朝日新聞ファッションニュース

モードを変えた、あくなき探究心

  • 2018年9月28日

1990年代にファッションの既成の枠を壊したマルタン・マルジェラ。80年代にボディーコンシャスという概念をつくった故アズディン・アライア。時代のモードを変えた2人のデザイナーが自ら企画構成した作品展をこの夏、欧州で見た。飽くなき探究心、変革の意識が強く感じられる内容だった。

エルメスと響き合った感性 マルタン・マルジェラ

パリの装飾美術館で2日まで開催された「マルジェラ、エルメス時代」展。89年春夏から2009年春夏までマルジェラが手がけた自身のブランドと、98年秋冬から04年春夏までデザインを担ったエルメスの約100体が並んだ。

マルジェラが手掛け始めた頃のエルメス

会場の壁や床はエルメスのオレンジと、マルジェラの白に色分けされている。オーバーサイズや脱構築の作風によって「20世紀の破壊王」と呼ばれたマルジェラ自身のブランドと、高級ブランドの筆頭であるエルメスでの仕事が根底では似ていて、互いに影響し合っていたことがわかる。

デビューした頃には豪華さがトレンドだったが、脱構築風の細身のジャケットを発表。構築的な服がもてはやされた頃には、エルメスでゆったりとしたカシミヤのジャケットをつくった。どちらも時代の先を示す試みだった。

イブニングドレス。エルメスはモダンな黒、マルジェラが薄布を重ねた白=いずれも大原広和氏撮影

若い人たちに参考になるようにと、マルジェラは作品をじかに見られるように展示。服と動く体のバランスの取り方なども、本展のために映像を作って見せた。共同で企画構成したキュレーターのマリーソフィー・キャロン・ドゥ・ラ・キャリエールさんは「マルジェラは90年代からリサイクルされたゴミ袋を服に使うなど、現代の環境問題にアラームを鳴らした。自由な精神を持ちながら、エルメスへの敬意の表現を見てもわかるように極めて謙虚。力ではなく頭脳で、ファッションや考え方の限界をどんどん押し広げてきたことを感じて欲しかった」と話した。

精緻で大胆、曲線美は永遠 アズディン・アライア

ロンドンのデザインミュージアムで開催中の「アズディン・アライア ザ・クチュリエ」展は、アライアが昨年11月に急逝する直前まで熱心に取り組んでいた企画だ。女性の曲線的な体の美を強調する精緻(せいち)でダイナミックなドレスなど約60作品のほか、写真や映像で構成している。

ボディーコンシャスなドレス=斎藤久美氏撮影

入り口には、太ももまでぴたりと体に沿って、そこから大きく裾が広がるドレス。850平方メートルの広い会場は「黒のシルエット」「スペイン風のアクセント」など11のテーマ別に服が置かれ、間はプロダクト・デザイナー、マーク・ニューソンらが作った幕で仕切られている。

81年発表のハトメ飾りのほっそりとした革コートは、肩が大きなパワーショルダーが主流だった頃の作品。83年作の柔らかく女性らしい肌色の革のドレスや、友人の米国出身の歌手ティナ・ターナーが着たレースのミニドレスも。彫刻のように立体的なシェイプが、オートクチュール的な手技で丹念に作られているのが見てとれる。

同館のディレクター、アリス・ブラックさんは「アライアの服はいま見ても全く古くさくない。女性の体を美しく見せるための強い探究心と素材へのこだわりが、デザインの永遠性を保っているのだと思う」と語った。10月7日まで開催。(編集委員・高橋牧子)

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