ほんやのほん

心臓の専門医が考える、体と心のつながり『いのちを呼びさますもの』

  • 文・岩佐さかえ
  • 2018年9月10日

撮影/馬場磨貴

  • 『いのちを呼びさますもの -ひとのこころとからだ-』稲葉 俊郎著 アノニマ・スタジオ 1728円(税込み)

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目の覚めるような紅(あか)い装丁。まるで心臓からおくりだされる血液のよう。生きていることを一番感じさせる色なのかもしれない。

まずは読み始めて、文章がからだの中を流れる感覚に陥った。それは血管なのかリンパ管なのか、何かがつながり巡る感じであった。そしてそれは浄化され身体の一部となった。

からだの中で何かがつながる

著者の稲葉俊郎さんは心臓を専門にした医師であり、在宅医療、山岳医療も行っている。患者さんを診る中で、体と心は分けることのできないひとつながりの関係性に改めて気付かされるという。その人を成立させているすべての中で診るということは、手掛かりとなる「部分」をさぐり「全体」を読み取る。どちらもなければ成立しないものを診るべき医師は多角的な視点とイマジネーションが必要不可欠だと述べている。

体と心はつながっている。どの場所でつながっているのか……

60兆個の細胞たちからなる私たちの体を超巨大企業の運営に例える。どこか思い当たる節があり笑みがこぼれた。企業の体質に疑問を感じている方には是非ここだけでも読んでいただきたい。おのおのが役割分担している一つひとつの細胞抜きには成立できないのだ。その細胞の働きをピックアップし説明がなされている。

例えば臓器は「植物性臓器」と「動物性臓器」に分けられる。そのふたつは性質が異なるが調和しながら体の中で存在している。共存し、つながる場所がここにも存在する。

意識と無意識のコミュニケーションについても書かれてある。
外側へ向かう自分と内側へ向かう自分。忙しく余裕がなくなると内側の自分を忘れがちになり、外に向かって一生懸命になりすぎる。無意識に行う睡眠が大切なのは休息するだけでなくそういう理由でもあった。夢をみる余裕が大切なのだ。
このような目には見えない何かと何かが体の中で共存しつながるのを読みながら感じたのだ。

矛盾を受け入れる

心や体に出てくる症状は、バランスをとろうとするプロセスの中でうまく解決できず、収まりきらなかったものが病として表に出てくると稲葉さんはいう。

日々、矛盾や葛藤を感じる中で何が正しくて何がいけないのか振り分けようとしてるのかもしれない。無理に折り合いをつける必要はなく、体は矛盾や葛藤をそのまま受け入れることができるという。読んでいるうちに何かが楽になった。
私がこの場で文章にするといかにもうさん臭くきこえるが、本書を読むとスルスルと体に入ってくるから不思議である。

また、生きていく上で「芸術」の大切さを多く語っておられる。ご本人もそれに携わり医療との接点を模索されている。私自身もバレエや演劇などの舞台を鑑賞した時や、芸術というにはおこがましいが手芸を愉(たの)しんだ時などは心の充足感を深く感じる。それは多くの方が経験があるであろう。自分の内側を大切に感じる瞬間だ。

読み終えて、自分にとっての「健康」とは何であるのか改めて考えたいと思う。もしかしたら初めて考えるのかもしれない。病気ではないことが「健康」ではないということ、分かっていたようでつながっていなかったように思う。

日々、60兆個の細胞からなる身体は頑張ってくれている。その動いている部下たちが円滑に仕事をするために、決して頭ごなしの司令官にならないよう、この本をおすすめしたい。


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PROFILE

岩佐さかえ(いわさ・さかえ)

いわささかえ

女性向けフィットネスジムにて健康・美容相談を受けながら、様々なイベントやフェアを企画。
自身がそうであったように、書籍を通して要望にお応えできたらと思い、蔦屋家電のBOOKコンシェルジュに。
「心と体の健康=美」をモットーに勉強の日々。

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