPRした。
「89年当時のミニシアターではアート性の高い作品が多かったが、『ニュー・シネマ・パラダイス』は理屈抜きに楽しめる。ミニシアターの間口を広げた作品でもあった」と吉田さんは語る。

(c)1989 CristaldiFilm

色あせぬ感動、世界初のシネマ・コンサート形式で再び

出会いから約30年を経てこの作品が、オーケストラの生演奏による「シネマ・コンサート」形式で全編上映されると知り、「まさにぴったり! むしろ、なんでもっと早く実現してくれなかったのかと思った」という。「メインテーマなど音楽は知っているけれど、作品をまだ見ていない人も多いはず。見る人を選ばない映画ですが、とくにこれから夢を追いかけようとしている世代には、ぜひこの機会に見てほしい」
シチリアの風を日本に持ち帰った吉田さんは現在、アスミック・エースに所属するかたわら、公益財団法人ユニジャパンの国際支援グループ・マネージャーとして、日本とフランスの間に映像文化で架け橋をかけるためにフランスの公的機関や製作者たちと折衝し、日本の才能を海外に紹介する活動にも力を入れている。

    ◇

『ニュー・シネマ・パラダイス』シネマ・コンサート
上映時間2時間20分(休憩20分含む)

【東京公演】
■日程:9月15日(土)開場:16:00/開演:17:00
    9月16日(日)開場:12:00/開演:13:00
■場所:東京国際フォーラム ホールA(東京都千代田区丸の内3丁目5-1)

【大阪公演】
■日程:9月17日(月・祝)開場16:00/開演17:00
■場所:オリックス劇場(大阪市西区新町1丁目14-15)

公式HP:http://www.promax.co.jp/ncp/

■上映作品:『ニュー・シネマ・パラダイス』(劇場公開版、イタリア語上映、字幕付き)
■監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
■音楽:エンニオ・モリコーネ
■キャスト:フィリップ・ノワレ、ジャック・ペラン、サルヴァトーレ・カシオほか
■イタリア公開:1988年、日本公開:1989年
■原題:Nuovo Cinema Paradiso
■指揮:ティアゴ・ティべリオ/演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
■チケット価格:S席:9,800円/A席:7,800円(全席指定・税込、3歳未満入場不可)
■問い合わせ:ディスクガレージ(050-5533-0888、平日12:00~19:00)

(c)1989 CristaldiFilm

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