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<99>壁一面に語学書、地域と世界をつなぐ店「GLOCAL CAFE」

  • 文 吉川明子 写真 山本倫子
  • 2018年10月4日

 東京メトロ銀座線外苑前駅から徒歩数分、国道246号線を離れて奥まった路地に入っただけで、とても静かな雰囲気に包まれる。そんな路地沿いにあるのが「GLOCAL CAFE」。広々としたウッドデッキと、都内に点在する自転車シェアリング(レンタサイクル)の赤い電動自転車が目印だ。同店は駐輪場(ポート)になっており、近くの人がよく利用している。 

 奥行きのある店内で、入り口から向かって右側の壁一面が本棚。カフェだというのに、広さの割にはテーブルの数が少ないような気がする。

「テーブル同士の間隔が狭くならないように気を遣っています。近隣の会社が会議室代わりに利用したり、仕事の打ち合わせをしたりしている人も多いので。席が近いと隣の声が聞こえてしまいますから」

 そう話すのは、WEBや映像の制作、イベントの企画運営などを行う株式会社ブレインの合原紀子さん(47)。店の数軒隣に本社があり、この店の運営母体でもある。合原さんは立ち上げの頃からずっと関わっているという。同社のルーツをさかのぼると、ドイツ語学者・関口存男主宰『基礎ドイツ語』(現在休刊)の出版元であった三修社という語学出版社にたどり着く。

「今年で創立80周年の老舗出版社で、今はブレイングループの一つですが、『異文化、多文化のコミュニケーションをつくる』という弊社の使命はこの出版社から来ています」

 2016年4月にオープンしたこの店は、そんな思いを具現化させたものだった。2020年に東京オリンピックを控え、メインスタジアムとなる新国立競技場にほど近いこの店の周辺にも、より多くの外国人が訪れることが予想される。そのため、外国人観光案内所の認定を受け、カフェスタッフは英語が話せる人を採用。いつも多くの人でにぎわい、ここに来れば、地元・青山の情報が得られる。そして、とびきりのスペシャリティコーヒーも味わえる――。そんな空間を2年半かけて少しずつ形にしていった。

「『どうせやるなら本格的なコーヒーを提供したい』と言ったのは社長。縁あっていいバリスタとめぐりあい、いまは店長として店を切り盛りしています」

 常時、ビターな深煎(い)りとフルーティーな浅煎りの2~3種類のコーヒーを用意。オーダーごとに豆を挽(ひ)き、ハンドドリップでていねいに入れる。コーヒー好きの常連客も増えてきたという。

 本棚には、語学学習書がずらりと並ぶ。約1000冊の蔵書があり、半分は三修社の刊行物で、ショールーム的な役割を果たす。こちらは販売もしている。残り半分はカシオ電子辞典「Ex-word」や、オンライン辞書サイト「ジャパンナレッジ」に収録されている語学辞典の実物約400冊を揃(そろ)えた。

「うちの出版社は、辞典や教科書なども作っているのですが、一方で、花や植物に関する単語や会話が収録された『お花屋さんでフランス語』みたいに、一見語学書らしからぬ、ニッチで趣味性の高い語学本も出版しています。ここはそういうものを実際に手にとってもらえる、ショールーム的な役割も果たしています」

 本の選書を担当している三修社の白川淳子さん(36)はそう話す。同社は約40もの言語の学習書を出版しており、ウクライナ語などのマイナー言語の本も手に取ることができる。語学好きの人にとっては垂涎(すいぜん)の書棚だろう。

「GLOCAL」という店名は、GLOBALとLOCALの造語。青山という場所で、国籍を超えた人たちが集い、コミュニケーションを深めていくのにこの上ないネーミングと言えるだろう。

 今年3月には、池袋のサンシャインシティアルパ内に池袋店もオープンした。

「いろんな場所にいる人たちが、GLOCALというキーワードで、同じようなコンセプトを持つ店をどんどん増やしていってほしいなと思っているんです」

 年々外国人旅行客が増え、東京オリンピックの開催も着実に近づいている。もしもこのような「GLOCAL」な拠点が自然発生的に増えていったとしたら、訪日外国人だけでなく、ここに暮らす私たちにとってもすてきなことだろう。

おすすめの3冊

■おすすめの3冊

『世界を変えた100人の女の子の物語』(著/エレナ・ファヴィッリ、フランチェスカ・カヴァッロ、訳/芹澤恵、高里ひろ)
スーパーモデル、活動家、バレリーナ、数学者、大統領……。世界各国のRebel Girls(反骨心をもった、勇敢な女の子たち)を、すてきなイラストとともに紹介した本。「これは全世界で100万部を突破したベストセラーで、もとは『女の子が主人公の子ども向けの本が少ない』というところから企画が立ち上がり、クラウドファンディングでできた本なのです。自分で人生を切り開いた、反骨心を持った女性100人が見開き単位で紹介されていて、たまたま開いたところを読むのも楽しいんです」(白川さん、以下同)

『サッカーを楽しむドイツ語』(著/大薗正彦)
ドイツサッカーを楽しむための2000語超を収録した一冊。単語を覚えられるだけでなく、ドイツ語の応援方法や、SNSで流れてくるドイツ語の試合速報の読み解き方なども解説している。「ドイツサッカー好きでドイツ語を勉強している人、というかなりマニアなところに向けた一冊です(笑)。弊社サイトで関連の連載もしていますのでぜひ」

『フランス語ボキャビュール』(著/アレクサンドル・グラ、加藤 理恵)
日常生活に直結した、281の分野・テーマ別で、生きたフランス語が習得できる学習書。「この本、すごいんです! テーマに関連した単語が豊富に記載されているので、とても実践的。練習問題もクイズや穴埋めなど、ゲーム感覚で楽しめます。そして一切日本語が書いていないので、わからない単語があれば辞書を引くことになるのですが、これもまた語学学習の一つ。工夫がこらされた一冊なので、フランス語を勉強している人には本当におすすめです!」

    ◇

GLOCAL CAFE
東京都港区北青山2-10-29 日昭第二ビル 1F
https://glocalcafe.jp/aoyama/
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